「○○万円控除!」や「最大○○万円還付!」という言葉は魅力的ですが、控除額の金額がそのまま還付されるとは限りません。
また、同じ控除額なのに、申告する人によって還付される金額が違うこともよくあります。
そこで今回は、勘違いしやすい税金の還付申告の落とし穴について解説します。

目次
税金が還付になるのは先に納税している場合のみ
確定申告で所得税が還付されるのは、事前に支払っていた所得税の金額が最終的に納める金額よりも多かった場合です。
会社員の方の場合には、年間の収入を証明する書類として「源泉徴収票」が会社から発行されます。
源泉徴収票の中には、先に支払った所得税の金額を表している「源泉徴収税額」があり、どれだけ追加の控除額が存在しても還付される金額は源泉徴収税額が最大です。
また、源泉徴収税額がゼロだった場合には所得税が還付されることはありませんのでご注意ください。
所得控除は高額所得者ほど還付される金額が多い
所得控除には、配偶者控除や扶養控除などの多数の控除が存在し、控除額の数字はどれも大きいと言えます。
一例をあげると、特定扶養親族の扶養控除額は63万円です。
しかし、所得控除は所得金額から差し引く金額であり、差し引き後の所得金額(課税所得金額)に対して税率を乗じて所得税が算出されます。
そのため
所得金額 – 所得控除 = 課税所得金額
課税所得金額 × 税率 = 所得税
また、所得税の税率は、課税所得金額が多くなると税率が上がりますので、所得控除は高額所得者ほど節税効果の高い制度です。
たとえば、100万円の所得控除がある場合に、所得税率が10%の人なら10万円分の所得税を控除する効果があります。
一方で、所得税の最高税率である45%を適用する人の場合、同じ所得控除100万円でも45万円分の所得税を控除する効果がありますので、節税効果には個人差が生じます。
税額控除されるのは納税する所得税の金額まで
税額控除は所得控除とは異なり、算出された所得税から直接差し引く控除です。
そのため、30万円の税額控除であれば30万円分の所得税を控除する効果があります。
しかし、控除できる金額は、算出した所得税の金額が上限です。
30万円の税額控除を適用できる人でも、所得税の納税額が10万円であれば、10万円しか控除できません。
住宅ローン控除の金額が20万円あったとしても、先に納めていた所得税が5万円だった場合には還付される金額は5万円が最大です。
確定申告の還付は納め過ぎていた税金を戻してもらうだけ
還付申告は、納め過ぎていた税金を戻してもらうための手続きであり、先に納めた税金がゼロであれば還付される金額もゼロです。
所得が多い人は、ふるさと納税や住宅ローン控除を利用して、たくさんの還付金を受け取ることも可能です。
しかし、収入がそこまで多くない人は、所得控除を適用しても還付される税額はそこまで多くありません。
また、確定申告で税金が戻ってくるのは嬉しいのですが、節税対策のコストの方が高くなっては本末転倒ですので、費用対効果の高い節税対策から活用しましょう。(執筆者:平井 拓)