2014年1月から、上場株式等や公募株式投資信託の売買や配当などから得た所得に対する軽減税率(10%+復興特別所得税)の制度が終了し、本則税率(20%+復興特別所得税)に戻りますが、変わってNISAと呼ばれる少額投資非課税制度がスタートします。
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目次
NISAの概要
NISAのメリットを活かす投資とは
ここでは、実際にNISAのメリットを活かすにはどのような投資を行えばよいのかを考えてみます。まず、NISAの最大のメリットは、「1人年間100万円までの投資ならば5年以内にいくら利益が出ても非課税」ということです。したがって、いくらかでも儲からないことには始まりません。
しかし、儲かることもあれば損することもあるのが投資で、損した場合には逆にデメリットになってしまいます。なぜなら、NISAで買った株式や投資信託で損が生じても、特定口座など一般の課税口座で儲かった分との損益通算および損失の翌年以降3年間の繰越控除(利益から過年度の損失分を控除する制度)の適用を受けることができないからです。
仮に2014年にNISAと特定口座でそれぞれ100万円ずつ合計200万円分の株式を買い、すべて2015年に売ったとします。この場合に想定される4つのケースで課税関係がどうなるかを考えてみましょう。ここでは単純化するため、他の要件は考慮せず、また、復興特別所得税は除いて計算しました。
(2) NISAで50万円の利益、特定口座で50万円の損失
(3) NISAで50万円の損失、特定口座で50万円の利益
(4) NISAで50万円の損失、特定口座で50万円の損失
まず、両方とも利益が生じた(1)の場合は、特定口座での利益50万円に対してのみ10万円の税金がかかるので、税引後の利益は合わせて90万円になります。NISAを使わなければ税引後の利益が80万円なので10万円得しますが、結果的に利益合計100万円に対し10%の軽減税率が適用される2013年までと同じになります。
次は、利益も損失も生じた2つのケースです。(2)の場合は、NISAでの利益50万円は非課税で、特定口座での損失50万円は損益通算・繰越控除を適用できます。この場合、合計すると損益ゼロなので、NISAを使っても使わなくてもその年だけ見れば同じですが、特定口座での損失50万円を繰り越せる分、メリットになります。
一方、利益・損失が逆の(3)の場合は、特定口座での利益50万円に対して10万円の税金がかかるので、税引後の利益は40万円になります。ところが、NISAでの損失50万円 は損益通算ができないので、結果的に税金分10万円が丸々損したことになります。
どちらも損を出した(4)の場合は、特定口座での損失50万円のみ損益通算・繰越控除を適用できます。この場合、NISAを使わなければ100万円まで損益通算・繰越控除ができるので、結局、NISAを使ったことで翌年以降の利益に対する節税効果が小さくなってしまいました。
投資先の選択が重要に
つまり、(3)や(4)のケースのようにNISAで損失が生じた場合には、結果的にデメリットになるので、どのような投資先でNISAを使ったらよいかの選択が重要になってきます。
もちろん、これは買った翌年に売却した場合のシミュレーションなので、実際には含み損を抱えているものは売らなければよいのですが、保有し続けても非課税期間の5年以内に利益を出せる保証はありません。次回は、どのような投資先がNISAに向いているかを考察します。