
夏は旅行や帰省、レジャーと出費が重なり、急に現金が必要になることもあります。そんなとき頼りになるのが、クレジットカードのキャッシング枠です。ただし、買い物とは違う借入で、金利や利用上限があります。使う前に知っておきたい仕組みと注意点を整理します。
キャッシング枠とショッピング枠の違い
まず知っておきたいのが、1枚のカードには性格の違う2つの枠があるという点です。ひとつは買い物の代金を後払いにできる「ショッピング枠」、もうひとつが現金を借りられる「キャッシング枠」です。
同じカードでも、この2つは法律上の扱いが分かれています。ショッピングは、利用する方の代わりにカード会社が店にお金を立て替える仕組みで、リボ払いや分割払いには「割賦販売法」という法律が適用されます。一方のキャッシングは、カード会社が現金を貸す取引で、カード会社は「貸金業者」として貸金業法にもとづき貸付を行います(金融庁「貸金業法Q&A」)。買い物の後払いと現金の借入では、そもそも成り立ちが違うわけです。
気をつけたいのが、この2つの枠の関係です。カードによっては、キャッシングで借りた分だけ、その月にショッピングで使える額が減ることがあります。「買い物用の枠が思ったより残っていない」とならないよう、キャッシングを使ったら残りの利用可能額も確かめておくと安心です。
キャッシングとカードローンの違い
現金を借りるという点では、キャッシングは「カードローン」とよく似ています。ただ、いくつかの違いがあります。
カードのキャッシングは、買い物にも使う1枚のクレジットカードに借入機能がついたものです。手元のカードでそのまま現金を引き出せる手軽さがある一方、借りられる額は比較的小さめに設定されることが多いといえます。
これに対してカードローンは、借入に特化した専用のサービスです。買い物には使えませんが、その分まとまった額を借りやすく、返済期間や毎月の返し方を選びやすい傾向があります。急な少額の立て替えなら手持ちカードのキャッシング、ある程度まとまった資金を計画的に借りたいならカードローンと、場面で使い分けるとよいでしょう。
金利と借りられる上限
いちばん気になるのが、借りたときにかかる利息です。ここは法律で上限が決まっているので、目安を知っておくと判断しやすくなります。
お金を貸すときの金利は「利息制限法」で上限が定められています。借りる元本の額に応じて区分があり、元本10万円未満は年20%、10万円以上100万円未満は年18%、100万円以上は年15%が上限です(e-Gov法令検索「利息制限法」、日本貸金業協会「上限金利について」)。実際に適用される実質年率は、この範囲内で各カード会社が定めています。
もうひとつ知っておきたいのが、借りられる総額の上限です。キャッシングは貸金業法の対象で、「総量規制」というルールが働きます。貸金業者からの借入残高が年収の3分の1を超える場合、新たな借入はできません(金融庁「貸金業法のキホン」)。複数の貸金業者からの借入は合算して数えられます。なお、買い物に使うショッピングはこの総量規制の対象外です。
借り方と返し方
仕組みが分かったら、実際の使い方も見ておきましょう。あらかじめカードにキャッシング枠がついていれば、対応するATMやカード会社のアプリから現金を引き出せます。海外のATMで現地通貨を引き出せるカードも多く、旅行や出張のときに役立つことがあります。
新しくキャッシング枠をつける場合や、大きな枠を希望する場合は審査があります。ある貸金業者から50万円を超えて借りるときや、他の貸金業者から借りている分も合わせて100万円を超えて借りるときは、年収を証明する書類の提出が必要です。
返し方は、大きく「一括払い」と「リボ払い」に分かれます。翌月などにまとめて返す一括払いに対し、リボ払いは毎月ほぼ一定の額を返していく方法です。利息は借りた日数に応じてかかるため、無理のない範囲で早めに返すほど、支払う利息は少なくてすみます。
使う前に押さえたい注意点
手軽なだけに、使う前に知っておきたい落とし穴もあります。
まず、キャッシングは買い物と違い、多くの場合ポイント還元の対象になりません。「カードで払えばポイントがつく」という感覚のまま使うと、思っていた得は得られないことになります。
次に、借りたという事実は信用情報に記録されます。返済が遅れると、その記録がほかのローンやカードの審査に影響することがあります。借りること自体に問題はありませんが、返す見通しを立ててから使うのが基本です。
そして、手元のカードで簡単に引き出せるからこそ、つい借りすぎてしまいがちです。総量規制という上限はあっても、その範囲内で無理なく返せるかは自分で見極める必要があります。「いくらまでなら来月きちんと返せるか」を先に決めておくと、使いすぎを防げます。
急な入り用に備えて仕組みだけ知っておく
クレジットカードのキャッシングは、急にお金が必要になったとき、手元の1枚でその場をしのげる心強い機能です。買い物の後払いとは別の借入であること、金利には法律で上限があること、貸金業者からの個人の借入には原則として年収の3分の1という上限があることを知っておけば、落ち着いて向き合えます。大切なのは、借りる前に返し方まで思い描いておくことです。自分のカードに枠がついているか一度確かめ、迷ったらカード会社のサイトで金利や利用可能額を確認してから使いましょう。


