
お盆は帰省や旅行で車を運転する機会が増え、慣れない駐車場や狭い道で車をこする事故も起こりがちです。相手のいない自損事故でも、契約内容によっては保険を使えます。ただし翌年以降の保険料が上がる場合もあるため、使える補償や等級への影響、修理費との比べ方を整理します。
「相手がいない事故」だけが自損事故ではない
自損事故と聞くと、ハンドル操作を誤って車庫にぶつけた、電柱に当てた、といった単独の事故を思い浮かべます。ただ、保険で言う自損事故はもう少し広い意味を持っています。日本損害保険協会によれば、自損事故保険とは、相手がいない事故などによる死傷など、自賠責保険や人身傷害保険による補償を受けることができない場合に、保険金が支払われる保険です。そして自損事故とは自身による単独事故だけではなく、相手方がある事故であっても、自賠法第3条の「ただし書き」に基づき相手方が完全無過失とされた場合には相手方の自賠責保険から補償を受けられないため、このような場合も「自損事故」として補償対象としています。挙げられている例が、自身が居眠り運転をして道路のセンターラインを飛び越し、対向車と正面衝突して死傷したケースです(問14)。
分かれ目は「相手がいるか」ではなく、「相手の自賠責保険から補償を受けられるか」です。ただし同乗者は別で、自賠法における「他人」とは、運行供用者および運転者以外の者を指します。運行供用者および運転者以外であれば、配偶者や子などの家族も「他人」になります(問1)。帰省で乗せていた親や子どもも、運行供用者でなければ「他人」にあたります。
任意保険で使える3つの補償
任意保険に自損事故で補償を受けられる保険を付けていれば、保険金が受け取れます。日本損害保険協会の表記は「人身傷害保険」(問11)、「自損事故保険」(問14)、「搭乗者傷害保険」(問12)です。本記事では、同協会の表記に合わせ、「自損事故保険」「無保険車傷害保険」「型式別料率クラス」と記載します。
人身傷害保険は、相手がいる事故か単独事故かを問わず、保険金額の範囲内で、保険約款に定める基準・計算方法に基づいて計算された損害額(治療費、休業損害など)を支払う実損払いの傷害保険です。「過失に関係なく実際の損害額がそのまま出る」と紹介されがちですが、支払われるのは約款の基準による金額で、相手の賠償基準とは異なる場合があります。
自損事故保険で誤解が多いのが、人身傷害保険と「セットでは加入できない」という説明です。日本損害保険協会の公式説明は、加入の可否ではなく、保険金の支払いを説明しています。人身傷害保険が過失割合に関係なく損害を補償するようになったことから、人身傷害保険から保険金の支払いがあるときには自損事故保険から保険金を受け取れません。最近では、自損事故保険の補償内容を人身傷害保険で補償している会社もあります(問14)。
搭乗者傷害保険は、ほかの補償と重なっても支払われます。人身傷害保険、無保険車傷害保険、自損事故保険で対象となる事故の場合にも、それぞれの保険からの保険金支払いとは別に保険金が支払われます。医療保険金には「日数払い」と「部位・症状別払い」の2つの支払い方法があり、後者は治療中であっても受け取れます(問12)。

車両保険のタイプと、保険料を決める型式別料率クラス
3つはいずれも人に対する補償です。自分の車を壊した分には車両保険、公共物を壊して法律上の損害賠償責任を負った場合には対物賠償責任保険がないと補償されません。
車両保険では、補償範囲の違いによって、いくつかのタイプ(種類)が用意されています。日本損害保険協会は3つのタイプを例示したうえで、補償する損害を限定したタイプになるほど保険料は安くなること、保険会社により選択できるパターンが異なることを示しています(問15)。「一般型」と「限定(エコノミー)型」の2択ではありません。同協会が例示する広く補償するタイプは自損事故や当て逃げも対象になる一方、補償を限定したタイプでは自損事故は対象外です。保険料の安さと引き換えに、契約内容によっては帰省中に電柱へ当てても直せません。
保険料には車の型式も効きます。型式別料率クラスは保険種類ごとに決定され、自家用普通乗用車と自家用小型乗用車は型式ごとの事故実績に基づいて1~17クラスの17段階(数値が大きいほど保険料が高くなります)、自家用軽四輪乗用車は1~7クラスの7段階が設定されています(問21)。
等級ダウンの後に走る「事故有係数適用期間」
自動車保険では、事故の内容や回数に応じて、契約者ごとに「等級」が設定されており、この等級に応じて保険料が割増引されます。ノンフリート等級別料率制度では1等級~20等級に区分し、1年間事故がなければ翌年は1等級上がり、事故を起こして保険金の支払いを受けると、原則として1事故につき3等級下がります。
見落としやすいのが、下がるのは等級だけではない点です。事故有係数適用期間とは、事故があった翌年以降に割増引率の低い「事故有係数」が適用される期間をいい、0の場合は「無事故係数」が適用されます。同じ等級でも前年に事故があった契約者とは割増引率が変わり、細分化されているのは7~20等級です。
期間の長さは等級ダウン数に連動します。日本損害保険協会の説明では、3等級ダウン事故があった契約者には3年間、1等級ダウン事故があった契約者には1年間、低い割引率が適用され、その期間を無事故で過ごせば元の割引率に戻ります。損保料率機構の資料によれば、この適用期間は1年経過するごとに「1」を減じ、期間中に再度事故があれば積算して、上限は「直近の事故から6年間」とされています。改定時期や取扱いは損害保険会社で異なる場合があります。
料率機構の例では、18等級で3等級ダウン事故があると翌年は15等級・適用期間3、以降16等級・2、17等級・1と進み、4年後に18等級・適用期間0へ戻ります。事故有係数が適用されるのは3年間で、4年後に等級と適用期間が元に戻ります。割増引率も、損保協会の「等級別割増引率例」では18等級で無事故56%引きに対し事故有は46%引き。あくまで「例」で、実際の率は保険会社ごとに異なります。

では、自損事故はどちらでしょうか。損保料率機構の資料では、1等級ダウン事故は、「車両保険のみ」または「車両保険と無保険車傷害保険・搭乗者傷害保険の一定の組み合わせ」で保険金の支払いがあり、かつ、事故発生の原因が、火災または爆発、盗難、騒じょうまたは労働争議にともなう暴力行為または破壊行為、台風、たつ巻、こう水、高潮、落書または窓ガラス破損、いたずら、飛来中または落下中の他物との衝突、のいずれかに該当する事故とされています。火災・爆発と窓ガラス破損については、飛来中もしくは落下中の物以外の他物との衝突もしくは接触または転覆もしくは墜落によって生じたものは除かれます。いたずらについては、被保険自動車の運行によるものおよび被保険自動車とそれ以外の自動車との衝突または接触によるものは除かれます。なお、同資料は参考純率制度の説明であり、改定時期や取扱いは損害保険会社で異なる場合があります。個別商品の取扱いは各保険会社の約款で確認が必要です。
原則は1事故につき3等級ダウン、1等級ダウンはこの限定列挙です。電柱への衝突はこの列挙には入っていませんが、実際の扱いは約款で確認するのが確実です。
保険を使うかは、翌年の保険料と修理代を並べて決める
自損事故は、相手がいない事故だけを指す言葉ではありません。分かれ目は相手の自賠責保険から補償を受けられるかどうかで、居眠りでセンターラインを越えた正面衝突も含まれます。備えは人身傷害保険、自損事故保険、搭乗者傷害保険と車両保険で、支払われ方はそれぞれ違います。車両保険の保険金を受け取ると、事故内容に応じて等級が下がり、事故有係数の期間も走ります。それでも損害が大きければ、使ったほうが負担は軽く済むこともあります。帰省の前に契約中の補償を見ておきましょう。


