
お盆の帰省ドライブで、実家の駐車場の柱にバンパーをこすってしまった。車両保険に入っていても、契約時に設定した「免責金額」は原則として自己負担です。修理費が免責金額以下なら保険金は受け取れず、保険を使えば翌年以降の等級や保険料にも影響します。自己負担はいくらになるのか、免責ゼロ特約が使える条件とあわせて整理します。
自動車保険の「免責金額」は、損害額から差し引く自己負担額
車両保険は、被保険自動車が偶然な事故によって損害を受けた場合に保険金を支払う保険です。先に押さえたいのが、故障は対象外だという点です。日本損害保険協会の相談ガイドでも、保険金が支払われない主な場合のひとつに「故障損害」が挙げられています。
免責金額とは、車両保険の修理代のうち自己負担する金額です。
免責金額は契約時に設定します。保険金を請求したときは、免責金額を差し引いた額が保険金として支払われます。修理費用が免責金額以下の場合は保険金を受け取れず、全額が自己負担です。
約款で保険金が支払われない損害もあります。地震・噴火・津波による損害や、被保険者の無免許運転・酒酔い運転、麻薬やシンナーなどを使用した運転によって生じた損害が代表例で、免責金額をいくらに設定していても支払われません。
免責金額の決め方は「増額方式」と「定額方式」
設定のしかたには「増額方式」と「定額方式」の2種類があります。増額方式は、1回目の事故よりも2回目以降の免責金額が高くなる設定です。1回目5万円・2回目以降10万円なら保険証券には「5-10万円」、1回目0円・2回目以降10万円なら「0-10万円」と表記されます。定額方式は回数に関係なく毎回一定額とする方式で、10万円なら「10-10万円」と表記されます。
免責金額が高いほど保険会社が支払う保険金は少なくなるため、ほかの条件が同じでも保険料は安くなります。その代わり、事故のときの持ち出しは増えます。保険会社によっては0円も選べますが、その分保険料は高くなります。万が一の際に無理なく払える範囲に収めるのが安全です。
見落としやすいのが、等級への影響です。免責金額を低めにすると小さな傷でも車両保険を使いやすくなりますが、使えば等級が下がるだけでは終わりません。損害保険料率算出機構が「事故があった翌年以降に割増引率の低い『事故有係数』が適用される期間」と定義する事故有係数適用期間も走ります。ノンフリート等級別料率制度では1事故につき3等級下がるのが原則で、適用期間は1事故あたりの等級ダウン数に合わせて決まります。

適用期間は1年間経過するごとに1を減じ、0になれば無事故係数に戻ります。事故有係数の適用中に再度事故があれば積算され、その上限は「直近の事故から6年間」です。浮いた保険料だけでなく、3等級ダウン事故なら使ったあとの3年分まで含めて見ておきたいところです。
損害保険料率算出機構の資料では、車両保険のみ、または車両保険と無保険車傷害保険・搭乗者傷害保険の所定の組み合わせだけから保険金が支払われる事故のうち、1等級ダウン事故にあたる原因は、火災または爆発、盗難、騒じょうまたは労働争議にともなう暴力行為または破壊行為、台風、たつ巻、こう水、高潮、落書または窓ガラス破損、いたずら、飛来中または落下中の他物との衝突に限られます。火災・爆発と窓ガラス破損は、飛来中もしくは落下中の物以外の他物との衝突もしくは接触または転覆もしくは墜落によって生じたものを除きます。いたずらは、被保険自動車の運行によるものと他の自動車との衝突・接触によるものを除きます。ぶつけた、こすったという事故はこの列挙にないため、原則どおり3等級下がるかどうかは約款で確認してください。
ノーカウント事故について日本損害保険協会は「ケガにより人身傷害保険の保険金を受け取ったとしても、事故がなかったものとして1等級アップする場合」があるとしています。取扱いは各社によって異なる場合がある、とも添えています。
一般的な「免責ゼロ特約」が効くのは1回目の事故だけ
「免責ゼロ特約」は免責金額をゼロにできる特約ですが、どんな事故でも自己負担がなくなるわけではありません。一般的に、車両保険で「免ゼロ特約」「車対車免ゼロ特約」などと呼ばれる特約は、自動車同士の衝突や接触事故で、相手の自動車と運転手が確認できた場合、保険期間中1回目の事故にかぎり、本人の自己負担額(免責金額)がゼロになるというものです。一部の保険会社では、車対車以外の事故も対象になるタイプもあります。
一般的な車対車タイプでは、当て逃げのように相手が確認できない事故や、電柱に当てたような単独事故では、特約を付けていても免責金額が差し引かれます。同じ保険期間に2回目の事故を起こしたときも同じです。
免責金額を設定できるのは車両保険だけではない。特約名は会社ごとに違う
免責金額を設定して保険料を抑えられるのは車両保険だけではなく、対物賠償責任保険などにもあります。ほかの特約にも自己負担額はありますが、契約者が金額を決めて保険料を下げる仕組みとは限りません。たとえばソニー損保の「車内身の回り品特約」は「5,000円の免責金額(自己負担額)があります。」と固定で、契約者が金額を選ぶものではありません。
地震・噴火・津波による損害は車両保険では補償されませんが、対応する特約を扱う保険会社では、特約を付けておくと地震・噴火・津波で車が全損したときに一時金を受け取れます。名称は会社ごとに異なり、東京海上日動では「地震・噴火・津波危険車両全損時一時金特約」、チューリッヒでは商品ページ上で「地震等による車両全損一時金特約」、正式名称として「地震・噴火・津波による車両全損時一時金支払特約」と説明されています。単に「車両全損一時金特約」とだけ覚えず、契約先で地震・噴火・津波による車両全損の特約名を確認してください。
中身も、免責金額を設定するタイプではありません。東京海上日動の特約は「記名被保険者に定額で50万円をお支払いするものです。ただし、車両保険の保険金額が50万円未満の場合は、その金額をお支払いします。」と説明されており、免責金額の設定はありません。
免責金額が差し引かれない2つのケース
自己負担なしで保険金が支払われるケースもあります。全損と、相手からの損害賠償金が免責金額を上回る事故です。
全損には「物理的全損」と「経済的全損」の2つがあります。物理的全損とは、修理が不可能なまでの損害を受けた状態を指し、経済的全損とは車の時価額よりも修理費用が高くなる状態を指します。車両保険では、損害額にかかわらず契約した保険金額までしか保険金が支払われません。全損と判断された場合は、原則として免責金額を差し引かず、契約した車両保険金額を限度に保険金が支払われます。ただし、買い替え費用や修理費のすべてが必ず補償されるとは限りません。
もうひとつが、相手にも過失があり、相手からの損害賠償金が免責金額を上回る事故です。相手からの損害賠償金が免責金額に充てられるため、自己負担が出ずに済みます。
ソニー損保は、損害額50万円、過失割合50対50、免責金額10万円の例を示しています。相手からの損害賠償金は25万円で、免責金額10万円を上回るため自己負担はありません。残りの損害については、自身で契約した車両保険から25万円が保険金として支払われ、自己負担なしに車を修理できます。
免責金額は保険料の安さより「払える額」で決める
免責金額は保険料を下げるレバーであり、事故のときに自分の財布から出ていく金額でもあります。増額方式か定額方式かを決め、万が一の際に無理なく払える範囲で金額を置く。この順番なら大きく外しません。免責ゼロ特約が効くのも、相手の車と運転手が確認できる1回目の事故が一般的です。全損や、相手からの損害賠償金が免責金額を上回る事故なら差し引かれません。帰省の前に、保険証券の表記をひと目確かめておきましょう。


