
お盆の帰省で実家の権利証を開いたら、土地の名義が祖父のままだった、という話は珍しくありません。今の相続人で分け直せばいいと思いがちですが、相続がいつ始まったかによって、当てはまるルールがそもそも変わります。まずは祖父が亡くなった日を確かめておきましょう。
名義が二代前で止まっていた50代会社員の戸惑い
「父から受け継いだ土地を登記しようとしたら、名義が祖父のままだったんです。」お盆に帰省して仏壇の引き出しの書類でそう気づいた50代の会社員は、法務局の窓口で言葉に詰まったといいます。父が亡くなったのは数年前。その父も名義を変えないままでした。
そこで言われたのは、まず祖父の相続から確定させる必要がある、ということでした。今いる家族だけで話し合って決めればいいと考えていた人ほど、ここでつまずきます。
旧法の相続が今も残る、昭和22年5月3日という線
現在の民法の附則には、応急措置法の施行前に開始した相続については、なお旧法を適用すると書かれています(昭和22年法律第222号による民法の附則第25条第1項)。旧法とは、この改正より前の民法のことです。応急措置法とは日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律のことで、昭和22年4月19日に公布され、憲法が施行された5月3日から施行されました。
ここが最初の線引きです。昭和22年5月2日以前に始まった相続は、今のルールで分け直すのではなく、当時のルールで誰が承継したのかをたどります。ただし同じ第25条には第2項という例外もあり、古い相続がそのまま旧法どおりに処理されるとは限りません。
1人が承継した旧法と、相続分が動いた昭和56年の線
旧法の家督相続は、戸主の地位とその財産の相続でした(国税庁 税務大学校)。法務局の案内は、原則として法定家督相続人のみが相続人になり、これにあたるのは被相続人が死亡した時にその戸籍に同籍していた子の年長者なので、長男が家督相続人になるのが普通だと説明しています。年齢の順だけで決めつけることはできません。
線はもう1本あります。配偶者の法定相続分は昭和55年の改正で引き上げられ、施行前に開始した相続には改正前の民法が適用されます(昭和55年法律第51号 附則)。施行は昭和56年1月1日でした。

ただし昭和22年5月2日以前は隠居でも戸主の地位が動き、亡くなった日だけが手がかりとは限りません。
旧法の相続が家督相続だけではなかった点も見落とせません。当時の相続税は家督相続と遺産相続の二本立てで(国税庁 税務大学校)、亡くなったのが戸主かどうかで扱いが分かれました。
動かす前にたどるのは、祖父の代の戸籍
古い名義のままの土地は、今の家族の話し合いだけでは動かせないことがあります。手がかりは祖父が亡くなった日で、そこから戸籍をさかのぼって誰が承継したかをたどります。相続登記は令和6年4月1日から申請が義務になり、施行日より前に開始した相続も対象です。期限は、自分に相続が始まったことと不動産の所有権を取得したことを知った日、または施行日のいずれか遅い日から3年以内です。まずは法務局や司法書士に相談してみてください。


