会社員や公務員の方ができる税金対策はたくさんあり、実行すれば節税効果は期待できます。
ただし、世間で知られている節税術を実行しても、それほど税金が安くならなかったり、コスパが悪いケースは意外と多いものです。
極端なケースですが、節税術を講じることで損することもあるのでご注意ください。

目次
所得控除と税額控除は別物
所得税の節税術の多くは、「所得控除」と「税額控除」を使った節税です。
「所得控除」
代表的なものには、社会保険料控除や扶養控除、医療費控除などがあります。
<所得控除の種類>
・ 雑損控除
・ 医療費控除
・ 社会保険料控除
・ 小規模企業共済等掛金控除
・ 生命保険料控除
・ 地震保険料控除
・ 寄附金控除
・ 障害者控除
・ 寡婦控除
・ ひとり親控除
・ 勤労学生控除
・ 配偶者控除
・ 配偶者特別控除
・ 扶養控除
・ 基礎控除
「税額控除」
所得税額から直接控除するため、税額控除の金額が全額控除(※)できるのが特徴です。
※算出された所得税額が上限
<税額控除の主な種類>
・ 住宅ローン控除
・ 配当控除
・ 外国税額控除
節税効果が高いのは圧倒的に「税額控除」
「所得控除」と「税額控除」を比較すると、
と言えます。
所得税は最低税率5%から最高税率45%と、課税所得金額が多くなるほど税率が上がる仕組みです。
「所得控除」は所得税の計算前の所得からから控除するため、どんなに所得の多い人であっても「所得控除」の45%しか所得税は控除されません。
それに対して「税額控除」は、算出された所得税よりも「税額控除」が多い場合を除き、「税額控除」の金額が100%所得税から控除されます。
所得税の税率10%の方であれば、配偶者控除38万円を適用すると3万8,000円の節税効果を得られます。
一方で住宅ローン控除5万円を適用できる場合、控除額は配偶者控除よりも小さいのですが、住宅ローン控除は所得税から直接5万円を差し引けるため配偶者控除よりも節税効果は高いのです。

所得税の還付手続きはコスパを踏まえて検討する
「所得控除」は「税額控除」よりも節税効果は低いのですが、何もしないで控除を受けられるのであれば適用するメリットは十分にあります。
ただし、医療費控除など確定申告が必要な控除については、適用するために確定申告手続きをしなければなりません。
確定申告はe-Taxを利用して自宅から申告書を提出できる一方、税務署に相談しながら申告書を作成する場合には税務署に行くための交通費が発生します。
医療費控除で還付される金額が1,000円なのに、交通費が1,000円以上かかるのであれば収支は赤字です。
また、コスパを考えるのであれば、確定申告書を作成する時間も考慮し、還付金額が少額であるのであればあえて申告しないという選択もアリです。
節税すべきか否かは所得金額や収入状況によって異なる
「所得控除」は、税率を乗じる前の所得から差し引くため、所得金額に応じて節税できる金額は変わります。
また、「税額控除」で差し引かれる金額は、算出された所得税が上限です。
住宅ローン控除など住民税から控除できる制度もありますが、それでも満額控除できないこともあります。
実際にどの程度節税できるかは個々の収入や所得状況によって違いますので、節税方法を用いる際には最初にご自身の所得状況をご確認ください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)