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不動産の「相続登記の義務化」が罰則付で実現予定 費用も含め要確認

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不動産の「相続登記の義務化」が罰則付で実現予定 費用も含め要確認

法務省の法制審議会で検討されている「相続登記の義務化」が、早ければ2021年中にも実現しそうです。

現在公表されている中間試案には、相続登記を怠った場合の罰則も盛り込まれています。

不動産を相続する方は必ずチェックしておかなければならない法改正といえます。

そこで今回は、相続登記の義務化の内容をご説明します。

併せて、気になる相続登記の費用もご紹介します。

不動産を相続したものの登記未了の方や、親御様が不動産を所有している方はぜひ参考にしてみてください。

相続登記の義務化

相続登記義務化の中間試案の概要

相続登記義務化の中間試案は法制審議会で2019年12月3日に取りまとめられ、既に公表されています。

主な改正項目として、以下のようなものが盛り込まれています。

・ 不動産を取得した相続人に相続登記の申請を義務づける

・ 「相続申告登記」の新設などにより、相続登記手続きを簡略化する

・ 遺産分割手続きが一定の期間内に行われないときは法定相続分に従って相続したものとする

・ 一定の条件のもとに土地所有権の放棄を認める

・ 相続登記の申請義務を履行した者には利益を付与する

・ 相続登記の申請義務に違反した場合、過料に処する

中間試案の詳細な内容は、法務省HP(pdf)で見られます。

法改正の今後のスケジュール

法制審議会は2020年1月10日~3月10日で実施のパブリックコメント(意見公募)を踏まえて、さらに最終的な調査や審議を行います。

その上で2020年秋の臨時国会に民法と不動産登記法の改正案を提出する予定です。

改正案が採択されれば、早ければ2021年中か遅くとも数年内には相続登記の義務化が実現する見通しとなっています。

相続登記義務化の中間試案に対する評価

この中間試案に対してはさまざまな評価や批判がありますが、私たちの懐に直結する登記費用や過料の問題に絞って考えてみましょう。

過料の制裁では登記義務化の実効性は期待できない

過料とは、行政上の違反に対して課される金銭的な罰のことです。

刑罰としての「罰金」とは異なり、過料を課されても前科はつきません。

法制審議会では、相続登記の申請を怠った場合の過料の金額として「5万円」や「10万円」といった意見が出ているようです。

相続登記を義務化するのであれば過料という罰則を設けることも不合理とは思いません。

しかし、過料の制裁によって登記義務化の実効性を促進することはあまり期待できないと考えられます。

商業登記については既に、会社の登記懈怠に対する過料の罰則が設けられています

実際に過料が課されたケースがどの程度あるのかは不明ですが、おそらくめったに課されていないのではないかと思われます。

過料によって相続登記義務化の実効性を促進するのであれば、登記懈怠を当局が迅速に発見して確実に過料を課すという運用が必要でしょう。

そのような運用が望ましいというわけではなく、過料の規定があるからといって登記義務者の全員が適切に登記を申請するとは考えがたいということです。

登記費用の減免は期待したい

中間試案には、相続登記の申請義務を履行した者に利益を付与することが盛り込まれています。

利益の内容としては、登録免許税などの税制上の優遇措置や、登記手続きを専門家に依頼するための費用の補助などといった意見が法制審議会で出ているようです。

これらの利益の付与は、最大限実現していただきたいところです。

ただ、あくまでも登記費用がかかることには変わりないので、相続登記義務化の実効性を促進するにはまだ弱いと考えられます。

結局は民間サービス頼りになる

相続登記義務化の実効性を促進するためには、罰則で国民を脅したり、登記費用を軽減するだけでなく、登記義務者が得をするようなプラスのメリットが望まれます

例えば、不動産業者等が空き地や空き家の有効活用に関する営業活動により力を入れることが考えられます。

登記の義務化が実現したときに、政府や法務局などが「国民の義務ですよ」という形で周知するだけでなく、不動産業者等が「利益が出ますよ」という形で広告することで、遺産分割手続きと相続登記を進めるモチベーションが強化されることでしょう。

放置されている相続不動産の中には利用価値が乏しいものも多いと思われますが、その活用方法も含めて不動産業者等の活躍が期待されるところです。

相続登記にかかる費用

相続登記にかかる費用

相続登記を申請するためには、高い費用がかかります

現状において相続登記が進んでいない原因のひとつとして、費用負担の問題があることは間違いないでしょう。

そこで、参考までに現行の相続登記にかかる費用をみてみましょう。

不動産調査費用の相場は1,000円~3,000円

登記を申請する前提として、相続した不動産を調査することが必要です。

そのために登記事項証明書や名寄せ帳、固定資産評価証明書などを取り寄せなければなりません。

これらの取得費用は物件数が多くなるほど増えますが、相続するのが自宅のみの場合で1,000円~3,000円ほどかかります

必要書類取得費の相場は1万円~3万円

登記を申請する際には、戸籍謄本や住民票などの書類を提出する必要があります。

相続人の人数が多いほど、取得しなければならない書類の数が増えます

これらの書類は遠方の役所から郵送で取り寄せなければならない場合も多く、その場合は郵送料もかかります。

相場としては、取得費と郵送料を併せて1万円~3万円程度となる場合が多いです。

登録免許税の相場は10万円~20万円

不動産登記を申請するときには登録免許税がかかります。

所有権移転登記にかかる登録免許税は固定資産税評価額に税率をかけて計算します。

相続の場合の税率は、0.4%です。

相続した不動産の評価額が3,000万円なら12万円、5,000万円なら20万円が登録免許税としてかかります。

司法書士費用の相場は5万円~10万円

登記手続きは自分でもできますが、司法書士に依頼することが多いでしょう。

司法書士費用は物件数や評価額によって異なりますし、司法書士によっても異なります。

一般的な自宅の相続登記を依頼する場合の相場としては、おおよそ5万円~10万円程度でしょう。

ただ、不動産調査や必要書類の取得、遺産分割協議書の作成なども併せて依頼すると、さらに5万円程度はかかります

登記費用がどのくらい軽減されるかは未定

相続登記を義務化する法改正によって、以上の登記費用は軽減される予定です。

ただし、現時点ではどの程度軽減されるのかはまったく不明です。

したがって、遺産分割協議の際や相続対策を考えるときには、引き続き登記費用も計算に入れることが重要です。

手続きの面でも費用の面でも負担が減ることになる

相続登記が義務化されると相続人の負担が増すような気がしますが、実際には手続きの面でも費用の面でも負担が減ることになりそうです。

義務化されなくても、相続登記を早めに申請しておくことは大切です。

放置したままでは不動産売却はできませんし、二次相続が発生するとさらに手続きが複雑になってしまいます。

自分で対応することが難しい場合は、お早めに司法書士などの専門家へ相談されることをおすすめします。(執筆者:川端 克成)

《川端 克成》
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川端 克成

約15年間弁護士をしていましたが、人の悩みは法律だけでは解決できないことに悩み続けて、辞めてしまいました。現在はフリーライターとして活躍中です。読んで役に立ち、元気が出るライティングをモットーに、法律問題に限らず幅広いジャンルで執筆しています。これまでの人生では、ずいぶん遠回りをしてきました。高校卒業後は工場などで働いて二部大学に入り、大学卒業後も工場で働いて司法試験の勉強をしました。弁護士を辞めた後も工場で働きながらライティングの修行を重ねました。そんな人生経験にも基づいて、優しい心を執筆を通じてお伝えするのが理想です。 寄稿者にメッセージを送る

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