かんぽ生命は、「保険の見直し」により顧客が不利益を受けたおそれのある事例が約2万件にのぼると発表しました。
保険募集時の説明が十分だったかどうか、かんぽ生命は今後、詳細な調査を行うとしています。(2019/6/28 日本経済新聞)
保険会社の保険募集方法が適切であることはもちろん重要です。
しかし、私たち消費者も提案されている「見直し」が本当に必要なのか、冷静に判断することで、自分の身を守る必要があります。
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「保険の見直し」による不利益
今回の報道では、旧契約の解約後に新契約に入り直す「乗り換え」に関する不利益事例が話題となっています。
最も多かったのが、旧契約の解約後、新契約を申し込んだものの引き受け謝絶となった事例です。
生命保険や医療保険の場合、一般に、年齢が上がるにつれて死亡や疾病のリスクが高まります。
そのため、同程度の保障を求める場合、新たに契約を結び直すと保険料は上がります。
乗り換えのメリットがあるのは、家族構成の変化などにより従前の保障内容を必要としなくなった際に、契約を結び直して保険料が割高になるものの、保障内容を大幅に削ることでトータルの保険料を低くできる場合などです。
しかし、旧契約締結時から新契約申込時までに何らかの病気にかかって入院歴が増えている方などは、最悪の場合、新契約の締結を断られてしまいます。
このように乗り換えに失敗すると、これまで持っていた保障を失い「無保険」となってしまいます。
GNP営業に要注意
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「こんなことなら、見直しなんてするんじゃなかった。」こう思わないで済むように、私たちは、自分の身を守る必要があります。
保険会社や保険代理店の営業社員の中には、過大なノルマを課せられていたり、営業成績が収入の多寡に直結する給与体系であったりといった、強いプレッシャーの中で働く方が多くいます。
もちろん、お客さんやその家族の幸せを願って、過不足ない保障内容の契約を提案してくれる営業社員もたくさんいらっしゃいます。
しかし、中には、新規開拓よりハードルの低い、既存の「お人好し」なお客さんに「保険の見直し」を繰り返させて契約数を稼ぐ社員も存在します。
このような社員は、主に「GNP(義理・人情・プレゼント)営業」を行って契約数を稼ぎます。
筆者が法律事務所で働いていた際、破産や個人再生の依頼者の中には、
「〇〇さんはお子さんが小さくて大変だろうから」
「お歳暮、お中元などもマメにくれて気にかけてくれてるから」など
といった理由で、不必要な保険契約をしている「お人好し」な保険契約者も何人かいらっしゃいました。
借金に苦しむ一方で、GNP営業を受けて断れず、不要な保険料を払い続けていたのです。
保険は、多くの人にとって、人生で2番目に大きな買い物だと言われています。
大事なお金の使い道を考える際は、いったん感情と理性を切り離して考える必要があります。
提案内容が本当に自分に必要な保障なのか、必要だとしたら、保険料は他の保険会社と比べて高くないか、冷静に判断するべきです。(執筆者:竹内 志帆)