経営者や富裕層の方たちの間では、「 生命保険を用いた〇〇対策 」というものはかなり広く浸透しています。
〇〇のなかには、相続(税)、事業承継、遺産分割、決算、メンタルヘルスなどさまざまな言葉が当てはまるでしょう。これは、生命保険という金融商品が単なる“ 保障機能 ”だけでなく、その他の機能も果たせることをよく理解されているからにほかなりません。
では、その機能とは何かといいますと、“ 貯蓄機能 ”、“ 財産の圧縮機能 ”、“ 財産の移転機能 ”などのことで、要は、「資産を守る・増やす」ということに直結する機能のことです。生命保険を“ 保障機能 ”の金融商品としてしかみていなかった方からすれば、「 どういうこと? 」と思われることでしょう。
今回は、そのノウハウの一端を相続(税)対策を例に御紹介します。
生命保険を用いた相続(税)対策
生命保険において、受け取った死亡保険金の課税関係は、「 契約者・被保険者・受取人 」が誰であったかで異なります。これをうまく利用するのです。
「 契約者:法定相続人、被保険者:被相続人、受取人:法定相続人 」
とし、その保険料を暦年贈与で毎年の基礎控除110万円以内で被相続人から法定相続人に贈与します。
そうすると毎年の贈与は非課税で、受け取る死亡保険金は受取人(法定相続人)の一時所得扱いとなり、総合課税になります。
ほとんどの場合、前者よりも後者の方が最終的に残るお金は多くなり、資産を守れるでしょう。このように、生命保険の契約者名義を工夫して、暦年贈与の非課税枠を活用するだけで、かなりの相続(税)対策がおこなえることになります。(もちろん、被保険者(被相続人)が生命保険に加入できることが前提)
どうでしょうか? 生命保険が“ 保障機能 ”だけでないことが少しは分かっていただけましたでしょうか。今回は、契約者名義を利用したノウハウの一端だけを御紹介しましたが、生命保険にはこれ以外にも
・ 解約返戻金を活用したもの
・ 契約者変更を利用したもの
・ 減額(一部解約)や保険期間変更などを利用したもの
など、生命保険ならではのノウハウがいろいろとあり、相続(税)対策だけでなく、さまざまな対策で、個別状況に合わせた工夫ができるのです。
もちろん、「租税回避行為」などとみなされないようにすることは忘れないでください。上辺だけのノウハウでは後々困ることになってしまいます。必ず、保険税務に精通している方に相談するようにしてください。
2015年(平成27年)1月1日以降に発生する相続から増税となることから、相続(税)対策に対する関心は非常に高まっております。昨年以降、贈与税の申告件数も増加しており、資産の移転が既におこなわれています。今回御紹介した生命保険を使った対策は、戦略的におこなえば効果の高いものですので、“ 資産を守る・増やす ”一助になるものでしょう。(執筆者:小木曽 浩司)