各種控除はいつも年末調整で済ませているので、確定申告は無縁だという方も多いかもしれません。
しかし実は、知らなかっただけで申告しておけば還付金をもらえたケースもあります。
そこで今回は、普段確定申告をする必要がないサラリーマン等でも、確定申告で還付金が発生するよくあるケースを10パターンご紹介します。
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目次
1. 市販薬を合計1万2,000円以上の購入した
こちらは特に該当する家庭が多いかもしれません。
2017年より始まった医療費控除の特例であるセルフメディケーション税制によって、市販薬の購入についても所得控除を受ける事ができるようになりました。
具体的には、対象市販薬を購入した金額のうち1万2,000円を超える部分について、8万8,000円までは全額所得控除できるというものです。
健康診断を受けている人を対象としており、従来の医療費控除(10万円以上の医療費を支払った場合に受けられる控除)との併用はできません。
年末調整では申告できない項目ですので、確定申告での申請が必要です。
詳しくはセルフメディケーション税制の専門サイトに解説がありますので、ぜひチェックしてみてください。
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2. 10万円以上の医療費を支払った
入院や治療で実際に支払った医療費の合計金額から保険金で補填された分を差し引いた額について、最高200万円までは所得控除を受けられます。
自己または自己と生計を同一とする配偶者や親族のために支払った医療費が対象となります。
前述の医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)とは併用できないので注意が必要です。
3. 台風や豪雨などの自然災害や盗難にあった
2019年は度々の台風や豪雨の影響で、河川の決壊や家屋の倒壊が相次いで発生しました。
被災者は納税や申告について猶予を受けることができる他、住宅や家財などに損害を受けた場合には雑損控除を受けられます。
震災や台風などの自然災害以外にも盗難や横領、火災にあった場合にもこれを適用できます。
損失額が大きく所得から控除しきれない場合でも翌年以降3年間にわたって控除を繰り越せます。
ただし、別荘や1個の価格が30万円以上の骨董、美術品など生活に通常必要でないとされるものについては対象外です。
4. 退職して年末調整を受けられなかった
年の途中で退職し、かつその後再就職しなかったケースや11~12月に再就職したケースなど、新しい職場で年末調整を受けることができなかった場合には確定申告が必要です。
その後再就職しなかった場合や転職後の給与が転職前より低いケース、空白期間があった場合などでは源泉徴収されていた税額よりも少ない納税で済むため、還付金が発生することが多くなります。
5. 秋頃からiDeCoを始めて年末調整に間に合わなかった
2019年は特にiDeCoを始めた方が多いかもしれませんが、9月以降に申し込んだ場合には「小規模企業共済等掛金払込証明書」が間に合わず、年末調整で申告できないこともあります。
iDeCoの掛金は全額所得控除を受けることができるので、年末調整に間に合わなかった場合にも確定申告で申請して還付金を受けられます。
6. ふるさと納税をしてワンストップ特例制度を使っていない
ふるさと納税では確定申告が不要となるワンストップ特例を利用する事ができますが、ワンストップ特例を使わなかった場合には確定申告で寄付金控除を申請する事になります。
また、ワンストップ特例の申込後に引越しをして、その事を自治体に届け出ていなかった場合にも控除を受けられなくなりますので、自治体に届け出るか確定申告で申請する必要があります。
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7. 研修や資格取得費用を支払った
サラリーマンであっても業務に必要な出費であれば経費として「特定支出控除」を受けられます。
特定支出控除の対象には通勤費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費、勤務必要経費があります。
勤務必要経費にはスーツ代やクリーニング代も含まれますが、給与所得控除額の2分の1以上出費した場合にのみ適用されるので、日常で使う金額だけではこの額を超えない場合がほとんどです。
適用されるケースがあるとすれば、例えば業務に必要な研修や資格取得のための費用を自分で支払った場合などが考えられます。
特定支出控除が受けられそうな場合にはクリーニング代なども合算して控除額を増やした方が得なので、普段から仕事に関連しそうな出費はレシートをとっておくことをお勧めします。
8. 複数の特定口座で株式や投資信託の損失が出た
源泉徴収のない特定口座や一般口座で株式等の取引を行っている場合は、売却益や配当金を受けていれば確定申告が必須になります。
一方、特定口座(源泉徴収あり)を使っていれば源泉徴収により金融機関を通して税金が徴収されています。
しかし源泉徴収ありの特定口座を使っていても、確定申告をした方が良いケースがあります。
株式等で損失が出た場合、同じ特定口座内であれば他の売却益と清算する損益通算を受けることができますが、異なる特定口座間では損益通算を受けられません。
そのため複数の特定口座で譲渡益や配当金による利益と損失が出ている場合には、自ら確定申告をして損益通算をする事で還付金としてお金を取り返す必要があります。
9. 配当金を受け取った
株式取引で配当金を受け取った場合、特定口座(源泉徴収あり)であれば源泉徴収により納税が完結しています。
しかし、源泉徴収で徴収される税額よりも、実際に支払うべき税額の方が低いケースがあります。
具体的には、配当金を含む課税所得が900万円以下の人であれば、配当金を総合課税で申告して配当控除を受けることで還付金が発生するのです。
課税所得が900万円とは年収で推定すると1,200万円から1,300万円程度となりますので、それ以下であれば還付金を受けられることになります。
源泉徴収で済ませてしまうのは楽ですが、確定申告で配当控除(総合課税)や他の損失との損益通算(申告分離課税)を受けた方が得になるケースも多くありますので注意が必要です。
10. 住宅ローンを組んだ
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住宅ローンを組んで1年目の場合、住宅ローンの残高に応じた住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けるために確定申告が必要になります。
2年目からは年末調整で申請可能ですが、1年目だけは確定申告が必要になるので注意が必要です。
多くの場合、住宅ローンを借入れる際に担当者から説明があるはずなので詳細は触れませんが、残高証明書や不動産売買契約書等多くの書類が必要になりますので、確定申告ギリギリになって焦らないよう早めの準備が必要です。
払う必要のない税金は払わないようにしましょう
今まで確定申告をした事がない人でも、セルフメディケーション税制や住宅ローンなど当てはまるケースは多くあるのではないでしょうか。
パソコンで確定申告書類を作れるe-Taxに加えて今年度からはスマホでも確定申告できるようになり、どんどん手軽になってきています。
払う必要のない税金を払って損をしてしまわないよう、当てはまる項目が1つでもあれば確定申告をする事をオススメします。(執筆者:島村 妃奈)