現代日本は高齢化していて、それに伴い日常生活に介護が必要となる方も急増しています。
介護が必要になる原因にはいろいろとありますが、病気によっては入院が必要となることもあります。
突然の病気の発症や入院によって、その後の生活や介護について不安を感じる方は非常に多いようですが、そのような時に活用を検討してほしいのが病院に配置されている「医療ソーシャルワーカー」です。
今回は、医療ソーシャルワーカーの役割と、それを活用するメリットについて紹介します。
目次
医療ソーシャルワーカーとは
保健医療機関において、社会福祉の立場から患者さんやその家族の方々の抱える経済的・心理的・社会的問題の解決、調整を援助し、社会復帰の促進を図る業務を行います。日本医療ソーシャルワーカー協会
総合病院など入院設備を持っている病院などを中心に配置され、その多くは社会福祉士や精神保健福祉士などの国家資格を取得している相談援助の専門家です。
医療ソーシャルワーカーには患者の利益を守るための「守秘義務」があり、相談した内容は患者やその家族の方の同意なしには他者に話されることがないため、安心して相談できる存在だと言えます。
医療ソーシャルワーカーを活用するメリット
次に、医療ソーシャルワーカーを活用するメリットについて紹介します。
メリット1. 医療費支払いについて相談できる
日本では全ての国民が健康保険に加入でき、医療費の負担は諸外国と比較しても低い割合で抑えられます。
しかし、医療費が無料になるわけではないため、経済的に困窮している家庭にとってはその支払いが大きな負担です。
また、医療費の支払いが困難なために入院や通院、服薬等の医療行為を十分に受けられずに命を落とす結果になってしまうことも考えられます。
そのような時に、医療ソーシャルワーカーに
・ 医療費の負担を軽減する制度を活用できる場合には、その活用方法などの説明や手続きの支援
などの相談にのってもらうことができます。
相談は基本的に無料であるため、医療費支払いに不安を感じる場合には積極的に活用したい存在です。
医療費支払いの相談にのってもらえることは、医療ソーシャルワーカーを活用するメリットであると言えます。
メリット2. 退院後の生活について相談できる
入院によって身体状態が低下し、治療をしても元の状態に戻らないということは高齢者には珍しいことではありません。
心身の機能が低下した結果、退院後に介護が必要になる可能性もあり、それらの対応を家族だけで考えることに不安を感じる方は少なくないことでしょう。
また、近年では急性期病院と呼ばれる総合病院等では病気の治療が終わった方の長期入院はさせずに、なるべく早期に退院させる傾向にあります。
そのため、退院後の行き先を考える時間は十分とは言えず、家族のほうが混乱してしまうケースも見られます。
そのような時に活用を考えてほしい存在として、医療ソーシャルワーカーが挙げられるのです。
医療ソーシャルワーカーに退院後の生活について相談すると、その希望に応じて的確なアドバイスを得られます。
退院後は自宅で介護サービスを受けたい
たとえば、退院後は自宅に戻って介護サービスを使いたいという希望があればケアマネジャーをはじめとした専門職に情報を提供したり、それまで介護サービスを利用したことがない方にはケアマネジャーを紹介するなどの橋渡しをしてくれます。
退院後には施設に入居したい
退院後には自宅に戻らずに施設等の入居を考えている場合には、患者本人や家族の方の希望に沿った施設の情報提供や必要書類の作成をしてくれるなど、患者自身や家族の方がすることが難しいことを担当してくれます。
患者自身が退院していない状況で退院後の生活を考えるということを患者自身と家族の方だけでするには負担が大きく、家族の方が疲弊してしまう場合もみられるため、医療ソーシャルワーカーの存在は大きな助けになるのです。
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入院中、退院後の困りごとは医療ソーシャルワーカーに相談
病気の発症に伴って家族に突然介護が必要となった場合に、冷静に物事を進めていくことは難しいのもです。
医療ソーシャルワーカーはさまざまな家族の困りごとの相談、解決のお手伝いをしている経験ある専門家です。
入院中、退院後に困りごとがあった際には一度相談をしてみると良いことでしょう。
自分たちだけでは考えても見えなかった方法などが分かり、少しずつでも前に進めます。(執筆者:現役老人ホーム施設長 佐々木 政子)