国民年金から支給される年金の1つに「振替加算」という制度があるのをご存じでしょうか。
この制度は将来的には対象者がいなくなってしまうのですが、当分の間は続く制度です。今いち度確認していきましょう。
目次
「振替加算」とは
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国民年金法は昭和36年4月1日に施行され、昭和61年4月1日から大幅な変革を遂げました。
従って、昭和61年3月31日までを旧法、昭和61年4月1日以降は新法と呼ばれています。
新法施行後は、専業主婦のような厚生年金の被保険者である夫の妻は「第3号被保険者」として国民年金に強制加入となりました。
しかし、旧法当時には専業主婦の国民年金への加入は強制ではなく、任意加入扱いでした。
これによって未加入であった方々が「老齢基礎年金」を受給できるようになっても、満額の「老齢基礎年金」には程遠い額しか受け取れない場合もあり得るのです。
そこで、生年月日が次の期間内の方に関して支給額を増額するための制度として「振替加算」が設けられています。
「振替加算」の対象生年月日
上記の生年月日の意味は、昭和61年4月1日において20歳未満(昭和41年4月2日以後生まれ)には支給しないということです。
昭和41年4月1日以前生まれの場合は新法以後、全期間(20歳~60歳までの40年間)保険料を納めても満額の「老齢基礎年金」を受給できない可能性があるからです。
また、昭和41年4月2日以後生まれの場合には新法当時に20歳未満であることから、強制加入となった新法施行後に20歳~60歳までの40年間保険料を納めることが可能なのです。
ゆえに満額の「老齢基礎年金」を受給でき得ることから、昭和41年4月1日を「振替加算」として受給可能な生年月日の最終日としているのです。
なお、大正15年4月1日以前生まれの方は新法の「老齢基礎年金」の対象ではなく、旧法の対象となることから「振替加算」の始期となる生年月日は大正15年4月2日となっています。
「振替加算」支給額
「振替加算」の支給額は、
です。
「振替加算」の要件
・ 65歳に達した日において、以下の (1) または (2) のいずれかに該当しているあなたの配偶者によって生計を維持していたこと
・ 65歳に達した日の前日において、あなたが配偶者が受給権を持つ次の (1) または (2) に該当する年金の「加給年金額」の計算の基礎になっていたこと
(2) 障害厚生年金の受給権者(1級または2級であり、同一の支給事由による障害基礎年金の受給権を有する場合に限る)
「振替加算」が支給されるタイミング
妻が65歳になると自身の「老齢基礎年金」を受給できるようになります。
その時点で夫の「老齢厚生年金」に上乗せされていた「加給年金」が打ち切られます。そこで、妻に「振替加算」が支給されるという流れです。
反対に、妻が夫の年齢より上の場合にはどのように支給されるのでしょうか。
妻が65歳に達した後に夫の「老齢厚生年金」の受給権が発生するという場合です。
この場合には、夫の「老齢厚生年金」の受給権が発生した時に妻の「老齢基礎年金」に「振替加算」が支給されるという流れです。
なお、いずれも妻が「振替加算」の要件を満たしていることが前提です。
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「振替加算」の停止、「振替加算」が行われない場合
・「振替加算」の対象者が「障害基礎年金」や「障害厚生年金」を受けられるときにはその間、支給を停止します(「遺族基礎年金」を受けることができても「振替加算」は停止されません)。
・「振替加算」の対象者が240月以上の被保険者期間を有する老齢に関する年金を受けられる場合、「振替加算」は行われません。
繰り上げ・繰り下げと「振替加算」の関係
年金を65歳よりも早く受給することを繰り上げと呼び、65歳よりも遅く受給することを繰り下げと呼びます。
繰り上げまたは繰り下げを選択した場合に「振替加算」との関係はどのように決められているのでしょうか。
結論としては、繰り上げ・繰り下げた場合の減額および増額はありません。
支給の開始については、繰り上げた場合でも65歳から支給開始となり、繰り下げた場合には繰り下げにより受給を開始した時からの受給です。
どのように支給されるのか
「振替加算」の額と「老齢基礎年金」の額を合算した額が「老齢基礎年金」として支給されます。
従って、場合によっては
ことがあります。
届け出方法
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「老齢基礎年金」の受給権者が65歳に達した日(誕生日の前日)において「振替加算」の要件に該当した場合には、「老齢基礎年金」の裁定請求を行った後、速やかに年金機構に届け出(受給権者・受給権者の配偶者の氏名、生年月日等を記載した届)をすることが必要です。
万が一不明な場合には、年金事務所や専門家に問い合わせることで早期に解決できると考えられます。
対象者は知っておくべき制度
「振替加算」の対象者は年々減少していきます。しかし、固定的な収入が少なくなる老後においては対象者であれば知っておくべき制度です。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)