
8月の検針票を見て、思ったより高いと感じた方は多いはずです。暮らし方は変えていないのに、使用水量だけが増えています。そんなときに節約テクニックを何十個も集めても、効くものには当たりません。家庭の水は風呂とトイレで6割を超えます。効くのはテクニックの数ではなく、手を付ける順番です。
検針票の数字が跳ねた8月、共働き夫婦の心当たり
「先月と同じ暮らしをしていたつもりなんです」。8月に届いた検針票を見て、そう話す30代の共働き夫婦がいます。都内のマンションで小学生の子どもと3人で暮らしていて、前回の検針よりも使用水量がはっきり増えていました。生活を変えた覚えはありません。
思い当たるとすれば、暑くなってからシャワーの回数が増えたことと、汗をかいた服をこまめに洗うようになったことくらいだといいます。どちらも夏の間だけの話で、我慢のしようがないというのが二人の実感です。
そこで「水道代 節約」と検索してみると、蛇口をこまめに閉める、洗い桶を使う、洗濯はまとめる、といったテクニックが何十個も並びました。全部やれば下がるのだろうと思いつつ、どれが効くのかは分かりませんでした。結局その月は、シャワーを少し短くしてみるだけで終わったそうです。
つまずいているのは、やる気ではなく順番です。家庭の水がどこで使われているのかを先に知っておけば、手を付ける場所は自然に絞り込めます。
家庭で使う水の6割は風呂とトイレ
東京都水道局が令和3年度に実施した一般家庭水使用目的別実態調査によると、都内の一般家庭で使われる水の内訳は次のとおりです。

出典: 東京都水道局「令和3年度 一般家庭水使用目的別実態調査」
風呂が43%、トイレが20%。この2つだけで6割を超えます。洗濯と炊事が続き、洗面・その他は6%です。
ここで効いてくるのが、割合の大きさと節約のしやすさは別だということです。洗面所で手を洗うときにこまめに水を止めるのは、誰にでもできて効果も実感しやすい行動です。ただ、動かしている対象は全体の6%の中の一部にすぎません。一方で湯船の湯量を少し減らす、シャワーを流しっぱなしにしないといった行動は、43%の側に直接効きます。
夏に水道代が上がりやすい理由も、この内訳を見ると納得できます。シャワーの回数が増え、汗をかいた服を洗う回数も増えます。増える場所が、そもそも家庭でいちばん水を使っている場所と重なっているからです。
検針票の立方メートルで測る、使いすぎの目安
自分の家が使いすぎなのかどうかは、検針票に書かれた使用水量で確かめられます。東京都水道局の令和2年度生活用水実態調査では、世帯人員別の1か月あたりの平均使用水量が次のようになっています。

出典: 東京都水道局「令和2年度生活用水実態調査」
1立方メートルは1,000リットルです。ふろの残り湯は、使用状態によって異なるものの一般家庭で約180リットルあるとされています。日々の入浴が使用水量を押し上げるのは、数字の上でもうなずけます。
蛇口を開けている時間も、リットルに置き換えると印象が変わります。東京都水道局の目安では、洗面や手洗いで1分間流しっぱなしにすると約12リットル、食器洗いで5分間流しっぱなしにすると約60リットル、シャワーを3分間流しっぱなしにすると約36リットルです。いずれも13ミリメートルの水栓で水圧0.1メガパスカル、ハンドルの開度が90度の場合の目安です。
行動を変えたときの節水量についても、同じ水道局が目安を示しています。歯みがきのときに水をコップにくめば約5リットル、洗車をホースの流し洗いからバケツに替えれば約60リットル、ふろの残り湯の半分を洗濯や掃除、散水に回せば約90リットルの節水になります。
水道料金の決まり方と、自治体ごとの差
同じ量を使っても、請求される金額は住む場所で変わります。水道法第14条は、水道事業者に対して、料金や給水装置工事の費用の負担区分といった供給条件について供給規程を定めるよう求めています。料金を決めているのは国ではなく、水道を運営している事業者です。全国一律の単価は存在しません。
骨格は共通していて、基本料金と、使った量に応じた従量料金の二本立てが一般的です。東京都水道局の場合、基本料金はメーターの口径ごとに決まっていて、従量料金は使う量が増えるほど1立方メートルあたりの単価が上がる逓増制です。口径25ミリメートル以下では月5立方メートルまでが基本水量として基本料金に含まれ、そこまでは従量料金がかかりません。
ただし、東京都水道局では令和8年夏季の臨時措置として、小口径(13・20・25ミリメートル)の水道料金の基本料金を4か月分無償にしています。対象期間中も、使用水量に応じて加算される従量料金と下水道料金は無償の対象外です。
見落としやすいのが下水道の分です。東京都では下水道料金を計算するとき、汚水の排出量を水道の使用量と同じとみなして算出します。基本料金の無償期間でも、増えた使用水量は、無償対象外の従量料金や下水道料金に反映される可能性があります。節水の効き目は、水道料金の単価だけを見て考えるより大きくなります。
検針の周期も知っておくと、請求のタイミングが読めます。東京都水道局の検針は通常2か月に1回です。1枚の検針票に2か月分が乗るので、夏の使い方はまとめて反映されます。1か月ごとに見ているつもりでも、実際には増えた分が重なって届くわけです。
心当たりがないのに増えたときの漏水チェック
使い方を変えていないのに使用水量が大きく増えたときは、漏水を疑います。確かめ方は難しくありません。家じゅうの蛇口を閉めた状態で、水道メーターを見ます。東京都水道局は、水道を使用していない状態で水道メーターのパイロットが回転していれば、水道メーターから蛇口までのどこかで漏水している疑いがあると案内しています。パイロットは、水が流れている間だけ回るメーター内の小さな部品です。
回っていたら、自分で原因を探す前に水道局のお客さまセンターへ連絡します。東京都の場合、メーターより道路側の漏水は、条件を満たせば水道局が無料で修繕します。宅地内の漏水は使用者側の負担で、指定給水装置工事事業者に修理を依頼することになります。
気になるのは、増えてしまった分の料金です。東京都水道局は、家庭の水道設備は使用者の財産であり使用者の責任で管理するものなので基本的には減額されないとしたうえで、事情によっては減額できる場合もあるとしています。減免の制度をはっきり定めている事業者もあります。川崎市上下水道局は、メーターより蛇口側で起きた漏水のうち、給水装置などの損傷や故障が原因で、使用者の故意や重過失によるものでない場合を対象としています。そのうえで、漏水の事実を容易に確認できないと認められるとき、修理を怠っていなかったと認められるとき、修理を完了しているときのいずれかに当たれば減免できるとしており、期間は1件の漏水につき最大4か月です。修理の完了を理由にする場合は、修理を行ったことが確認できる書類の写しの提出を求めています。
制度の有無も条件も事業者ごとに違います。心当たりがあれば、自分の地域の水道局や上下水道局の窓口に確認してください。
我慢の総量は、手を付ける順番で決まる
割合の大きい風呂とトイレから手を付け、それでも説明のつかない増え方なら水道メーターのパイロットを見ます。この順番なら、細かいテクニックを全部覚えなくても効きます。まずは今月の検針票を開いて、使用水量が何立方メートルだったかを確かめるところから始めてみてください。


