相続税は亡くなった人の財産に対して課される税金なので、相続財産が多い人ほど対策する必要があります。
一方で、相続財産が一定金額以内に収まっている方が相続税対策を行うメリットはあまりないですし、対策するための費用だけ支出が増えてしまうと、トータルで損をしてしまうこともあるのでご注意ください。
目次
相続税対策は相続財産の総額で判断する
相続税対策の実施の有無は、相続人ごとではなく、亡くなった人が保有する財産の大小で判断しなければなりません。
相続税は、亡くなった人が保有していた財産に対する税額を算出し、相続税の総額を取得した財産の割合に応じて、各相続人は相続税を納めます。
たとえば相続税の総額が100万円の場合、相続財産の60%を取得した相続人は60万円を納めることになります。
全体の相続財産が少なければ相続税の税率は低いですが、相続財産の総額が多ければ取得財産が少ない相続人に対しても、高い税率が課されますので要注意です。
基礎控除額以内の相続財産なら対策は不要
亡くなった人の財産が相続税の基礎控除額を超える場合、相続税対策を講じることを検討してください。
相続税の基礎控除額の算式
相続税の基礎控除額は、相続人の人数によって金額が変動するのが特徴で、相続人が配偶者と子3人の計4名であれば、基礎控除額は5,400万円です。
相続財産が基礎控除額以内に収まる場合、相続人がどのように相続財産を取得したとしても相続税は無税なので、基本的に相続税対策を講じる必要はありません。
相続税対策は費用がかからない手段から活用すること
多額の相続税が発生しない場合、費用がかからない方法を用いて対策してください。
相続税は相続財産の種類や用途によって、適用できる特例や節税方法が変わってきます。
相続財産が億単位の方であれば、相続財産の預金を不動産に変更するなど、大掛かりな節税対策を講じるメリットが十分あります。
ただ不動産を購入するとなると、仲介手数料や登記費用などのコストが発生しますので、支出に見合う節税効果があるか判断しなければなりません。
費用をかけないで節税する方法の1つに、「生前贈与」があります。
相続開始時点の相続財産が少なければ相続税額も減少するため、生前贈与で財産を相続人に移動させることで、相続税の課税対象財産を減らすことができます。
贈与税は贈与財産110万円までは非課税ですので、毎年少しずつ贈与すれば、費用をかけずに相続税を節税することが可能です。
相続税は相続開始時点の法律で税金の計算を行う
相続税や贈与税の税制改正は毎年行われており、現在ある特例制度が廃止されたり、適用要件が厳しく(緩和)されることも考えられます。
相続税の基礎控除額の計算式も、将来的に変更する可能性もありますので、相続が発生しましたら、その時点で活用できる制度を確認して対策を講じてください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)