定年後も働き続ける場合、どのような選択肢があるのでしょうか。
さまざまな選択肢がありますが、大きく分けると3つのパターンがあります。
それぞれの特徴を把握しておきましょう。



目次
働き方の3つのパターンとは
60歳で定年を迎えた後の働き方には、大きく分けて次のようなパターンがあります。
2. 経験と人脈を活かして転職・再就職する
3. 独立・起業する(自営業になる)

1. 継続雇用制度(再雇用)を使ってそのまま続ける
現在は、改正高年齢者雇用安定法により、原則としてすべての企業で希望すれば60歳以降も働けるようになっています。
改正高年齢者雇用安定法とは、「高年齢者が少なくとも年金受給開始年齢までは、意欲と能力に応じて働き続けられる環境を整備することを目的に改正されたもの」です。
定年を65歳未満としている企業は、
(2) 65歳までの継続雇用制度を導入する
(3) 定年制度の廃止
のいずれかが求められます。
実態としては、(1)や(3) の定年を延長したり廃止したりして、60歳以降も働けるようになった企業は25%ほど。
残り75%ほどの企業に勤めている人は、(2) の継続雇用制度を使って働き続けることになります。

継続雇用制度には、「勤務延長」と「再雇用」があります。
働き方はどちらも変わらないのですが、大きな違いは退職金の有無です。
再雇用は一度退職するので、退職金が支払われることになります。
実態としては、再雇用制度を採用する企業が8割程度を占めるようです。
継続雇用で働いた場合の収入は、企業によって幅はありますが、男性は定年時から3割以上ダウンする人が約6割にのぼります。
従業員1,000人以上の大企業に限ると、5割以上ダウンした人が全体の約4割を占めるというデータもあります。
要するに、定年時の給与のおよそ4~7割の水準になると覚悟しておいた方がよいでしょう。
また、公的年金や健康保険などの社会保険との絡みも意識しておきたいところです。
退職後の健康保険: 任意継続の保険料
特に健康保険は、退職したあとも希望すれば 2年間に限って会社員時代の健康保険 に継続して加入できる「任意継続被保険者」(通称、任継)という制度があります。
この「任継」の保険料は、退職時の標準報酬月額に一定の料率を乗じて計算されます。
収入の多いタイミングで退職して、翌年になって「高額」の健康保険料の納付書がくることになるより、継続雇用になって収入がガクンと下がっても、その翌年の健康保険料は安く済む方がいい、という考え方もできるでしょう。
65歳以降ではどうなるかというと、企業によっては再雇用をする場合もあります。
独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った「高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)」(平成28年)では、65歳以降の高年齢者が就いている仕事について見ると、
「管理的な仕事」(27.3%)
などが高い割合となりました。
専門的なスキルを持っている人は、年齢が高くなっても、そのスキルを生かして企業に雇用される確率が高いことがうかがわれます。
しかしなかには、65歳以上は再雇用しない企業もあり、その場合は退職することになります。
そして続けて仕事をするなら、新たな職探しが始まります。
自営業者なども含む65歳以上の3割の人が、パートなどの非正規で働いているという調査もあります。

再雇用の現実

再雇用で最もつらいことは、職場の居場所にあるようです。
今までと同じ会社、同じ職場で引き続き働くことになるわけですから、何となく気楽に働けるようなイメージを持っている人もいるかもしれません。
しかし、実際にはそんな気楽なものではありません。
再雇用によって役職はなくなり、場合によっては年下の上司に仕えることにもなりますが、これ自体は、それほどつらいことではありません。
組織ですから、新陳代謝をすることは当然と思えば気になりませんし、いくら上司と部下の立場が逆転したからといって、手のひらを返したようにぞんざいに扱われることはないでしょう。
立場をわきまえて、組織の役に立つために進んで仕事をするという姿勢で働けば、職場のなかで浮くことはないはずです。
それは、責任と権限があいまいになってしまうケースです。
それまで管理職の立場にいて、責任と権限を与えられていた人が、再雇用になると、役職がなくなり責任も権限もなくなります。
しかし日本の多くの職場では、再雇用の制度が成熟していないために、再雇用された人間をどのように扱っていいのか、人事担当者も職場の同僚も困ってしまうことがあります。
すでに管理職ではなく、何の権限もないので、例えば自分よりも経験の浅い上司が何か困っていても、出しゃばりになりそうでアドバイスはしにくい。
進んで雑用をしようと思っても、周りの人に気を使われてしまい、やらせてもらえない。
結果、「何をやっていいのか分からない」という窓際族になってしまう。
これが、再雇用になって最もつらいことといえます。
そのような状態が続くと、働くことへのモチベーションが維持できなくなります。
したがって、再雇用になることが決まったら、まず人事の担当者と相談して、自分の責任と権限、仕事における役割を明確にしておくことが大切なのです。
2. 経験と人脈を活かして転職・再就職する
いったん退職し、第2の人生として、これまでとは異なる仕事に就くというパターンもあります。
転職には、再雇用にない3つのメリットがあります。
・気分を一新して働くことができる
・過去の経歴に左右されず白紙のイメージで働くことができる
以前の勤務先では働けなくても、その関係会社・取引先、あるいは縁故で仕事先を見つけるケースは多いようです。
つてがなければ、自分で仕事を探しますが、探し方は次の方法があります。
・中小企業
・海外企業に転職する
現在、大企業・中堅企業に勤めている人であれば、地方企業や中小企業への転職という道もあります。
大企業・中堅企業に比べて、地方企業や中小企業は人手が不足しており、50代以降であっても、60歳を過ぎても活躍できる人材を求めています。
また、データに基づいた経営、効率的な業務の進め方、ITの活用方法など、大企業・中堅企業では当たり前のようなことでも、地方企業・中小企業にはまだまだ浸透していないというケースもあります。
大企業のノウハウを持ち込むだけで、生産性の向上に貢献できることがあるのです。
海外に出るという手もあります。
中国や東南アジア諸国では、日本のシニアへの期待が高まっています。
技術者が求められているのはもちろん、小売業やサービス業などでも、日本企業のノウハウを必要としているケースは多々あります。
現役時代の経験や資格を活かす

現役時代のキャリアを活かしつつ独立することができたら、一番スムーズです。
たとえば、人事や労務関係を専門にしているなら「社会保険労務士」や「司法書士」の資格を取り、独立することが考えられます。
金融機関で働いている人は、「ファイナンシャルプランナー」の資格を取得するのもよいかもしれません。
ただこういった資格を取っても、有資格者が多く市場が飽和状態になっていると、まとまった金額を稼ぐのはなかなか難しいでしょう。
何らかのコネがあり、一定の収入が得られる見込みがあるならよいですが、そうでなければ、仕事というよりも生きがいや趣味という位置づけで捉えたほうが現実的です。
お金をかけて資格を取ったものの、仕事としてほとんど機能しなかったということのないように、その資格でどれだけ収入が得られるのか、今から市場調査をしておきましょう。
ハローワーク等で改めて探す
ハローワークやインターネットサービスを通じて転職するのは、基本的な道筋の一つです。
高齢者の仕事というと清掃や警備などのイメージがあるかもしれませんが、マンション管理人や調理などの仕事も比較的求人が多めです。
事務は一番人気の業種ですが、人気が高いだけに職に就くのは至難の業。
特定のスキルを持っていない場合は、未経験でも別の職種を狙うといいかもしれません。
最近では、サービス業界や小売業界が人手不足に悩んでいることを背景に、それらの業種での募集も増えています。
シニアスタッフの親しみやすさや経験値、コミュニケーション能力に期待した求人が多いようです。
シルバー人材センターに登録してみる
臨時や短期の仕事ならば、シルバー人材センターに登録してみるのもいいでしょう。
シルバー人材センターは、市町村レベルで網羅され、「社団法人全国シルバー人材センター事業協会」がとりまとめています。
公園や家内清掃、農作業、交通安全指導員、育児代行、福祉関連の仕事など、さまざまな仕事があります。
これらは長期的な雇用ではないので、空き時間を利用したり、地域に貢献したりしたいという希望がある方に向いています。
報酬は、月に8~10日程度の就業で、月額3~5万円ほど。
給与収入よりもだいぶレベルは落ちますが、ちょっとしたお小遣い、最低限の生活費の補てんにはなりそうです。
シルバー人材センターの主な業務と時給
・一般事務1,000円~(1時間)
・パソコン入力1,200円~(1時間)
・ビル・マンションの清掃1,000円~(1時間)
・調理他飲食店業務1,000円~(1時間)
・子育て支援1,200円~(1時間)
・高齢者向け福祉サービス1,000円~(1時間)
・家事援助(食事作り、洗濯、室内清掃など)1,100円~(1時間)
・パソコンレッスン(出張サービス)3,000円~(2時間)
・語学レッスン(英語)1,500円~(1時間)
・庭、プランターの草取り1,500円~(1時間)
・網戸の張り替え2,500円(1本)材料代別
・パソコンレッスン(出張サービス)3,000円~(2時間)
※公益社団法人中央区シルバー人材センターの例(2016年1月時点)。
上記の料金は仕事の発注側が支払う金額で、市区町村によってはこの料金から事務経費(5~10%)が差し引かれるケースもあります。
3. 独立・起業する
前述の「再雇用」、「転職」と比較すれば「起業」を選ぶ人は少ないですが、実はシニア起業家は増加傾向にあります。
中小企業白書2017年によると、起業家のうち60歳代以上が占める割合は、一番多く35%となっており、割合は年々増えています。

定年がゴールではない
一昔前の50代の人なら「定年後の余生をどう過ごそうか?」と考えていたかもしれません。
しかし、今の時代はそんなのんきなことを考えている余裕はありません。
平均寿命が90歳近くに延びているなかで、定年後もまだまだ稼がなければ、安定した生活ができないからです。
50代が考えるべきは、「人生の後半にどのように働き、自分の可能性を見つけどう充実させるか」ということ。
定年まで逃げ切れればいいと考える人も多いかもしれませんが、現実はそんなに甘くはありません。
役職定年制に引っかかれば、肩書きはなくなり、給料も何割かカットされてしまいます。
役職定年のない企業であっても、定年後の再雇用の場合には、給料が半額以下になることも珍しくありません。
現在50歳で、65歳まで働くとすれば、あと15年。
70歳まで働くとすれば、あと20年。
75歳まで働き続けたいと考えているなら、あと25年あります。
たくさんの可能性は残されているはずです。

人生の後半を充実させるために「あと15~25年をどう使うか、定年後の働き方をどうするのか」を改めて考えてみる必要があるでしょう。(提供:ファイナンシャルアカデミー 定年後設計スクール)