
入国審査に限らず、どんなシーンであっても、目の前の人から突然お金の話をされたら戸惑うかと思います。Xユーザーのゆかてふ(@yukatehu13)さんが、スウェーデンでの入国審査の際に、審査官から「日本人?お金持ってる?」と問われたという投稿は530万回表示を超えました。円安の影響で水を購入したら500円だった実態を編集部が取材しました。実は「お金持ってる?」の一言には制度上の理由がありました。
審査官の「お金持ってる?」に、その場では意味がわからなかった
ゆかてふさんがスウェーデンを訪れたのは、主催するイベントで紹介するための伝統楽器“ニッケルハルパ”の取材のためでした。入国審査は、はじめは行き先や宿泊先を尋ねる一般的なものでしたが、スペインやフランスに入ったときと比べて、やけに長かったといいます。パスポートを確認されながら仕事や国籍を聞かれ、その流れで突然「Do you have money?」と投げかけられました。
予想もしない質問に、うまく言葉が出てこなかったそうです。
「Y、Yes. I have...」
そのときの率直な戸惑いを、ゆかてふさんはこう話します。
「なぜ急にお金の話?」
最初は聞き間違いかと思ったほどで、ほかの国の審査では一度もなかった問いに、意図がつかめなかったといいます。ところが現地に入ってすぐ、その理由を痛いほど実感することになりました。きっかけは、スウェーデンの物の価格でした。ちょっとしたカフェでのランチや、短い距離のタクシーが、日本の感覚をはるかに超えていたのです。
「ちょっとランチをしようと思って、その辺にあるカフェのようなカジュアルなお店に入っただけでも、普通に5,000円くらいになりました。」
30分ほど乗ったタクシーは約12,000円。投稿に書いた水の500円も含め、支払いのたびに驚いたと教えてくれました。「えっ、こんなに!?」と、思わず声が出たそうです。
水の500円やランチの約5,000円、タクシーの約12,000円は、ゆかてふさんが挙げた金額です。
投稿には、共感や現地の知恵を寄せる声も並びました。「お水は観光地価格でちょっと高めだよね スーパーで買うといいかも」といった声も上がり、のちの滞在中の節約の工夫に役立ったそうです。
スウェーデンの物価は、EUの中でも指折りの高さ
ゆかてふさんが感じた物価の高さは、公的な統計とも重なります。EUの統計局ユーロスタットによると、2025年の家計最終消費支出でみた同国の物価水準指数(暫定値)は、EU平均(EU27=100)を21%上回る121でした。平均的なEU諸国より物価が高い国、という位置づけです。
ユーロスタットによれば、家計消費の物価が最も高かったのはデンマークで、EU平均の140%。次いでアイルランドが136%、ルクセンブルクが132%でした。北欧を含むこれらの国々は、旅行者にとって出費がかさみやすい地域だといえます。
そこへ円安が重なれば、日本から訪れる旅行者の負担感はさらに大きくなります。水一本、ランチ一回の値段が日本の感覚と離れて見えるのは、こうした背景があるからです。
「お金持ってる?」の一言には、制度上の裏づけがある
審査官の質問は、思いつきや失礼な詮索ではありません。スウェーデン移民庁(Migrationsverket)は、同国を訪れる人に対し、『滞在中にかかる費用を自分でまかなえるだけのお金を持っていること』を確認するよう求めています。在スウェーデン日本国大使館の公式サイトでは2025年7月15日の時点で、『スウェーデン滞在には1日あたり450スウェーデンクローナ(SEK)が必要だ』としていますが、昨今の円安の状況下では、実際には日本円にして1日あたり1万円前後(約700SEK程度)の負担がかかる可能性があります。
こうした滞在資金の確認は、シェンゲン圏の入国管理で広く行われている仕組みです。ゆかてふさんが受けた「お金持ってる?」という問いは、この要件を確かめる審査の一場面だったと考えられます。物価の高い国だからこそ、旅行者が現地で立ち行かなくならないかを、入り口で確かめているという見方もできます。
金額の水準そのものよりも、入国時に生活資金の証明を求められることがある、という事実を知っておくことが、これから旅行する人には役立ちます。為替のレートは日々動くため、必要額を日本円に換算しても多めに用意することが必要となってきます。
ゆかてふさんが現地でたどり着いた、出費を抑える工夫
厳しい円安と現地の物価を乗り切るために、ゆかてふさんが頼ったのは自炊でした。なんと驚くことに、外食は高くても、スーパーは比較的良心的な価格だったといいます。
「圧倒的に自炊です」
フルーツやチーズ、生ハムなどはそのまま食べられて買いやすく、滞在中はよく世話になったと教えてくれました。水道水はそのままで飲める状態だったため、水筒に入れて持ち歩いたそうです。旅の実感として、大きいのは食費だと話します。
「食費をどう乗り切るか」
もう一つ大切にしたのが、言葉の準備です。何も話せないと観光客向けの高い店に流されやすいと感じたそうで、少しでも現地の人と会話ができれば、安くておいしい店や土地ならではの情報を教えてもらえるといいます。ゆかてふさんが語った工夫を、旅行者が取り入れやすい形に整理すると次のようになります。

円安の時代でも、旅を諦めなくていい
入国審査での思いがけない一言は、円安と物価高が旅行者の足元まで及んでいることを映し出していました。とはいえ、ゆかてふさんの経験は、悲観だけで終わってはいません。スーパーや水道水を活用し、現地の人と少し言葉を交わすだけでも、出費と旅のしやすさは変わってきます。最後に、ゆかてふさんはこう話します。
「物価が高いからといって旅行を諦める必要はなくて、どう節約できるかをある程度知っていれば、十分楽しめると思います。」
出かける前に、少しの備えをしておくこと。それが、円安の時代に海外を楽しむための、身近な一歩になりそうです。


