
親の遺言で実家を受け継いだあと、ほかの兄弟から遺留分を払ってほしいと連絡が届くことがあります。家を手放すことになるのか、相手にそもそも請求する権利があるのかと、戸惑うのは自然なことです。民法は、遺留分を請求できる人、払い方、請求できる期間をそれぞれ定めています。請求された側がまず確かめたいことを、民法と裁判所の案内をもとに解説します。
母の遺言で実家を継いだ50代の女性に、妹から届いた手紙
「遺留分って、この家を手放さなきゃいけないの?」妹からの手紙を読んだ50代の女性は、思わず夫に聞きました。母は遺言で実家を女性に残し、女性はそのまま暮らしています。手紙には、遺言で自分の取り分がなくなったので遺留分を払ってほしいと書かれていました。
女性の頭に浮かんだのは、兄弟姉妹には遺留分がないという話です。妹は兄弟姉妹なのだから請求できないのではないか。いつまで請求できるのか。家を渡すことになるのか。
妹にも遺留分があり、求められるのは家ではなく金銭
まず確かめたいのが、請求してきた人に遺留分があるかです。民法第1042条は、遺留分を兄弟姉妹以外の相続人に認めています。ここでいう兄弟姉妹は、亡くなった人から見た兄弟姉妹のことです。民法では亡くなった人の子は相続人になるため、母の子である妹には遺留分があります。
次に払い方です。民法第1046条により、遺留分侵害額の請求で求められるのは、侵害額に相当する金銭の支払いです。遺言で家を受け継いだ相続人も、この請求を受ける側に含まれます。家そのものを渡さなければならないわけではありません。法務省の案内によると、令和元年7月1日施行の改正で、権利を使うと金銭の請求権が生じる形に改められました。それより前に亡くなった人の相続は改正前の規定で扱われると、裁判所は案内しています。

請求の期限は二つあり、支払いには猶予を求める道もある
民法は、遺留分侵害額の請求権に二つの期限を置いています。遺留分を持つ人が、相続の開始と、遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと、時効で消えます。相続開始から10年を過ぎたときも同じです。
裁判所の案内によれば、1年の時効で消えるのは、権利を使うという意思表示をしないまま過ぎた場合です。手紙が届いた日と、妹が母の死と遺言の中身を知った時期を照らし合わせておくと、期限内の請求かを見極めやすくなります。
お金をすぐに用意できないときは、遺贈や贈与を受けた側の求めにより、裁判所が支払いの全部か一部に相当の期限を与えることができると民法は定めています。法務省も、改正で加わった仕組みとして案内しています。
話し合いが難しければ家庭裁判所の調停へ
遺留分を請求されたら、相手が亡くなった人の兄弟姉妹ではない相続人か、期限内の請求かをまず確かめましょう。改正後の相続なら払うのはお金で、すぐに用意できなければ支払いの猶予を求める道もあります。当事者で話し合いがつかなければ家庭裁判所の調停を利用でき、申立先は請求された側の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意で決めた家庭裁判所です。


