今年10月の消費税10%改定に伴い、医療費も改定されることが昨年末発表されました。
薬価は0.51%下がるものの、診療報酬0.41%、介護報酬0.39%、障がい福祉サービス等報酬0.44%上がります。
「これでは、いくら資産運用をがんばっても追い付かない!」と思うかもしれません。
まさに「老後の資産計画」は「自分の健康維持」とセットで考えた方が、効率は良くなると思います。
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目次
医療経済の知識
2025年問題とか2040年問題など、医療や介護の費用は、保険料や自己負担を含めて家計とくに老後の生活設計の中では重要な課題です。
平成28年度の人口一人当たりの国民医療費は33万2,000円、65歳未満は18万3,900円、65歳以上は72万7,300円でした。
仮に3割負担ですと自己負担額は、年間約10万円といったところでしょうか。
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これぐらいならなんとか負担できる範囲と思われるかもしれませんが、年代別にみてみると明らかで60歳を過ぎると平均をかなり上回る医療費となっています。
さらに重要なことは、医療費は、洋服を購入するように全て自分のお金で支払っているのではありません。
私たちの税金や社会保険料からも拠出されています。
平成28年度の財源別国民医療費をみると、患者負担と保険料(被保険者)を合わせると39.8%私たちが負担しています。
税金も計算に加えると50%近くになるかもしれませんね。
日本の医療制度は、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入し、お互いの医療費を支え合うとてもいい制度です。
しかし、医療費や介護費の節約を身近なこととして考えていかなければならないと思います。
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年々どうして医療費の負担が増えてくるのでしょうか?
主な理由は3つです。
(2) 国民皆保険制度
(3) 医療技術の進歩
(1)、(2) は、前出のとおりですが、(3) の具体例として、2016年4月から骨軟部がん(切除非適応の骨軟部腫瘍)、2018年4月から前立腺がんと頭頸部がん(口腔・咽喉頭の扁平上皮がんを除く)の重粒子線治療が、公的医療保険が適用になりました。
今まで300万円以上かかっていた治療が、高額療養費などを利用すると10万円程度の負担で治療ができることになりました。
とっても有難いことなのですが、今後の国民医療費にどの程度影響するのか気になるところです。
私たちができる医療費の節約を考えてみましょう
以前、コラムで書きました内容に2つ追加したいと思います。
1. 医療や健康の知識を増やそう
これは、特別な勉強するというのではなく、また、ちまたのうわさを鵜呑みにするのではなく、身近な病気や健康に少し興味を持ったタイミングで、診療ガイドラインなどを参照してみてはいかがでしょうか。
診療ガイドラインとは「特定の診療状況のもとで,臨床医と患者が適切な医療について決断を行えるよう支援する目的で体系的に作成された文書」と定義されています。
代表的なウェブサイトとして公益財団法人 日本医療機能評価機構が運営している「Mindsガイドラインライブラリ」がありますので参考にされてください。
そして、医療や健康の知識を増やすことで、病院での受診時に、自分の不安や疑問・症状を医師にきちんと伝えることができれば、いい医師や治療に出会える確率が高まります。
病気を治すのは、いい医師と巡り合い治療をしてもらうことが重要です。
薬に対する知識も増えることで、薬代の節約が期待
たとえば、2017年6月、厚生労働省から「抗微生物薬適正使用の手引き 第一版 ダイジェスト版」が通達されました。
これは、いわゆる風邪などの抗生物質使用のガイドラインで、一般的な風邪の治療には「抗生物質の使用は必要ない」というものです。
しかしまだ、抗生物質が医師の処方で提供されたり、必要がないという医師に対して患者が処方を求めることがあるそうです。薬の無駄遣いです。
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2. 救急車を呼ぶのをためらう時や、夜間や休日の診察を受ける前に、1度電話して相談してみよう
相談先としては、かかりつけ医や救急休日当番医、救急安心センター事業(#7119)や子ども医療電話相談事業(#8000)などがあります。
また、保険やクレジットカードなどの特典としてついている医療相談サービスなどでもいいのではないでしょうか?
迷った時、焦ったとき、慌てたとき相談することで、落ち着いて対処できるようになります。
※参考#7119の普及状況(平成30年10月1日現在)
【#7119以外の番号で実施している】
特に、小さなお子さんや高齢者がおられるご家庭は、緊急でも相談できるところを決めておくことが大事です。
そして、連絡先を携帯登録し、見えるところにも張っておくようにすると、なお安心です。
自分自身の健康バロメーターを意識しましょう
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定期的に健康診断することも大切ですが、病気は、数値やデーターの変化があらわれる前に小さな違和感や異変として感覚的に教えてくれることがあります。
日ごろから体重や血圧など測定するなり、自身の健康バロメーターをもっておくことが大切です。
まさに、病気予防の最大の敵は、「健康への無関心」といえるのではないでしょうか。
特に私は、健康バロメーターとして体重測定を活用することをおすすめします。
若い方は、ダイエットなど見た目で、体重を気にする方は多いかもしれませんが、実は、体重が軽すぎても健康を損なう可能性が高くなるので注意しましょう。
女性の場合、無月経や低血圧・不整脈などの病気を引き起こす場合があります。
男女ともに更年期には、体重の増加などが懸念されますので、ご自身の標準体重と肥満リミット体重を把握しておくと日ごろの体調管理に役に立ちます。
また、高齢者の方は、筋力が落ちる「サルコペニア」、筋肉が落ちることによって生活機能が低下する「フレイル」があり、体重の減少が伴いますので、注意が必要です。
体重と身長の数値を使って、肥満や低体重(やせ)の判定に用いる国際的な指標として、Body Mass Index (ボディマス指数)の頭文字を取ったBMI(ビーエムアイ)があります。
BMI値は、男性、女性の違いはありませんが、主に成人用基準として使われます。
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医学的には、肥満とは、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で
のものと定義されています。
BMIが22になるときの体重が標準体重で、最も病気になりにくい状態であるとされています。
肥満は、脂肪組織が過剰に蓄積した状態です。
健康に問題がなければ治療の必要はありませんが、BMI25以上で、肥満によって合併症が発症したり、健康に問題が生じたりしている場合は「肥満症」と診断され、減量が必要です。
また「20歳時の体重」から10kg以上増加している方の、「メタボリックシンドローム」に該当している割合が高く、40歳以前でも、運動・食事・喫煙などの関する不適切な生活習慣が形成された結果、「メタボリックシンドローム」に既に該当している方が相当程度いること、「メタボリックシンドローム」を未然に防ぐために、適切な体重の維持や生活習慣の改善が必要という調査結果もあります。(引用:厚生労働省「特定健診・保健指導の医療費適正化効果等の検証のためのワーキンググループ標準的な質問票の分析に関する報告」)
生活習慣を改善して、生活習慣病を予防しましょう
肥満に関連するもので、「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」と「生活習慣病」があります。
「メタボリックシンドローム」とは、内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさり、心臓病や脳卒中などの動脈硬化性疾患をまねきやすい病態のことをいいます。
日本では、腹囲(おへその高さ)が男性85cm女性90cmを超え、高血圧・高血糖・脂質代謝異常の3つのうち2つ以上当てはまると「メタボリックシンドローム」と判定されます。
また、「生活習慣病」とは、身体活動・運動や食事、喫煙、飲酒、ストレスなどの生活習慣が深く関与し、発症の原因となる疾患の総称です。
日本人の死亡原因の割合が非常に高いがん、脳血管疾患・心疾患、動脈硬化症、糖尿病、高血圧症、脂質異常症など、いずれも「生活習慣病」とされています。
また、「メタボリックシンドローム」の方は、「メタボリックシンドローム」でない方は比べて、医療費が年間約8万円~18万円多くなり、自己負担額3割で計算すると2.4万円~5.4万円自己負担が増えるというデーターもあります。
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「生活習慣病」の方の医療費(推計1入院当たり)は、脳血管障害:86万8,714円、人工透析:77万1,485円、虚血性心疾患:53万8,044円となっており、医療費にも大きな影響を与えています。
これらの多くは、不健全な生活の積み重ねによって内臓脂肪型肥満となり、これが原因となって引き起こされるものです。
ですが日常生活の中での適度な運動、活発な生活習慣、バランスの取れた食生活、禁煙等を実践することによって予防ができます。
詳しくは、公益財団法人 健康・体力づくり事業財団の「健康手帳」が分かりやすくコンパクトにまとまっています。
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どの年代の方も、人それぞれ健康の形はちがいます。
お金も時間も必要です。
だからこそ、早くから健康を意識した行動を起こすことによって、自分なりの工夫ができてくるのではないでしょうか。(執筆者:京極 佐和野)