介護を必要としている人の中には疾病を持っている方も多く、定期的に病院にかかっている方も少なくありません。
もちろん、特に体調不良等がないため病院にかかっていない元気な高齢者もいます。
しかし、現在体調不良がなかったとしても、定期的に病院にかかる事が後々の支出を抑える事につながる可能性もあります。
今回は、将来的に介護費用の軽減につながる「かかりつけ医」についてご紹介します。

目次
かかりつけ医とは何か
かかりつけ医とは、日本医師会の定義によれば「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」とされています。
(引用:日本医師会)
身体に大きな問題は抱えていなくても、定期的に受診し自分の体の状態を知っているかかりつけ医を決めておきます。
そうすると病気の早期発見や困った時に気軽に相談する事ができるため、生活に対する安心感にもつながります。

では、介護世代がかかりつけ医を持つメリットについて詳しくご紹介します。
介護保険申請に必要な主治医意見書を早めに準備してもらえる
介護保険を利用するためには、介護認定の申請を行う必要があります。
その介護認定を受けるために必要な書類の1つに「主治医意見書」があります。
主治医意見書は、介護認定を受けたいと希望している方の主治医やかかりつけ医などが、本人の病歴や現在の健康状態、現在の生活状況などを書いて市町村に提出するものです。
この主治医意見書がなければ介護保険の認定が下りず、介護サービスの利用が遅れてしまいます。
介護認定を申請した日から介護保険サービスを利用できます。
介護保険サービスは要介護度によって使えるサービスや保険適用の上限が変わります。
そのため、介護認定の結果が出る前からサービスを利用して、予定していたよりも高い金額を支払う事になってしまうこともあります。
また、かかりつけ医や主治医がいない方は、市町村から主治医意見書を作成してくれる医師を紹介してもらえます。
しかし1度も受診した事がない病院では自分の状況を正確に伝えられず、適切な内容の主治医意見書ができあがらない場合もあります。
普段から定期的に受診し、かかりつけ医を作っておく事でより詳しい情報を記載してもらえます。
さらに、その書類を早めに準備してもらう事にもつながります。
往診の対応をしてもらえる
加齢や疾病に伴って体調を崩したり、下肢筋力が低下などが原因で通っていた病院に行けなくなる事もあります。
病院によっては「往診対応可」とうたっている病院の場合は、その病院に依頼すれば自宅まで往診して診療を受けられます。
しかし、往診をしてもらおうと依頼しても、病院によっては新規の患者の場合は往診の対応はしていないという病院も少なくないのが現実です。
自分の足で移動できなかったり、家族が自家用車で送る事も難しい場合は「介護タクシー」があります。
普通のタクシーより料金が高額であったり、予約制の場合も多いため、実際には活用がしにくいというデメリットがあります。
体調が悪化してから病院にかかるのではなく、ある程度元気なうちからかかりつけ医を決めておく事で、結果的に将来かかる介護費用が節約できる可能性が高いといえます。

気軽に相談できるかかりつけ医を
住み慣れた自宅で暮らしたいと希望する高齢者にとって、かかりつけ医は心強い存在です。
高齢になるとさまざまな健康不安も増えてきます。
特定の病気ではないけれど加齢による痛みなどを訴える方も多いです。
自分の身体状況などを気軽に相談できるかかりつけ医を持つ事で、生活の豊かさも変わってきます。
自分が望む生活をなるべく長く続けられるよう、将来の介護費用を軽減させるためにもかかりつけ医を持ちましょう。(執筆者:現役老人ホーム施設長 佐々木 政子)