
お盆の帰省や結婚式、家電の故障など、夏は急な出費が重なりやすい時期です。手元のお金が足りないと、すぐ借りられるサービスに目が向きますが、その前に確認したい選択肢があります。まずは、お金に困ったときの「頼る順番」を整理してみましょう。
夏の出費が一度に重なった20代会社員の焦り
「気づいたら、口座の残高では今月を乗り切れそうにありませんでした。」都内で一人暮らしをする20代の会社員女性が、7月末の出来事をそう振り返ります。友人の結婚式のご祝儀に、お盆の帰省の交通費。そこへ追い打ちをかけるように、真夏のさなかでエアコンが故障しました。
ひとつずつなら何とかなる金額でも、同じ月に重なると話は別です。スマホで検索すると、すぐに借りられることをうたう広告が並びます。ただ、「審査なし」といった言葉にかえって不安を覚え、申し込む手前で踏みとどまったといいます。
実は、急にお金が必要になったときには、借入に飛びつく前に確認したい段取りがあります。順番を知っているかどうかで、その後の家計の負担は大きく変わります。
借りる前に確認したい3つの段取り
最初にやることは、「いつまでに、いくら必要か」をはっきりさせることです。冠婚葬祭や帰省のように日程が動かせないものと、家電の買い替えのように購入時期や支払方法を選べるものを分けるだけでも、今すぐ用意すべき金額は小さくなります。
次に、手元で用意できるお金を探します。使っていないブランド品や家電があれば、リサイクルショップやフリマアプリで売却する方法があります。質屋は品物を担保に預けてお金を借りる仕組みで、流質期限までに返済しなければ、預けた品物で弁済する契約です。質屋営業に適用される利率の上限は通常年109.5%(2月29日を含む1年は年109.8%)と高いため、利息と流質期限を確認し、売却とも比較しましょう(質屋営業法)。
勤務先の制度も確認する価値があります。出産、疾病、災害のほか、本人や、本人の収入によって生計を維持する人の結婚・死亡、やむを得ない事情による1週間以上の帰郷など、法律上の「非常の場合」に当たる費用については、すでに働いた分の給料を給料日前でも請求できます(労働基準法25条・労働基準法施行規則9条)。また、会社によっては従業員向けの貸付制度や給与の前払いの仕組みを設けていることがあります。
生活が苦しいときに頼れる公的な貸付制度
収入が少なく生活のやりくり自体が苦しいときは、民間の借入より先に公的な貸付制度を確認しましょう。都道府県の社会福祉協議会が実施する「生活福祉資金貸付制度」は、必要な資金をほかから借りることが難しい低所得世帯(市町村民税非課税程度)や、障害者世帯、高齢者世帯などが対象です。

対象世帯が緊急かつ一時的に生計を維持できなくなった場合に使えるのが、緊急小口資金です。貸付額は10万円以内で、無利子・保証人不要ですが、社会福祉協議会の審査では償還可能性も考慮されます。生活の立て直しに時間がかかる場合は、総合支援資金の生活支援費として、単身世帯で月15万円以内、2人以上の世帯で月20万円以内を、原則3か月(最長12か月)借りられます。
このほか、進学費用のための教育支援資金(無利子)などもあります。相談窓口はお住まいの市区町村の社会福祉協議会です。対象になるかどうかは世帯の収入など状況によるため、生活が苦しいと感じたら、まずは窓口で相談してみましょう。
民間の借入は仕組みを知って最小限に
どうしても借入が必要な場合の選択肢が、クレジットカードのキャッシングやカードローン、消費者金融です。カードローンは銀行や消費者金融などが提供する融資サービスで、使いみちを問わないものが一般的です。利息制限法上の上限は、元本10万円未満が年20%、10万円以上100万円未満が年18%、100万円以上が年15%です。実際の金利は各社が上限の範囲で設定します。
借りる前には、金利だけでなく、毎月の返済額と返済がいつ終わるのかを必ず確認しましょう。返済の全体像を見ないまま借りると、返済のためにまた借りるという悪循環に陥りかねません。
また、消費者金融やクレジットカード会社など貸金業者からの借入には「総量規制」があり、年収の3分の1を超える借入は原則としてできません。クレジットカードのキャッシングも対象ですが、銀行カードローンは貸金業法の総量規制の対象外です。対象外だから多く借りてよいわけではなく、返済できる額かを自分で確かめる必要があります。
追い詰められたときほど危ない、ヤミ金とリボ払い
急いでいるときほど危険なのが、いわゆるヤミ金です。貸金業を営むには法律に基づく登録が必要で、業として金銭を貸す場合に年20%を超える利息を契約すると罰則の対象になります(出資法)。給与ファクタリングや先払い買取現金化、SNSの「個人間融資」のように、貸付けに見えない形で法外な負担を求める手口にも注意が必要です。
「審査なし」のような甘い言葉で誘う業者と関わる前に、金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」で登録の有無を確認できます。少しでも怪しいと感じたら契約せず、困ったときはお住まいの自治体や警察、消費生活センターに相談しましょう。
クレジットカードのリボ払いにも注意が必要です。毎月の支払額を一定にする定額方式のほか、残高に応じて支払額が変わる残高スライド方式もあります。どちらも残高が増えるほど支払期間や手数料の負担が重くなりやすいため、毎月の支払額だけでなく残高と終了時期を確認しましょう。
急な出費は「頼る順番」で乗り切る
急にお金が必要になったら、まず金額と期日を整理し、売却や勤務先の制度など手元の選択肢を確認しましょう。生活が苦しいときは社会福祉協議会の公的な貸付に相談し、民間の借入は金利と総量規制を理解したうえで最小限にとどめます。この順番を知っておくだけで、焦りから危険な借入に走るリスクは大きく減らせます。出費が重なりやすい夏こそ、落ち着いて頼る順番を思い出してください。


