仮想通貨ブームは終了したかに思われていましたが、2020年末頃から価格が高騰し、前年同月比で数倍価格が上がった銘柄もあります。
購入時より高値で売却できれば差額が利益となりますが、売却益は所得税の対象ですので、確定申告によって税金を納めなければなりません。
また、仮想通貨取引による売却益は、株式の売却益よりも高額な税率が課されるケースもありますので、本記事では仮想通貨の利益が発生した際の注意点を解説します。

目次
仮想通貨取引は利益が出るほど税率が高くなる
仮想通貨(暗号資産)の売却によって得た利益は、総合課税の「雑所得」に該当します。
総合課税は
が課されます。
一方で上場株式を売却益は分離課税の譲渡所得の対象であり、こちらは売却益の大小に関係なく税率は一律15.315%(※)です。
最高税率が課される利益が発生したとすると、仮想通貨は株式の3倍も所得税を納めなければなりません。
また、上記の税率は、税務署の確定申告で納める国税(所得税)の金額ですので、確定申告書を提出した後、市区町村に住民税を支払うことになります。
※所得税および復興特別所得税を合計した税率です。
税務署は仮想通貨取引所を簡単に調査できる
「バレなければ申告しなくても大丈夫」と考えられている人もいらっしゃいますが、リスクが高いのでやめましょう。
仮想通貨の取引は仮想通貨取引所を通じて売買を行いますが、税務署職員は税務調査に必要だと判断すれば、仮想通貨取引所や金融機関の口座を調べることが可能です。
仮想通貨の売買取引履歴を確認すれば損益の状況は把握できるため、無申告の納税者がいれば税務署は指摘します。
税務調査により申告書を提出した場合には、本税以外に加算税・延滞税の罰金を支払うことになります。
加算税・延滞税は追加で納める本税額に応じて税額は増えるため、申告漏れの金額が多いと罰金の金額も上がりますのでご注意ください。
高額な利益が出ていると刑事告発される可能性がある
刑事告発されるのは悪質な脱税をした人に限られ、通常の税務調査で申告漏れが指摘されても逮捕されることは考えにくいと言えます。
しかし、2021年1月には、金沢国税局が仮想通貨取引の利益を隠していた人を刑事告発したとの報道がありました。
つまり、仮想通貨取引の高額な利益を申告していないでいると、税務調査だけではなく逮捕される危険性もあることを示しています。
仮想通貨の税務調査はやりやすい
仮想通貨取引はインターネット上でやり取りする関係上、取引情報が残るため、調査担当者からすると申告漏れの証拠を掴みやすいものです。
仮想通貨と株式の売却益の申告漏れがあった場合には、同じ利益金額でも税率の高い仮想通貨のほうが税務調査によって回収できる税金は多いため、仮想通貨の申告漏れのほうが調査の優先度が高くなるということも考えられます。
また、仮想通貨取引をしている人は、株式の売買をしている人に比べて税知識の少ない人が多いため、税務署が仮想通貨の申告漏れを税務調査の重点課題として取り組んだとしても不思議ではありません。
もちろん仮想通貨取引で利益が発生しても適切に申告すれば何も問題ありませんので、利益の出た人は期限までに申告手続きをしてください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)