2019年10月23日、お笑いコンビ「チュートリアル」の徳井義実さんの脱税疑惑がニュースとなり、24日には記者会見が開かれました。
その衝撃的な内容が、本人の口から語られていましたね。
今回は、徳井さんの会見を税務の観点から、わかりやすく説明します。

目次
事実関係のおさらい
24日午前0時半頃からの会見で、徳井さんご本人の口から語られた事実関係を整理します。
国税局から指摘された主な内容
(1) 2012年~2015年(4年間):
私的に使用した「洋服代」等を、会社の経費として申告し、意図的に税額を安くした。
(2) 2016年~2018年(3年間):
法人税の納付、および確定申告をしなかった。
※会見中、一部内容に誤りがあった可能性があるとのことで、後日修正される可能性があります。
このうち、(1)については東京国税局が悪質なもの(仮装隠蔽)と判断し、重加算税を課しています。
また、税務調査では過去7年までしかさかのぼることはありませんので、これ以前については調査対象外となり、指摘もされません。
追徴課税等で支払った金額
(1) 2012年~2015年(4年間)の申告漏れ:
2,000万円
(2) 2016年~2018年(3年間)の申告漏れ:
1億円
(3) 2012年~2015年(4年間)にかかる重加算税:
3,700万円
※会見中、一部内容に誤りがあった可能性があるとのことで、後日修正される可能性があります。
(1)は、プライベートの洋服代などを会社の経費として申告したことによる「本来追加で支払わなければならなかった税金」です。
(2)は、3年間で未申告となっていた税金です。
(3)は、特に(1)が悪質であったため、追加で支払うことを命じられたお金です。
国税局は(1)の部分について徳井さんが「意図的に」脱税を行ったものと考え、(3)の重加算税を課しています。
なぜ、会社の経費にしたのか、納税しなかったのか
徳井さんは、2009年頃から「チューリップ」という法人を設立し、所得に対する節税を図っていました。
以下は、公認会計士としての所感です。
公認会計士所感
「個人」に課される所得税の税率が最大45%であるのに対し、「法人」に課される法人税の実効税率は30%程度となるため、所得が一定額を超えると「法人化」した方が納税者としては有利です。
また、法人格を作ること自体にはなんら違法性はありません。
ただし、
です。
徳井さんの場合、プライベートにも使う洋服代を全額経費として計上していたため、ここが税法に反します。
また、
と話されていますね。
ともお話しされていましたが、もちろん
徳井さんの納税意識

時系列を追ってみると、年々納税意識が低下しているように見受けられます。
2012~2015年
プライベートの洋服代のうち何割かは経費として計上してはならないため、仕事用の洋服代とは領収書を分けて管理しなければなりませんでした。
しかし、徳井さんご本人のお話では、怠慢によってそれらが管理できておらず、すべてを税理士に渡していたとのことです。
当然、これらを「全額経費に計上しない」(領収書を渡さず、個人の出費とする)という選択もできたはずですから、それを全額経費にしたことは悪質であると捉えられても仕方がないでしょう。
2016~2018年
これらの管理が面倒になり、もはや申告自体を放棄するようになっています。
納税に対する意識の低さがエスカレートし、3年間で1億円という多額の税金逃れとなりました。
警鐘として申しあげますが、脱税は重罪です。
会見でも触れられていましたが、逮捕される可能性があります。
騙す意図はあったのか
記者から何度か質問されていましたが、核心は
です。
上述のとおり、東京国税局は
を課しています。
一方、徳井さんの回答は「怠慢だった」との回答であり、やや腑に落ちない方もいるかもしれませんね。
真実は本人にしか分からないことですが、騙す意図があったと見られても仕方のない内容でしょう。
ひとごとではない、税金リテラシー
個人で仕事をしている方は特に、「税金」に対するリテラシーが低くなる傾向にあります。
会社員であれば、半ば自動的に給料から所得税が差し引かれる形で納税されますが、フリーになると自身で申告(確定申告)しなければならず、「面倒」に感じるためです。
しかし、納税は国民全員に課された義務です。
第三十条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。
支払いを怠ると多額の追徴を受けるほか、逮捕の可能性まであります。
フリーの方や経営者の方には、ご自身の納税意識を見直すよいタイミングになるかもしれませんね。(執筆者:藤沼 寛夫)