「ソフトバンク」公募割れで激震 高配当利回りでも買うべきでない理由

ついにソフトバンクがIPO! しかし株価は…

ソフトバンクが、東証1部に上場

2018年12月19日。クリスマスを数日前に控えたこの日、株式市場には激震が走りました。

日本史上最大規模の新規株式公開(IPO)。

孫正義率いるソフトバンクグループ、その通信子会社であるソフトバンクが、東証1部に上場しました

各メディアが数か月前から報じるなど世間でも大注目のIPOでした。

しかし、その株式の初値は1,463円と、売出価格の1,500円よりも安いという冴えないデビューとなりました

あろうことかその後も売りは続いており、市場では困惑する声を多く聞きます。

1,500円の売出価格って高すぎた?

ソフトバンク

ソフトバンク

≪画像元:ソフトバンク

結論からいうと、1,500円の売出価格は高すぎたと思っています。

投資の世界ではPERやPBRといった株価に関する指標が多くありますが、ソフトバンクのような通信会社は「EV/EBITDA」という指標で測ることが多いです。

これは分子が企業価値(時価総額 + 純有利子負債)、分母が支払利息・償却費・税引き前利益というかなりマニアックな指標です。

ライバルのNTTドコモとKDDIはこの数値がざっくり5倍。かたやソフトバンクは売出価格1,500円ベースで計算すると8倍強

同業他社を大きく上回るものでした

ちなみにソフトバンクのEBITDAは公表されていないので、IR資料などを基に筆者が計算した推定値で分析しています。

ではいったいソフトバンクの株価の適正価格はなのかということになりますが、同業の5倍をベンチマークに計算すると、600~700円というなかなかシビれる数字が算出されます

この数字、実は意外と信ぴょう性が高いと思っています。

IPOよりも前に公表された資料によると、ソフトバンクは2018年4月、新株式を特定の投資家に発行していました。

その時の発行価格が「623円」。4月というとIPOの8か月前です。

株式の本質的価値(ファンダメンタルズ情報を基に計算される理論価値)をわずか8か月間で2倍以上まで高めるのは、怒涛の成長を見せる新進気鋭ネットベンチャーでも至難の業です。

ましてや、成熟産業である通信業界において、業績の変動が少ないソフトバンクの株式では、特別な理由もなしに到底起こり得ないです。

これらを踏まえると、ソフトバンクの経営・事業に詳しく、洗練された分析のできる関係者の中では「ソフトバンクの適正株価は600~700円」というのが共通認識だったと思われます

ソフトバンクの適正株価は600~700円

高配当は今後も継続されるか?

ソフトバンクの株式に全く魅力がないのかというと、決してそんなことはないと思います。

配当利回りは同業のドコモ・KDDIよりはるかに高く、配当好きな投資家からすればおいしいポイントでしょう

また、規模の大きな会社なので、機関投資家による指数組入需要も期待できます。

TOPIXはもちろん、世界的なMSCIなどの指数への組み入れも決定しました。結果として、海外の機関投資家による買いが入るでしょう。

ただこの2点、そこまで高く評価できるものでもないと思います。

まず配当ですが、将来的に減少する可能性が高いように思えます

現在政府は携帯電話料金の値下げを各社に要請しており、ドコモは実際に値下げしました

また、楽天が新規参入を計画しており、価格競争が激しくなるのは時間の問題だと思います。

こうしたことを背景に、ソフトバンクの売上高が減少していく可能性はかなり高いと考えています

それは、純利益が減少することで高配当が継続できないということにつながってしまいます。

また、指数組入需要ですが、これは決して株式の価値そのものを引き上げることにはつながりません。

確かに指数組み入れ前に大量の買い注文が向かい、株価が上昇する要因にはなりますが、それはその期間だけ起こるイベントです。

組み入れ以降は洗練された多くの海外機関投資家が株価の妥当性を評価することとなり、結果的に妥当な水準と思われる600~700円まで売られ続けると思っています

ソフトバンク株、ではどうする?

このように、ファンダメンタルズ的にはかなり厳しいと思われるソフトバンク

有名な会社とあってなじみ深くもあり、買ってみたいという気持ちもなくはないですが、損をしてしまっては元も子もないです。

当面は、下落が収まるまで静かに見守ろうと思います。(執筆者:高橋 清志)

この記事を書いた人

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外資系投資会社にて株式アナリストとして勤めております。主に「株式投資」の分野で具体的な企業の例を交えながら、資産運用に役立つ生きた知識をお伝えしたいと思います。話題のテーマを取り上げ、噛み砕いてご紹介することで、企業経営や金融に対する「知的好奇心」を満たしたり、数字ベースの堅実な投資スタイルを身に付けられたりできるような記事をご提供していきます。
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