
「従業員が増えることの何が問題か?自腹で買う出張土産の量が増えることだ!」そんな本音が綴られたテキスト画像がThreadsに投稿され、大きな反響を呼んでいます。石山 剛一さん(@koichi_ishiyama)が投稿したこの内容には、930いいねが集まり、「素敵な会社ですね」などのコメントが寄せられました。人材獲得競争が激しい製造業界で、従業員を増やし定着させるための工夫や、経営者としての思いについて、石山さんに話を聞きました。
「素敵な会社」「社長の愛を感じる」あたたかなお土産
――従業員の方が増えるたびにお土産の量も増えているとのことですが、出張先でいつもどのようなお土産をどれくらいの量買われているのか具体的なエピソードをお聞かせください。
「自分も甘党なので、自分が美味しいと思うものを購入しています。一口サイズでしっかり味わえるものが多いですね。予算を先に決めるのではなく、従業員全員に美味しいものが行き渡ることを優先して選んでおり、結果として1回1万~2万円程度になります。
当社には現在、社内勤務の従業員が82名おり、これに加えてお客様の社員が当社内に常駐しているため、全員に1個ずつ行き渡るよう、現在では90個程度購入しています。従業員が30人台のころからやっていますが、そろそろ手荷物として持ち帰るのが大変な量になってきました(笑)」

―― 自腹での出張土産に象徴されるような「従業員との良好な関係構築のための見えない出費」について、どのように考えているのかお聞かせください。
「私としては、従業員への感謝をささやかな形で伝えるために続けています。会社の福利厚生制度として行っているのではなく、私個人から従業員への『出張中もありがとう』という気持ちです。
発送せず、出張先で実物を見て選び、手荷物として持ち帰ることにも意味があると思っています。帰社後に配り、みんなで『美味しいね』と食べることで、その場の気分を共有できるからです。出張先で選んだものを皆で味わうという自然な理由があるからこそ、受け取る側にも余計な気遣いをさせずに済むと考えています。」
石山さんの社長としての気遣いには、SNS上で「素敵な会社」「社長の愛を感じる」といった好意的なコメントが多く寄せられました。従業員を大切に思う気持ちから、出張先で実物を選んで手荷物で持ち帰り、社内でその場の気分を共有するという行動には、単なる福利厚生を超えた温かさがあります。

暗黙の義務や同調圧力になるお土産には反対
―― 実際に会社での「お土産文化」についてはどのように考えているのかお聞かせください。
「私以外の社員がお土産を買うことは勧めていませんし、負担に感じるならやめてほしいと伝えています。新型コロナウイルスの流行期には、感染後に職場復帰した社員が菓子折りを持参することが続いたため、会社として禁止しました。お土産を買うことが暗黙の義務や同調圧力になるのは、本意ではありません」
ささやかな感謝を伝えるためにお土産を購入している石山さんも、従業員個人の好意を超えたお土産の同調圧力には反対しています。
実際に世の中のすべての人が職場でのお土産文化を好意的に捉えているわけではありません。「女の転職type」の調査によると、約3割の人が職場のお土産文化を「よくない(否定派)」と感じています。
その理由として「自分も買わないといけなくなる」というプレッシャーを感じる、「お金がもったいない」という経済的な負担を感じる、「選んで買うのが面倒」などのそもそもの手間を負担と感じるなどの理由が挙げられています。
お土産からコミュニケーションに繋がったり、知らない土地の銘菓を食べられたりとの良い部分もありますが、お土産への強制感を感じて、同調圧力や負担感がストレスになっている現実もあるようです。
給与以外に考える「働きやすさ」と「人への投資」の大切さとは
――人材獲得競争が激しい昨今の製造業界において、従業員を増やし長く定着させるために、給与面以外でどのような工夫や人的投資を行っているのか具体的に教えてください。
「弊社はワイヤーハーネスという電線加工部品を作っている会社で、今年創業50年を迎えます。従来から製造現場では女性従業員が多く、子育て中の従業員を含め、長く働き続けられる環境を整えてきた歴史があります。
たとえば、40年前に大分県内の製造業では初めて企業内託児施設を設置したほか、子どもの急病で休んでも生産活動に影響が出にくい業務体制にしています。珍しがられるのは、クリスマスケーキの配布でしょうか。コロナ禍で忘年会ができなかった際に、その代わりとして家族や身近な人と食べてもらおうと始め、現在も続けています。
業務面でも、省力化できる工程には、多少高価でも機器や加工機を導入するようにしています。省力化によって生まれた余力は、人員削減に充てるのではなく、より付加価値の高い業務に振り向けています。個々の従業員の意識や気合いに頼らず生産性を上げる仕組みを整えることを最優先にしています。こうした取り組みを続ける中で、10年前に35名だった従業員数は、現在70名となりました」
――社長自らが第一線で動かれているからこそ見えてきた、現場のムダを省く経費削減のヒントや、逆に企業として決して削るべきではないコストについてのご見解をお聞かせください。
「金額だけを見た一律のコストカットは行わないようにしています。削るべきなのは、目的や効果を説明できないコストだと考えているからです。たとえば、作業環境となる工場内の照明を減らせば多少の節約にはなりますが、そのために作業性や従業員の士気が下がれば、かえって大きな損失になります。
一方で、決して削ってはいけない代表的なコストは、品質を維持するための費用です。直接売上を生むものではないため軽視されがちですが、お客様からの信頼を将来の受注につなげるための重要な投資です。 」
「従業員が増えることの何が問題か?社会保険料の負担が増える?違う。出張土産の量が増えることだ!」
経営者にとってはこの「社会保険料」や「採用費」などの固定費の重さは痛いほどわかっている認識です。
お土産代の増加を、ネタにできるのはこうした裏側のシビアなコスト計算や投資の仕組みをしっかりと積み上げているからではないでしょうか。
「組織を拡大したり新たに人を雇ったりするときは、給与だけでなく、会社負担の社会保険料、販管費などを含めて、固定費がどれだけ増えるのかを事前に計算することが大切です。そのうえで、採用した人がすぐに十分な売上や利益を生み出せない場合も想定し、売上が計画を下回っても資金が何か月持つのかを試算しておく必要があります。
また、人を増やすこと自体をリスクと考えるのではなく、その人が安心して働き、生産性や売上の向上につながる仕組みまで含めて投資判断をすることが、持続的な組織拡大につながると考えています」と石山さんは語ってくれました。


