今回はあまり馴染みがないかもしれませんが、一時所得について簡単にご説明したいと思います。
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目次
1. 一時所得とは
一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得のことです。
2. 一時所得と税額の計算方法
(注)その収入を生じた行為をするため、又は、その収入を生じた原因の発生に伴い、直接要した金額に限定されます。
ここで注目すべき点は、一時所得の金額は事業所得、不動産所得及び給与所得などの他の所得と合算して総所得金額を計算した後に納付すべき所得税を計算するのですが、一時所得はその所得金額の2分の1に相当する金額を合算することが認められています。
上記のとおり、
・一時所得の金額の2分の1に相当する金額を事業所得、不動産所得及び給与所得などの他の所得と合算して総所得金額を計算する。
という2つのメリットがあるので、節税対策として利用することができます。
なお、一時所得内において、特別控除額を控除する前の利益から損失を控除することを内部通算といいます。一時所得内の内部通算はできますが、一時所得全体でマイナスとなった損失を他の所得と損益通算(一時所得の金額の計算上生じた損失を事業所得、不動産所得及び給与所得などから控除する)ことはできませんので、十分にご留意ください。
3. 具体的な事例
【1】 死亡保険金
病気などで被保険者が死亡し、保険金受取人が死亡保険金を受取った場合には、保険料の負担者、被保険者及び保険金受取人が誰であるかにより、所得税、相続税又は贈与税のいずれかの課税対象になります。
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(注)被保険者であるA(父)が死亡
(1)のケースでは、B(長男)は一時所得として所得税を申告します。特別控除額(最高50万円)と2分の1の所得減額効果があり、B(長男)に保険料を負担する余剰資金がない場合は、A(父)の生前にA(父)からB(長男)に一定金額を贈与しておく方法も考えられます(この場合は、贈与税の申告の要否に留意)。
(2)のケースでは、B(長男)はみなし相続財産として相続税を申告します。
(3)のケースでは、B(長男)からC(孫)への贈与とみなされ、C(孫)が贈与税を申告します。
【2】 満期保険金
生命保険契約が満期になり満期保険金を受取った場合には、保険料の負担者及び保険金受取人が誰であるかにより、所得税又は贈与税のいずれかの課税の対象になります。
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(4)のケースでは、D(夫)は一時所得として所得税を申告します。特別控除額(最高50万円)と2分の1の所得減額効果があります。
(5)のケースでは、D(夫)からE(妻)への贈与とみなされ、E(妻)が贈与税を申告します。
【3】 法人からの贈与により個人が取得する金品
法人(株式会社又は合同会社など)から個人に贈与された金品(業務に関して受けるもの及び継続的に受けるものは除く)も一時所得となりますので、例えば、個人が非上場の中小企業から金品を取得する場合には、節税対策として有効活用できる場合があります。
ただし、法人からではなく、個人(父)から個人(子)への金品の贈与は贈与税が課税されますので、一時所得として所得税を申告することができません。また、法人側では贈与した金品の金額は寄付金として処理されます。
法人からの贈与により個人が金品を取得する場合の法人及び個人の課税関係については専門家にご相談ください。
4. まとめ
一時所得の考え方を有効活用すれば、一定の節税効果が期待できますので、ご参考にしてください。(執筆者:美藤 直人)