
住民税の納付書が届いたり、固定資産税の納期限を迎えたりするこの時期。「督促状が来てから考えればいい」と後回しにしていませんか。税金は、督促状を発した日から10日を過ぎても納めていなければ、法律上は財産を差し押さえられる状態になります。ただし、一括で払えない場合にも、猶予や分納を相談できる可能性があります。滞納後に進む流れと、差し押さえを避けるために取るべき行動を整理します。
督促状から動き出す滞納処分の流れ
住民税や固定資産税のように自分で納める税金は、納期限を過ぎるとまず督促状が届きます。発送の時期は法律で決まっており、国税では納期限から50日以内、住民税や固定資産税などの地方税では原則として納期限後20日以内です(国税通則法37条2項、地方税法329条1項ほか)。
見落としやすいのが、その後の展開の早さです。督促状を発した日から10日を経過してもなお完納されないと、法律上は財産を差し押さえられる状態になります。実務では催告書などで重ねて納付を促すことが多いものの、催告は法律上必須の手続きではなく、督促状だけで差し押さえの要件は満たされます。
注意したいのが、差し押さえに先立つ財産調査です。これは国税徴収法141条の質問検査権に基づく強制力のある調査で、本人の同意や承諾は必要ありません。質問に答えない、検査を拒むといった行為には、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金という罰則もあります(同法188条)。
給与と年金、差し押さえから守られる範囲
税金の差し押さえを行うのは、裁判所ではなく、国税では徴収職員、地方税では徴税吏員と呼ばれる職員です。借金の返済をめぐる裁判所の強制執行とは別の制度で、「給与などは原則として給付の4分の3(毎月払いの場合は33万円が上限)が差し押さえ禁止」といった民事執行の基準は、税金の滞納処分には当てはまりません。
では給与はどこまで守られるのでしょうか。国税徴収法76条により、源泉徴収される所得税や特別徴収の住民税・森林環境税、社会保険料に相当する額のほか、月10万7,000円(生計を一にする配偶者などの親族1人につき4万8,000円を加算)と、これらを控除した残額の20%相当額(この基礎となる月額の2倍が上限)の合計が差し押さえ禁止です。これを超える部分だけが差し押さえの対象になり、勤務先には「債権差押通知書」が送達されます(同法62条1項)。なお、滞納者本人の承諾があるときは、この差し押さえ禁止は適用されません(同法76条5項)。
年金は種類によって扱いが分かれます。障害年金や遺族年金は「年金を受け取る権利」への差し押さえが禁止されている一方、老齢基礎年金や老齢厚生年金の受給権は、税金の滞納処分に限っては差し押さえの対象になり得ます(国民年金法24条ただし書ほか)。その場合も、給与と同じ差し押さえ禁止額の枠が適用されます(国税徴収法77条)。ただし、口座に振り込まれた後のお金は原則として預金債権として扱われるため、受給権の保護がそのまま及ぶとは限りません。
預金・不動産・動産、差し押さえの実際
預金は、滞納者が銀行に対して持つ預金債権として差し押さえられます。債権は全額を差し押さえるのが法律上の原則で、全額を差し押さえる必要がないと認められるなど所定の要件を満たすときに限り、一部の差し押さえができます(国税徴収法63条)。口座そのものが凍結されて以後の入出金まで一切できなくなる仕組みではありませんが、差し押さえの範囲は個別の事案によるため、残りの預金が必ず使えるとは限りません。カードの利用代金や公共料金の引き落としに影響が出るおそれもあります。
不動産も、差し押さえの登記が入った段階で退去を迫られるわけではありません。滞納者は差し押さえ後も、通常の用法に従ってその家に住み、使用・収益を続けられます(国税徴収法69条)。退去が必要になり得るのは、公売で買受人に所有権が移った後です。
貴金属などの動産は、徴収職員(徴税吏員)が必要に応じて捜索し、差し押さえて占有します。封印などをしたうえで滞納者に保管させる場合もあります(同法60条)。換価は原則として公売で行われ、公売公告は原則として公売の日の少なくとも10日前までに行うと定められています(同法94条・95条)。
令和8年中の延滞税・延滞金の割合
滞納中は本税に加えて、国税なら延滞税、地方税なら延滞金が日割りで加算されます。割合は原則の率(年7.3%・年14.6%)と特例基準割合に基づく率のいずれか低い方が適用され、令和8年中は次のとおりです。

割合の基準は、国税では「延滞税特例基準割合」、地方税では「延滞金特例基準割合」と呼ばれ、令和8年中はいずれも1.8%です。低い割合はこれに1%、高い割合は7.3%を加えた率になります。低率で済む期間が国税は2か月、地方税は1か月と異なる点にも注意しましょう。
差し押さえを防ぐ3つの行動
第一は、気づいた時点ですぐ納めることです。今は納付書に印字された地方税統一QRコード(eL-QR)を読み取り、「地方税お支払サイト」からクレジットカード(別途手数料がかかります)やインターネットバンキング、口座振替(ダイレクト方式)で納付できるほか、スマートフォン決済アプリでも納められます。金融機関の窓口に行く時間がなくても、オンラインで納付手続きを進められます。
第二は、一括で納められないときに放置せず、税務署や自治体の納税窓口に相談することです。納付計画を立てて納税の猶予(地方税では徴収猶予)や換価の猶予が認められれば、分割で納めながら差し押さえや換価を待ってもらえる可能性があり、猶予期間中の延滞税・延滞金の全部または一部が免除される場合もあります。ただし、国税の申請による換価の猶予は納期限から6か月以内に申請書を提出する必要があります(国税徴収法151条の2)。
第三は、借入で立て替えないことです。キャッシングやカードローンで税金を払う方法は、本コラムではおすすめしません。納税の困りごとには猶予や分納という公的な出口が用意されているので、借入に頼る前に、まず窓口で相談するのが基本です。
払えないと分かった時点で窓口へ
税金の滞納処分は、裁判所を通さずに行政の手だけで進むぶん、展開の早い制度です。督促状を発した日から10日を経過すれば、法律上はいつ差し押さえが行われてもおかしくありません。一方で、eL-QRですぐに納められる環境も、猶予や分割の相談窓口も整っています。納付書が届いたら後回しにせず、払えないと分かった時点で窓口へ。それが差し押さえと延滞金の膨らみを防ぐいちばんの近道です。


