最近テレビ番組で取り上げられたことなどもあり、よく話題に上る「預金封鎖」。現代の日本でありうる話なのか? 仮に起きたらどんなことになるのか? 私見的にですが考察してみました。
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目次
預金封鎖が行われるケース
一般的に「預金封鎖」が行われるケースには、
(2) インフレが行き過ぎた場合に、市場に出回った通貨の流通量を制限して、金融政策でインフレを押さえようとするケース。
などがあります。
預金封鎖の歴史
さて、日本にも「預金封鎖」された歴史がありました。 昭和21年2月のことです。
当時の政府債務の水準は、現在でいうGDPの2倍を超えており、また、モノや食料が極端に不足し猛烈なインフレが起き、経済は破綻しかねない状態にまで追い込まれていました。まさに上記(1)と(2)のケースが同時に起きていたといったところでしょうか。
そこで政府は、政府の債務を返済するため、またインフレを抑え込むため、国民資産への依存、そして流通するお金の量を強制的に減らす「預金封鎖」を断行したものと思われます。
現在の財務省は、当時の大蔵省。そこの渋沢敬三大臣は「政府はなぜこうした徹底した、見ようによっては乱暴な政策をとらなければならないのかは、悪性インフレ封じ込めるためのやむをえない方法」などと国民に呼びかけます。
政府の債務を返済するために、またインフレを沈静化させるために、国民が持つ預金に目を付けたといったところでしょうか。
いま、現実におきたら?
もし、現代において「預金封鎖」が起きたらどうなるでしょうか?
これまで貯めた預貯金が凍結してしまうのですから、おそらく銀行に長蛇の列…いわゆる取り付け騒ぎなどが起こってパニック状態になるかもしれません。よく言われるのが、そこに巻き込まれないために「海外資産や株式への逃避しておけばよい」といった対応策の話です。
ただし、国際分散投資の観点から外貨資産保有ということはあるにせよ、全額海外資産へというのは現実的ではありませんし、仮にその様なパニック時であれば株式も大暴落となっている可能性が大きいと思います。
よって、あくまで仮の話ですがもし現実に「預金封鎖」が起きたとすれば多かれ少なかれほとんどの国民が影響をこうむることになるでしょう。
預金封鎖その現実性
では、このような「預金封鎖」の現実味ですが、昭和21年当時と今とでは、経済的な基礎体力が違いますから、まず同じような状況になるとは考えにくいと思います。また、当時は明治憲法が効力を持っていましたが、現憲法下の「財産権の保護」という観点からも同様の措置を実施することは容易ではないと思われます。
ただし、筆者がコラム(「スタグフレーションとならないよう… 良いインフレと悪いインフレ」、「日銀の追加金融緩和で”一気通貫”? カンフル剤の副作用に注意」)でも書いてきたように、大胆な金融緩和の副作用や日本の財政が先進国で最悪の水準まで悪化していることなどを考慮すると、「預金封鎖」は現実性のない過ぎ去った古の一事件と片づけるのではなく、それを教訓として常に世の中や経済情勢、物価状況などについて敏感でありたいものだと思うのです。(執筆者:阿部 重利)