身内の介護が必要となり、家庭ではなく施設に入居して介護をお願いしたい際に最も気がかりなのがお金のことです。
施設によっては、月々の利用料の他に入居一時金と呼ばれるお金を支払う必要があるものもあります。
そもそも、この入居一時金というお金はどのような性質のものなのでしょうか。
介護施設選びに失敗しないためにも、今回はこの入居一時金の仕組みについて解説しておきたいと思います。
目次
入居一時金の説明は施設側の義務
入居一時金を設定している施設は「有料老人ホーム」に多く見られます。
高齢者の生活支援を行う施設である「特別養護老人ホーム」や「介護老人保健施設」などは入居一時金をもらうことは禁止されているため、設定されていません。
入居一時金とは、その施設を利用する前に支払われるお金のことです。
入居一時金の名目としては、大きく分けると
・ 利用料の家賃相当分を前払いする
という2つの意味合いに分けられます。
以前は「施設協力金」等、その金銭の使用目的が不明確な時代もありましたが、現在では入居一時金の使用目的や内訳について、明確に説明する義務が施設側に課せられています。
しかし、近年では料金設定も二極化の様相を呈しており、「入居一時金0円」などを謳う施設も増えてきています。
また、
・ 入居一時金を支払って月額利用料を抑えられるコース
・ 入居一時金を支払わず月々の利用料に上乗せして支払う方法
の2パターンの料金設定をしている施設も増えてきています。

入居一時金を支払う際に確認しておきたいこと
入居一時金を支払う際に注意しておきたい点があります。
入居一時金は施設を利用する権利を買うためのお金、またはその施設の家賃の前払いといった意味合いを持つお金です。
一定の期間を過ぎた場合には返却なし
このお金は施設を退去する際に一定割合を返却してもらえるとされていますが、一定の期間を過ぎた場合には返却されないということに注意して下さい。
入居一時金は一定期間で償却されますが、その期間に決まりはありません。
多くの施設では5~15年程の期間を経て入居一時金が償却されるので、施設に入居する前にその期間を確認しておくことが大切です。
また、多くの施設は初期償却という制度を設けているため、注意が必要です。
入居一時金の初期償却とは、施設に入居した時点で入居一時金の中から施設が一定割合のお金を受け取ることを指します。
入居初日に100%償却もあり
初期償却の割合も施設によってさまざまですが、入居一時金の金額が少ない施設などでは入居初日に100%償却する施設もあるため、入居一時金の償却期間と合わせて確認しておくべき事項と言えるでしょう。
短期間で施設を退去する場合
入居一時金の例外規定として、3か月以内で施設を退去した場合については、初期償却分を除いた全額を返金することが法律で定められています。
短期間で施設を退去した場合には、入居一時金の返還を施設に請求することを忘れないようにしましょう。

入居一時金は支払った方がよいのか
有料老人ホームの料金体系は、
・ 入居一時金を支払わず月々の利用料に上乗せして支払う方法
を設定している施設が増えてきています。
支払い方法を選択できる有料老人ホームに入居したいと考えている方は、入居一時金を支払った方がよいのかどうかを悩む方が多いのではないでしょうか。
ここではそのような悩みについて解説していきます。

施設の利用期間をベースに考えてみる
入居一時金を支払った方がよいかどうかは、施設入居後の生活をどのように送りたいと考えているかによって異なります。
その施設への入居が一時的であったり、短期間であることが分かっている場合には入居一時金を支払うと損をしてしまう場合があります。
前項で述べた通り、入居一時金は初期償却というものが設けられていることがほとんどです。
短い期間しか利用しないということが決まっているのであれば、入居一時金を支払わない方がよい場合があるのです。
反対に、その施設を終身利用したいと考え、長い年数をそこで過ごす予定であれば入居一時金を支払うことは問題ないといえます。
ご自身のライフプランと照らし合わせながら検討することが必要ですが、どうしたらよいのかが分からない場合には施設の相談員に相談することをおすすめします。
自分が今後どのように生活していきたいのかをなるべく詳しく話すとよいことでしょう。
施設の相談員はさまざまな方の入居相談を受けているため、その方に最も良いと言える方法を提案してくれます。
入居一時金を正しく理解して老後資金を減らさない
施設を利用するために支払うお金は高額であり、施設を利用した期間によっては返金されない場合もあります。
入居一時金のことを正しく理解せずに老後資金を減らしてしまい、生活が成り立たなくなるといった事態を避けることが大切です。
介護施設を選ぶ際には施設の場所、形態、料金などさまざまな注意点や選び方がありますが、「本人が生活しやすい環境がそこにあるか」を重視することをおすすめします。(執筆者:老人ホーム施設長 佐々木 政子)