自分の身近な人に介護が必要になり、それを自分達だけで担う事ができなくなった時、介護サービスの利用を考えます。
しかし、いざ介護サービスを利用した時、予想外にお金がかかると思った人も多いのではないでしょうか。
少しでも介護サービスの支払いを抑えたい人のために、確認して欲しい高額介護サービス費制度をご紹介いたします。
目次
介護保険の介護サービス利用料も1~3割の自己負担で安心
基本となる介護サービス利用料の仕組みについて知っておきましょう。
介護保険での介護サービスは、要介護度によって保険が適用される範囲が決まっています。
保険が適用される範囲内であれば、利用料金の1~3割を自己負担する事で介護サービスを利用できます。

自己負担する割合は、そのサービスを利用する利用者の所得によって異なり、所得が多い程、自己負担する割合は増えるような設定になっています。
しかし、介護サービスを利用した際にかかる食費や居住費などは、介護保険の適用範囲外となるため、介護保険は適用されず、全額実費での支払いになるので少し注意が必要です。
介護サービス利用が増えたときの強い味方、高額介護サービス費制度
高額介護サービス費は、前の項で説明した介護サービス利用料の保険適用部分の支払いが、同じ月で基準額を超えた時、還付されるお金の事です。
その基準額は、介護サービス利用者が属する世帯構成と世帯の課税状況によって異なります。
給付の基準額は複雑で自分では計算が難しいのではないかと心配の方も多いかと思いますが、安心してください。
この高額介護サービス費の還付の安心できるポイントは、対象になった場合には通知が届くということです。
利用した介護サービスの保険適用部分の利用料金の支払いが、基準額を超えた場合、その利用者の住所地がある市町村からそれを知らせる通知が届きます。
同時に、高額介護サービス費の還付申請書が送られてきます。
その申請書に必要事項を記載した上で、市町村に申請をすれば、高額介護サービス費を受け取れます。
ただし、通知か届いたからと安心して申請をしなければ、受け取れませんので、必ず申請を行うことを忘れないでください。
高額介護サービス費の還付を申請する場合、ある程度期間がたっても行えますが、申請が遅れれば還付を受けるタイミングも遅くなります。
毎日の介護に追われていると後で「ついでの時に」と後回しになりがちですが、申請を忘れないコツは、通知を受け取ったらすぐに申請する事です。
1度高額介護サービス費の還付を申請すると、それ以降に該当する事由が発生した際には、自動的に申請された口座に還付金が支払われます。
介護サービスを利用し始めると、これらの通知の他、市町村から郵便物が到着する機会が増える事が多くなります。
こまめにポストを確認すると良いでしょう。

高額介護サービス費制度を利用する際の注意点
最後に、高額介護サービス費制度を利用する際の注意点についてもいくつかおさえておきましょう。
還付されるまでは自己負担が発生
高額介護サービス費制度は、保険適用部分の支払いが決められた上限を超えた時に申請する事ができます。
利用した介護サービスに対する支払いを行った上で還付を受けますので、一時的ではありますが自己負担をしなければなりません。
介護サービス費用が上限額を超えているかどうかは利用した月からおよそ3か月ほど後に分かる事となっています。
上限額を超えていたとしても、すぐには還付が受けられないという事は覚えておきましょう。
高額介護サービス費制度の対象外もある
また、保険が適用される介護サービスでも「福祉用具購入」や「住宅改修」等は高額介護サービス費制度の対象から除外されているため、負担額が高額になったとしても還付を受ける事ができませんので、あわせて覚えておくと良いでしょう。
ケアマネージャーに任せきりにしないことも大事
介護のプロである専門家の支援が受けられる介護サービスは、介護者の強い味方ですが、その利用料が家族の生活を圧迫してしまっては、共倒れとなってしまう危険性もあります。
上手に制度を活用し経済的な負担を軽減していく事は、長く続く介護生活を過ごす上で大切な事です。
「利用料金を抑えたい」という要望は恥ずかしいことではありません。
介護サービスはさまざまな介護サービスと地域資源の組み合わせで、多様なプランをたてることも可能です。
介護サービスや利用料金についてはケアマネージャーに任せきりではなく、一緒に相談しながら介護サービスを見直していくといった姿勢も、介護費用の削減につなげるコツです。(執筆者:現役の老人ホーム施設長 佐々木 政子)