9月の自民党総裁選を経て、安倍政権の継承を掲げる菅政権が発足しました。
突然の首相交代によって思いがけずに実務型の新政権が発足し、コロナ禍にあって停滞感のある日本には良い転機になるかもしれません。
株式相場も初日は乱高下しましたが、欧米株式相場が調整局面にあるにも拘らず日本は底堅く推移していますね。
首相交代により恩恵を受ける分野・企業が取沙汰される中で、投資対象となるスガノミクス関連銘柄に注目したいと思います。
株式相場の格言で「政策は買い」と言いますが、前政権の政策継承と独自色の政策とを区分けすると今後期待できる関連銘柄が浮かび上がってきます。
そこで、安倍政権の政策と菅政権が注力する今後の政策を確認し、今から投資すべき注目銘柄を紹介します。
目次
安倍政権の政策
安倍政権が掲げていた「アベノミクス3本の矢」を、皆さんは覚えていらっしゃいますか。
2. 財政政策:公共事業への投資拡大、日銀による国債買い入れ
3. 成長戦略:民間投資を喚起
これら3本の矢のうち、1. 2.は次の手がなくなるまで打ち尽くしました。
そこでスガノミクスは1. 2.をそのままに、3. 成長戦略に独自色を付け「縦割り行政の打破」を看板政策に置いたのです。
新政権に対する国内の反応は世論調査で内閣支持率60~70%、海外投資家からの反応も総じて良好であり、株価推移もこの1か月で大きな変化はありません。

菅政権の政策とスガノミクス3つのキーワード
第2次安倍政権発足時の日経平均株価は1万円前後でした。
そこから現在の2万3,000円前後まで引き上げるための経済政策と、それを維持しながら更なる上昇を狙う政策とは自ずと違ってきます。
特に菅政権は外国人投資家の視点で株式市場を見ていて、企業の競争力をグローバル(国際的)目線で引き上げて、今の株価水準を日経平均株価で3万円に向けて底上げしようとしています。
スガノミクス3つのキーワードは、
2. 不妊治療の保険適用
3. 地銀再編
です。
以降で見ていきましょう。
キーワード1.「デジタル化」
成長戦略の基礎となるのが役所のデジタル化であり、象徴が「デジタル庁」の創設です。
キーワード「デジタル化」の具体策として次の3つが挙げられます。
(1) 役所のデジタル化
マイナンバーカードの普及、申請書類等の共通化、民間のデジタル化(リモートワーク等)促進、ハンコの廃止
(2) オンライン教材の普及
学校授業のオンライン化
(3) 遠隔診療の恒久化
現在条件付きで解禁となっている遠隔診療の一般化、恒久化

キーワード2.「不妊治療の保険適用」
少子高齢化および出産の高年齢化による人口減少に歯止めをかける、女性活躍の場を広げるため、先進国並みの基準を取り入れる政策です。
キーワード3.「地銀再編」
地銀再編は地方創生にもつながる、秋田出身の菅総理が掲げる目玉政策です。
役所のデジタル化が進むとそれに呼応するように民間企業のデジタル化も進み、銀行窓口に行く必要がなくなることは目に見えています。
従来の地銀再編は地方企業に対する融資割合等が独禁法に抵触するとして「行政が決めた規制」によって制限されていました。
しかし、当時官房長官であった菅氏が公取委と金融庁の仲を取り持った結果、今年11月から施行される「合併特例法」によって規制緩和されて再編しやすくなりました。
これら
ことでしょう。
3つのキーワードに沿った関連銘柄
では、3つのキーワードに沿った関連銘柄を紹介しましょう。
なお、列挙している銘柄を推奨するものではありません。特に時価総額が小さな銘柄への投資は売買時の流動性に注意が必要です。
1.「デジタル化」関連銘柄
キーワード「デジタル化」のうち役所のデジタル化は5年後の2025年までに整備することを目指していて即効性はなく、システム関連銘柄はNECなど大手が請け負っています。
しかも、デジタル関連銘柄の裾野は広く、まだ絞り込みができるほど制度設計も進んでいません。
今から仕込むのであれば、システム関連ではなく絶対的に必要になってくるセキュリティ関連銘柄がよいことでしょう。
また、ハンコ廃止の方向性が打ち出され、オンライン契約が主流となるのでこの分野の関連銘柄もおすすめです。
【3857】ラック(JQ、時価総額350億円)

国内最大級のセキュリティ監視センターを運営するラックは、業歴30年を超えるITインフラの総合サポートを担う企業です。
年初来高値を少し超えた株価水準で、今後の決算上方修正が期待できる銘柄です。
【6027】弁護士ドットコム(東証マザーズ、時価総額2,400億円)

印鑑要らずの「クラウドサイン」導入企業数が、10万社を突破しました。
日本最大級の法律相談ポータルサイトとして昨年末の2倍まで株価上昇していますが、政府政策に沿った法改正が実現すると大本命となる期待銘柄です。
【3998】すららネット(東証マザーズ、時価総額420億円)

学校、学習塾、自宅学習向けにデジタル教材を提供する企業です。
株価はこの1年で6倍と急上昇していますが、利益(実績)が出てくるのはこれからで官公庁関連業務で伸びる銘柄です。
「オンライン教材の普及」の関連銘柄だと言えます。
2.「不妊治療の保険適用」関連銘柄
2016年、2018年にも注目されましたが、現在の不妊治療制度は先進国と比較して対象者が限定されていたり、保険適用外費用が100万円を超えることも少なくないのが実情です。
保険適用範囲の拡大で少子化や女性活躍につなげる政策に沿った、婦人科系製薬会社に注目です。
【4514】あすか製薬(東証一部、時価総額440億円)

婦人科系と泌尿器系に強みをもつ製薬会社です。
2021年3月期は第1Q時点で経常利益進捗率は50%を超え年初来高値は更新していますが、決算上方修正により2018年につけた上場来最高値を目指す銘柄です。
3.「地銀再編」関連銘柄
どの地銀が再編対象になるのかは事前には分かりません。
しかも、弱者連合になると株価は下がるので、地銀自体に投資するより受け皿となる企業に投資するのが得策です。
【8473】SBIホールディングス(東証1部、時価総額6,400億円)

SBI証券を始めとする金融グループで、グループ会社に地方創生パートナーズ株式会社を保有し、地方金融機関との連合を進めています。
株価は年初来高値を抜けた水準で、今後、同社に関連する再編が発表になる度に跳ね上がる期待銘柄です。ただし、無配当です。
スガノミクス銘柄への投資は10月に入ってから
これらのスガノミクス銘柄には、10月に入ってから投資することをおすすめします。
米国大統領選挙を控えて、10月には株式相場の乱高下が予想されているからです。
いま高値だと思っている企業が手軽な株価になるタイミングがくるものと思われます。
3月の急落で株を買えなかった方は、今年最後の仕込み時期だと思って株価推移をチェックしておきましょう。(執筆者:銀行・証券・保険業界に精通するシニアプライベートバンカー 中野 徹)