現代日本では世界に類を見ないペースで少子高齢化が進行しています。それに伴い、認知症を発症している方も年々増加しています。
認知症の症状の1つに「徘徊」と呼ばれる症状があります。
徘徊とは何らかのきっかけで自宅などから外に出てしまい、元の場所に戻ろうとしても戻れずにさまよってしまう状態のことを言います。
「徘徊」を発症した場合、家族も気が付かないうちに遠くに行ってしまうことがあり、近隣住民や警察などに依頼して捜索の必要が出てくる場合もあります。
徘徊での行方不明を防ぐための1つの方法として、GPS端末による位置情報把握が挙げられますが、自治体によってはGPS端末の貸し出し支援事業を行っていることがあります。
今回は、自治体のGPS端末貸出事業にスポットをあてて紹介します。
目次
「GPS端末貸出事業」とは
「GPS端末貸出事業」とは、徘徊症状などが原因で行方不明になる可能性が高い方に対して、早期発見と安全を確保することを目的に、GPS端末を貸与する事業のことを言います。
GPS端末を高齢者自身に持ち歩いてもらうことで位置情報を検索できるため、行方不明になったり、無断外出をされた高齢者の早期発見につなげることができます。
GPS端末貸出事業は市町村などの自治体が実施主体となっているため、各市町村で利用対象が異なったり、事業自体を実施していない場合もあるということを覚えておきましょう。
無料または低額での利用が可能
先に述べた通り、GPS端末貸出事業は市町村等の自治体独自の取り組みであるため、利用料金には若干の違いがありますが、GPS端末貸出事業の利用料金は無料または月額1,000円程度に設定されている自治体が多く見られます。
一般の企業においても同様の事業を行っているところは増えてきていますが、
・ GPS端末を購入する場合には数万円単位
のお金がかかってしまいます。
また、介護保険サービスの1つである「福祉用具貸与サービス」を活用することでGPS端末を借りることはできますが、当然のことながら介護認定を受けている方でなければそのサービスを利用できません。
各自治体で行っているGPS端末貸出事業は、要介護認定の有無にかかわらず借りられることもあるため、対象者の範囲が幅広いのがメリットです。
また、無料または低額での利用が可能であるということは、自治体が主体となっているGPS端末貸出事業を活用する大きなメリットです。
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支援機関とのつながりを持てる
GPS端末貸出事業の活用にあたっては、その実施主体である自治体への申し込みが必要です。
申し込みについては、
・ 地域包括支援センターなどが窓口となり利用希望者に代わって申し込みを受け付ける
など、自治体によってさまざまな方法がとられています。
徘徊等の症状を発症している高齢者の方の支援は家族だけで担うのが困難です。さまざまな支援機関とのつながりを持つことで、家族の方の介護負担の軽減も図れます。
しかし、そのような支援機関がどこにあるのか、どのように相談したらよいかが分からないという方は少なくありません。
受付窓口となる支援機関で働く専門職は、介護に悩む家族等の支援者を助ける関係機関とのつながりを持っています。
従って、希望すれば、GPS端末貸出事業の利用希望者にその関係機関の情報を提供してもらったり、紹介してもらうことも可能です。
地域の介護資源にも積極的に目を向ける
認知症による徘徊等が原因の行方不明者は増加の一途をたどっています。
高齢化は今後まだまだ進行し、高齢者のみの世帯や独居生活の方が増えていく中で行方不明者の数も増加していくと考えられます。
離れて暮らす家族だけではそれを防止するのは困難だと言えます。「誰にも相談できないから」と、ひとりで悩まないでください。
GPS端末貸出事業の他にも、地域に密着した制度を活用することで、離れて生活する親などを守ることにつながります。
地域の介護資源にも積極的に目を向けてさまざまなサービスを利用してみてください。(執筆者:現役老人ホーム施設長 佐々木 政子)