家族に介護が必要になり、自宅で介護することが困難である場合に介護施設への入居を考える方は多いと思います。
そのような時に介護施設を選ぶ条件として、まずは利用料金に注目することでしょう。
介護保険が適用される入居型の施設の中で、最も低料金で利用できる施設は一般的に「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」であると言われていますが、その利用料金には施設によって少しずつ差があります。
その差はどこから生まれるのか、今回は利用料金が低額である施設を選ぶために確認するポイントを紹介します。
目次
居室のタイプが異なる
まず、確認することは実際に生活する居室のタイプです。
介護老人福祉施設で設定されている居室は、大きく分けて「多床室」と「個室」の2種類です。
(1) 多床室

多床室は居室の利用定員が2~4人と規定されており、利用者自身のプライベートスペースが狭くなるため、居室料金は個室と比較して安価に設定されています。
(2) 個室

個室は、広さや設備によって「従来型個室」、「ユニット型準個室」、「ユニット型個室」に分けられています。
多床室に比べてプライベートスペースが確保しやすく、自分の使いやすい家具の持ち込み等が可能であることが多いため、多床室と比較して居室料金が高くなってしまいます。
料金設定

料金設定は、
の順に右にいくほど高いので、料金を抑えたい場合には多床室を選ぶとよいことでしょう。
ただし、現在新しく介護老人福祉施設を開設する場合には原則個室で開設する必要があり、多床室の施設の割合は減少しています。
個室と比較して多床室の入居希望者数は多いため、入居までの道のりは狭き門であるということを覚えておきましょう。
なお、特定の要件を満たしている方は、住所地のある市町村等に申請することで居室料金の減額を受けられるため、一度は相談してみることをおすすめします。
日常生活費の設定の有無
次に挙げるポイントは、日常生活費の有無です。
日常生活費とは、日常生活を送るために必要な生活用品を施設が提供する対価として設定される料金のことです。
施設が用意している物品を利用者が使用したいと意思表示をした場合に請求することが可能な費用です。
そのため、利用者に一律に同じ商品を提供している場合には、日常生活費を利用者に対して請求することはできません。
請求の手間を省くために日常生活費を設定せずに、日常生活を送るのに必要な用品を提供している施設も存在しています。
日常生活費の設定がない施設を選択することで、施設の利用料金を抑えられる可能性があります。
日常生活費を設定していない施設の場合には、身の回りの生活用品のうち自分達で準備しなければならない生活用品を確認しておき、予想外の出費がないようにしておくことで安心感につなげられることでしょう。
施設の形態、人員配置によって異なる加算いろいろ

最後に挙げるポイントは、設定されている各種加算について確認することです。
施設を利用する際に支払う基本の「施設サービス費」は居室のタイプによって決定されます。
また、これに加えて、人員配置が手厚かったり、介護の有資格者が多いなどの要件を満たしている施設は「加算」と呼ばれるインセンティブをもらえます。
加算は介護保険の適用を受けているため、その一部は利用者が負担します。
そのため、加算が設定されていない施設と比較すると、加算が設定されている施設を利用する場合には負担する金額が少し増えます。
設定されている加算の金額がわずかでも、その内容によっては毎日かかってくるものもあります。
利用料金を少しでも抑えたいということであれば、設定されている加算について事前に確認しておくとよいことでしょう。
しかし、利用者にとって、これらの加算制度は、決してデメリットになるものばかりではありません。
その分、安心して介護を任せることができる証でもあるので安心材料にもなります。
施設を見つけたら実際にかかる金額を問い合わせてみる
低所得者の味方であると言われる介護老人福祉施設は、施設の設備等によってその利用料金が異なります。
入居してから思いのほか利用料金がかかるなど、経済的な負担で残された家族の方達の生活が圧迫されることがないよう、入居を決める前にその施設の概要を調べておくのは大切なことです。
同じ種類の施設でも利用料金に差がある理由について紹介しましたが、施設ごとの料金体制はとても複雑です。
気になる施設が見つかったら、実際にかかる金額を気軽に問い合わせてみましょう。
入所を決める前には必ず見学に足を運んでみてください。(執筆者:老人ホーム施設長 佐々木 政子)