平成30年版高齢社会白書によると、介護が必要になった原因としては認知症に次いで
「関節疾患」
「転倒・骨折」
が多いとされています。
それらが原因となっている方々にとって、難しい問題となってくるのが「衣類の着脱」です。
衣類の着脱の介助は、実際におこなってみると難しいと感じるかたも多いのではないでしょうか。
もっとラクに「着替えがしたい」と思うことでしょう。
衣類によっては着脱をさせるのが難しく、新しく衣類を買い直す事が必要な場合もあります。
その際に、購入する衣類の選定を間違えてしまうと、さらに行いづらくなってしまったり、再度衣類を買い直す事になり金銭的な負担も出てきてしまいます。
介護用衣類の購入で、失敗しないお得な選び方を紹介します。

目次
伸縮性のある素材の衣類を選ぼう
まず1番に、伸縮性のある素材の衣類を選ぶという事です。
着脱に支援が必要な方の中には、麻痺や関節拘縮のために自分で腕や足を曲げ伸ばしする事が難しい方もいます。
その際、支援者が腕や足を衣服に通しますが、伸縮性のない素材でできた衣類だと手足を通す事が困難です。
これは介護士でもひと苦労です。
無理に拘縮している腕や足を伸ばそうとすれば、骨折などの怪我にもつながりかねません。
自力での着脱が困難な方の衣類は、首元や袖などが伸縮性のある素材でできている物を選ぶと、脱ぎ着の支援が比較的楽に行う事ができます。
また、介護サービスを利用する際に事業所から衣類の持ち込みを依頼される事もあります。
その際も伸縮性のある素材の物が歓迎されるので自宅で使っていたものをそのまま持ち込む事ができ、買い直す必要がないためお金の節約にもなります。
介護サービス事業所では汚れた衣類を洗濯する場合もあります。
持参する衣類は「ポリエステル」や「ナイロン」の生地であれば繰り返しの洗濯にも強く、比較的伸縮性もあるためお勧めの素材であると言えるでしょう。
前開きの衣類を選ぼう
麻痺や関節拘縮を生じている人の中には身体機能の低下が著しく、寝たきり状態の方もいらっしゃいます。
そのような方の場合、頭からかぶって首を通す事は非常に難しいため支援を行う事が困難となってしまいます。
それを解消するために役立つのが、前開きタイプの衣類です。
前開き衣類であれば寝たままであったとしても、体の位置を変えて袖を通す事ができれば着脱の支援を行う事が可能となり、清潔な状態で過ごす事ができます。
前開きと一言で言ってもボタンやファスナーなど、さまざまな物が使われています。
ボタンタイプ
ボタンタイプの衣類を選ぶのであれば、ボタンは大きめの物であれば手でつかみやすくなるため、介護が必要な高齢者が自分ひとりで着替えを行える可能性が広がります。
ファスナータイプ
ファスナータイプの衣類を準備しても良いですが、認知症状がある方の場合はファスナーの開け閉めの仕方が分からなくなってしまっている場合もあります。
マジックテープタイプ/面ファスナー

ボタンの開け閉めが難しい場合は、ボタン部分をマジックテープで代用して前側を閉める事ができる衣類も販売しています。
マジックテープタイプの衣類を活用すれば、指に力が入らなかったりボタンを留める事が難しい方だったとしても、自力で着替えられる可能性も出てきます。
また、家族などが介助する場合にも安易に開け閉めができるため、着脱支援の負担を減らす事もできます。
しかし、介護用品ショップでは肌着は1枚2,000円程、パジャマは上下で7,000~8,000円程度で販売しているため、安価な物ではありません。
既に自宅にボタンでの開け閉めが可能なパジャマなどがある場合は、それを外してマジックテープに付け替える事で代用することで、マジックテープ代の数百円で介護用パジャマに大変身させることができます。
介護施設でもこの方法が活用されています。
この時、ボタンホールのあるほうにマジックテープのふわふわした面(メス)を取り付けましょう。
まずは身近にあるもので代用可能か考えよう
入居型の施設などでは、身の回りの物の購入をご家族に依頼する事が少なくありません。
衣類を購入するよう依頼された際に、どのような物を購入したら良いか分からず、施設のスタッフが求めている物と違ってしまい、買い直す羽目になってしまう事もあります。
介護用品ショップで販売している衣類は、種類にもよりますが1枚当たり5,000円以上するものが多く、一般のお店で販売している金額より高めに設定されている事が多いので、買い間違いは避けたいところです。
介護用品はこれを買わないとだめというものではありません。
まずは身近にあるもので代用できるか、介護用品のカタログなどを参考にして家に使える物はないか考えてみましょう。(執筆者:現役老人ホーム施設長 佐々木 政子)