
お盆に家族が集まると、実家の犬や猫の話が出ます。飼い主が先に逝ったら、この子はどうなるのか、と。人が亡くなれば、ペットも遺産の一部として誰かに引き継がれます。ただ、日本の法律ではペット自身に財産を遺すことはできません。遺せるのは、その子の世話を引き受けてくれる人に対してだけです。
ひとり暮らしで猫と暮らす70代が抱える不安
「この子を残して先に逝ったら、どうなるんでしょうか。」ひとり暮らしをする70代の女性は、10年連れ添った猫のことをそう話します。子どもは遠方で、日々の世話は頼めません。預金は多くないものの、猫が困らない分は残せそうだと考えていました。
ところが、遺言書に「猫に預金を遺す」と書いても効き目がないと知ります。同じところでつまずく方は少なくありません。
ペットに財産を遺せない理由は民法の入口にある
民法は「私権の享有は、出生に始まる」と定めています(3条1項)。権利や義務の持ち主になれるのは人であり、ペットはそこに入りません。
一方で民法は「物」を有体物とし、不動産以外の物は動産としています(85条、86条2項)。犬や猫は法律上この動産にあたり、相続人は原則として被相続人の権利義務を承継しますから(896条)、ペットは遺産として引き継がれる側になります。
世話を引き受ける人に財産を渡す3つの道
では、どう組み立てるか。財産を世話の引き受け手へ渡し、世話という負担を負ってもらう形にします。手立ては次の3つです。

気をつけたい点が2つあります。1つは、負担付遺贈で受遺者が負う責任は遺贈された財産の価額が上限だという点です(民法1002条1項)。渡した額を超える世話までは求められません。もう1つは遺留分です。兄弟姉妹以外の相続人には遺留分があり(1042条1項)、遺留分権利者やその承継人が受遺者や受贈者へ侵害額に相当する金銭の支払を請求できます(1046条1項)。
元気なうちに、引き受け手と話しておく
どれを選んでも、鍵は引き受けてくれる人がいるかどうかです。動物愛護管理法は動物の所有者に対し、飼養や保管の目的等を達する上で支障を及ぼさない範囲で、できる限りその動物が命を終えるまで適切に飼う終生飼養に努めるよう定めています(7条4項)。この責務は、いなくなった後の段取りまで含めて考えたほうが確かです。まずは家族に意向を伝え、書面にする段階で専門家に相談してみてください。


