
「離婚のときに決めた金額では、もう足りません」。子どもの成長に合わせて出ていくお金は増えるのに、養育費は当時のままという家庭は珍しくありません。一度決めた額でも変更を求めることはできます。ただし通る理由と通らない理由がはっきり分かれます。
進学の費用がかさんで、当時の取り決めが合わなくなった家庭
「制服と教材だけで、ひと月ぶんが消えました」。中学生の子どもを育てる親が、私立高校への進学を考え始めたときの言葉です。離婚したのは子どもが小学校に上がる前で、当時は塾も部活動も想定していなかったといいます。
取り決めは公正証書に残してあり、支払いも滞ってはいませんでした。それでも、進学の費用まで含めると足りない。決めた金額そのものに不満があるわけではないだけに、いまさら言い出してよいものかと迷ったそうです。
離婚のときに、子どもの十数年ぶんの出費を正確に見通すことはできません。あとから合わなくなること自体は、想定されている事態です。
変更を認める根拠は、事情の変更に置かれている
民法880条は、扶養の程度や方法について協議または審判があったあとに事情の変更が生じたときは、家庭裁判所がその協議または審判の変更や取消しをすることができると定めています。一度決めたら動かせない、という組み立てにはなっていません。
養育費そのものについても、民法766条が子の監護に要する費用の分担を父母の協議で定めるとしたうえで、同条3項で、家庭裁判所は必要があると認めるときはその定めを変更できるとしています。前提として、民法877条1項は直系血族などが互いに扶養をする義務を負うと定めています。
裏を返せば、変更を求める側に必要なのは、決めたあとに何がどう変わったのかを具体的に示すことです。金額への不満そのものは、事情の変更には当たりません。
算定表が新しくなったことは、事情の変更に当たらない
家庭裁判所で目安として使われているのが、令和元年に公表された標準算定方式と算定表です。父母の年収と子どもの人数、年齢から標準的な額を求めるもので、養育費については9つの表が用意されています。
この算定表は、それまでの考え方を引き継ぎつつ基礎となる統計資料を更新したものです。ここで誤解が生まれます。新しい表に当てはめると、いま受け取っている額より高い目安が出ることがあるからです。
しかし、表が新しくなったこと自体は、その家庭に起きた事情の変更ではありません。求めるときに示すべきなのは、子どもの進学や病気、父母それぞれの収入の変化といった、この家庭で実際に動いた事実のほうです。
何が変わったかを、書き出すところから始める
まず、取り決めをした時点と今とで何が変わったかを書き出してください。進学、医療、収入の増減など、時期と金額が分かる資料をそろえておくと話が早く進みます。そのうえで相手と話し合い、まとまれば内容を書面に残します。応じてもらえないときは、家庭裁判所へ養育費の増額を求める調停を申し立てる方法があります。認められるかどうかは事情によって変わるため、判断に迷うときは弁護士や法テラスに相談してみましょう。


