
大学受験の天王山ともいわれる夏。志望校が現実味を帯びるほど、親の不安は入学後の学費へ向かいます。病気や失業で家計が急変しても、奨学金だけでなく、授業料の減免や大学の猶予制度、教育ローンなど頼れる仕組みがあります。いざというときに慌てないよう、負担の軽い順に使える制度と相談先を整理します。
滞納を放置したときに待つもの
学費の未納をそのままにすると、まず大学から通知や督促が届きます。ここで動かずに期限を過ぎると、退学、さらには除籍という段階へ進んでいきます。退学は後から復学の道が残ることもありますが、除籍は在籍そのものが取り消されるため、在学証明書などの発行が難しくなる場合があります。
見落としやすいのが、その先の進路への影響です。卒業できなければ、募集で「大卒以上」を条件とする就職の入り口でつまずくこともあり、響く範囲は目の前の学費だけにとどまりません。だからこそ、放置ではなく早めに動くことが何より大切になります。
最初の相談先は、通っている大学
打てる手は一つではありません。家計への負担が軽い順に、大学への相談、授業料の減免、奨学金、そして教育ローンという段階があり、この順にたどるのが基本の道筋です。なかでも真っ先に動きたいのが、通っている大学への相談です。
多くの大学には、納付を待ってもらう徴収猶予や、数回に分けて納める分納、納期を先延ばしにする延納といった仕組みがあります。窓口は学生課や会計課で、事情を伝えれば納め方を一緒に考えてくれることも少なくありません。黙って滞納するよりも、期限が来る前に相談したほうが、選べる手は確実に増えます。
令和7年度から広がった授業料の減免
経済的に苦しい世帯を支えるのが、国の高等教育の修学支援新制度です。これは授業料や入学金の減免と、返さなくてよい給付型奨学金をセットにした仕組みで、住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯が対象とされています。
ここで押さえておきたいのが、対象の広がりです。令和7年4月からは、学生本人を含めて扶養する子どもが3人以上の多子世帯について、所得制限なく(資産要件はあり)、国が定める一定額まで授業料や入学金の減免を受けられるようになりました(文部科学省)。自分の家庭が当てはまるかどうか、大学の窓口や文部科学省のサイトで早めに確かめておくと安心です。
在学中でも間に合う奨学金
進学前に申し込みそびれても、奨学金は在学採用として在学中に申請できます。日本学生支援機構(JASSO)には、返さなくてよい給付型のほか、無利子の第一種と有利子の第二種があり、家計の状況に応じて選べます。
気になるのが、急に家計が変わったときの備えです。生計維持者の死亡、失職、傷病により3か月以上就労困難、災害などで家計が急変した場合には、家計急変として年間を通じて随時申し込める枠も用意されています(JASSO)。まずは在籍する大学の窓口で、いま出せる採用の種類とスケジュールを確認しておきましょう。
教育ローンとカードローンの分かれ道
奨学金でも足りないときの次の一手が、教育ローンです。日本政策金融公庫の教育一般貸付(国の教育ローン)は固定金利で、融資の限度額は学生1人につき原則350万円、一定の要件に該当する場合は450万円までとされています(日本政策金融公庫)。JASSOの奨学金と併用でき、奨学金が振り込まれるまでのつなぎとしても使えます。
ここで避けたいのが、手軽さだけでカードローンに飛びつくことです。即日で借りられても金利は高く、返済が長引けば家計への負担は教育ローンより重くなりがちです。まずは負担の軽い順に、大学への相談、減免、奨学金、教育ローンとたどっていくのが安全な進め方です。
頼る前に確かめておきたいこと
身近な人に頼る方法もあります。祖父母や親などの扶養義務者から、生活費や教育費として必要な都度、直接これらに充てるために受け取ったお金で、通常必要と認められるものには、贈与税がかかりません(国税庁)。ただし受け取ったお金を貯蓄や投資に回すと課税の対象になるため、あくまで学費として使い切る前提で頼るのが安全です。
もう一つ注意したいのが、学費を稼ぐために休学を選ぶ場合です。休学中でも在籍料がかかる大学があるため、金額と条件を先に確認しておきましょう。どの手を使うにしても、決める前に大学の窓口へ一言相談しておくと、後戻りの少ない選択ができます。
打てる手は、まだ残っています
学費が払えないという状況は、それだけで気持ちが追い詰められるものです。ですが、いきなり除籍になるわけではなく、督促や猶予の段階の間に打てる手はいくつも残っています。まずは通っている大学に相談し、次に授業料の減免や奨学金、それでも足りなければ教育ローンと、負担の軽い順にたどるのが基本です。夏休みは、窓口が開いているうちに条件を落ち着いて確かめられる時間でもあります。一人で抱え込まず、大学の窓口に声をかけるところから始めてみてください。


