年金の不安はつきません。アラフォーの筆者が小学生のころから「少子高齢化で年金は破たんする」と都市伝説のように言われ続け、もうすでに数十年が経ちました。
しかし、団塊ジュニアと呼ばれる40代だけでなく、今20歳の新成人でも、年金を受給するときは支払った保険料より増える見通しなんだそう。その理由をみていきましょう。
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目次
5年に一度「財政検証」で年金運用を見直し
年金の運用は、2003年から100年先まで計画を立てて運用しています。
しかし、100年先の経済状況は「予想」でしかありません。そこで、5年に一度、経済状況や人口がどのように変わっているかを検証して、計画を細かく修正しています。これを「財政検証」といいます。
「財政検証」はなにを基準に計算しているの?
・ 経済
マイナス成長した場合の0.4%から順調に成長した場合の1.4%の成長率で8パターンを設定して計算されます。
・ 人口
出生率が1.39人の今より下がった1.12人、あまり変わらないけど少し下がった1.35人、上がった1.60人の3パターンで計算しています。
ほかには、労働人口や男女の賃金水準の差など、たくさんの要素を計算に入れています。こういったものをそれぞれ組み合わせて、詳細な検証をおこなっています。
case1: 人口が若干減って、経済はあまり今と変わらない場合
今後、人口がじわじわ減って、あまり経済も成長しない今のような状態が続くとどうなるのでしょうか。
厚生労働省の試算では、老齢年金を受け取る年齢を65歳からと仮定した場合、受け取れる年金は下記になります。
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参考:厚生労働省 平成26年財政検証結果レポート 経済ケースC、人口中位 ※表に載っているのは昨年(2015年)の年齢です。
2016年の時点
21歳~41歳で職業 会社員・公務員の方は総支払保険料の2.3倍を受け取れます。
自営業や専業主婦で「国民年金」のみに加入していた方は、総支払保険料の1.5倍を受け取れると試算されています。
case2:人口が若干減って、経済がマイナスになった場合
先ほどは現状を維持した場合でした。もしも、経済がマイナスになってしまったらどうなってしまうのでしょうか。
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参考:厚生労働省 平成26年財政検証結果レポート 経済ケースG、人口中位
人口がじわじわ減って、経済がマイナスになったとしても、もらえる年金は支払った保険料元以上に受け取れると試算されています。
現在21歳の方なら、厚生年金を支払っている人は総支払保険料の2倍、国民年金を支払っている人は1.2倍の老齢年金を受け取れます。
これはなぜでしょうか。
国民年金の1/2は「国庫負担」といい、国が負担し、厚生年金は保険料のを勤務先が負担しています。
このため、経済がマイナスになったとしても、わたしたちが支払った年金保険料より多く給付される仕組になっているのです。
経済が成長すれば、年金額が増える
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子どもがどんどん増えると少子高齢化は少しずつ緩和されていきます。そうすると、将来の現役世代が増えるので年金制度はなんとか保てそうです。
しかし、年金はなにも人口だけの問題ではありません。年金は経済の実質的な価値が、給付額に連動しています。日本経済が活性化して景気が上昇すると年金の給付水準がアップすることも考えられます。
今の年金制度は少子高齢化に弱いかもしれません。しかし、今のところ元本が割れることはなく、会社員であれば支払った保険料の2倍以上、受け取ることができます。単純に資産運用と考えても、かなりいい利回りではないでしょうか。
もちろん、年金だけをあてにするのではなく、自分でも老後資金を準備しておくと安心ですね。(執筆者:かわなか りさ)