
企業や組織に所属していたら、毎月の給料から、税金や社会保険料は当たり前のように引かれていきます。経営者のゆる麻布(@yuruazabu)さんはX(旧ツイッター)で、源泉徴収を「痛覚を消す麻酔」だと投稿し、2万件規模のいいねを集めました。社員全員分の天引きされた税金を、毎月自分の手で納める中でこのように感じたという、ゆる麻布さんに、編集部が取材しました。返ってきたのは、天引きの額よりも見えにくさを問う言葉でした。
納付作業の直後にふと浮かんだ麻酔のたとえ
ゆる麻布さんの投稿は、源泉徴収をめぐる一言から始まります。
「源泉徴収は天才的な発明」
ただし、続くのは効率化への称賛ではありませんでした。
「痛覚を消す麻酔なんだわ」
さらに投稿は「自覚のない税金が一番高いんやで」と締めくくられています。
この着想のきっかけを、ゆる麻布さんはこう振り返ります。
「社員の源泉所得税と社会保険料をまとめて納付した日は、口座からまとまった額が一気に消えます。私は毎月それを自分の目で見て、自分の指で振り込んでいます」
実際には会社負担分まで把握しているのは社内で自分だけだといいます。同じ金額を払う社員との落差を、こう語ります。
「同じお金を負担しているはずの社員は、今日この瞬間、何も感じていない。痛みの大きさに差があるのではなく、痛みを感じる神経ごと切られている。これは麻酔と同じだと。それでほぼそのまま投稿しました」
3万円の昇給で、手取りは2万円
無自覚さを一番感じるのは昇給の場面だと、ゆる麻布さんは出来事を教えてくれました。月3万円の昇給を伝えたとき、『ありがとうございます』と受け取る社員が半分、どこか拍子抜けしたように『思ったより増えないんですね』とこぼす社員が半分だったそうです。手取りで見ると2万円ほどしか増えず、会社側は社会保険料の負担も増えるため、実際には3万円以上のコスト増になっていたといいます。
「払う側は3万円以上出して、受け取る側は2万円しか増えていない。その差額の行き先を、その場にいる誰も意識していない。会社員の無自覚さを一番感じるのは、ああいう瞬間です」
年収の話でも同じズレを感じるといいます。
「実際に使えるお金は額面の7~8割しかありません。額面で人生設計をして、手取りで生活する。このズレに気づいていない方は本当に多いと思います」
負担として最も重いと感じるものを尋ねると、答えははっきりしていました。
「断トツで社会保険料、特に厚生年金です」
理由として挙げたのが、厚生年金の労使折半という仕組みです。給与明細に載っている保険料とほぼ同じ額を、会社がもう一度払っているといいます。
「会社員は、明細に見えている倍近い保険料を負担しているのに、半分は見えることすらない」
自分の手で振り込んだら、政治はどう変わるか
もし全員が自分で税金を振り込むようになったら、何が変わるのか。ゆる麻布さんが最初に挙げたのは、政治との距離の変化でした。
「一番変わるのは、政治への不満の解像度だと思います」
そして変わるポイントが三つあると考えているといいます。
「投票率が上がります。自分が振り込んだお金の使い道を決める場が選挙なので、無関係ではいられなくなります」
二つ目に、給料を手取りではなく額面で語るようになること。
三つ目を、ゆる麻布さんはこう話します。
「無駄遣いへの怒りの向き先が、飲み屋の愚痴から選挙や署名に変わります」
投稿には2万件規模のいいねと98件のコメントが寄せられ、表示は73.4万回でした。「不便でも自分の手で納税した方が意識が高まる」といった、納税の実感をめぐる声が並んでいます。
ゆる麻布さんが政治について考えることも、その実感が出発点にあるといいます。
「経営者が政治の話ばかりするのは、意識が高いからではありません。毎月、自分の手で振り込んでいるからです」
「あの当事者感覚が全国民に発生したら、政治は間違いなく今より緊張すると思います」


