
ペットの世話を頼む相手が決まったら、次に考えるのは飼育にかかるお金の渡し方です。ペット自身に財産を遺すことはできないため、引き受けてくれる人へ渡す形になりますが、渡し方によってかかる税も、約束が守られなかったときに打てる手も変わります。元気なうちに決めておきたいことを、家族と話し合ってみませんか。
引き受ける人の了承と、書面に残しておくこと
世話を託すと決めたら、まずは相手の了承をもらいます。引き受けられない事情もあり、指名しただけでは行き先が決まりません。
決めた内容は書面にします。いつ誰が引き取るのか、かかりつけの動物病院や持病はどうか、口では伝わらないことほど書き残します。
遺言で渡すなら、公正証書遺言という形があります。民法969条は証人2人以上の立会いを求めていますが、推定相続人や受遺者、これらの配偶者と直系血族は証人になれません(民法974条2号)。
渡したお金にかかるのは相続税か贈与税か
亡くなった後に渡るものは相続税で扱われます。相続税法1条の3は遺贈に「贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与」を含めるので、死因贈与もここに入ります。

課税価格の合計額(正味の遺産額)が基礎控除額(3,000万円と600万円に法定相続人の数を掛けた額の合計)以下なら、相続税はかからず申告も要りません。この法定相続人の数は、相続の放棄があってもその放棄がなかったものとして数えます。友人に遺贈しても増えず、養子は実子がいれば1人、いなければ2人までです。
相続税がかかる場合、税額が2割加算されるのは一親等の血族と配偶者以外です。代襲相続人になった孫は対象外で、孫を養子にした場合は代襲相続人でない限り対象になります。友人や兄弟姉妹、甥や姪に頼むなら、ここが効きます。
申告と納税は、自分のために相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内で、相続人以外が遺贈で受け取るときは遺贈を知った日の翌日から数えます。
生前に少しずつ渡す場合も、その人が相続や遺贈でも財産を受け取るなら、一定期間の贈与が相続税の課税価格に加算されます。対象は相続開始日が令和8年12月31日までなら相続開始前3年以内、令和9年1月1日から令和12年12月31日までは令和6年1月1日から死亡の日まで、令和13年1月1日以後は7年以内に伸びます。令和9年1月2日以後に相続が始まる場合は、相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産について、贈与時の価額の合計額から総額100万円までが加算されません。
世話が続かなかったときに動ける人を決めておく
財産を渡しても、世話が続くとは限りません。民法1027条は、負担付遺贈を受けた人が義務を履行しないとき、相続人が相当の期間を定めて催告でき、その期間内に履行がなければその負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求できると定めています。
受け取った人が負う義務は、渡した財産の価額が上限です(民法1002条1項)。
遺言執行者を指定しておけば、遺贈の履行はその人だけが行います(民法1012条2項)。
決めるのは元気なうちに
ペットの準備は、遺す金額よりも段取りの細かさで決まります。誰に頼み、いくらをどう渡し、世話が止まったら誰が動くのか。決めて書面にしておけば、残された側は迷いません。まずは頼みたい相手に話をして、形の整え方は弁護士や司法書士、税理士に相談してみてください。


