表題の「財産分与」とは離婚するにあたって、夫婦で築いてきた財産を分けることであります。
それが調停や裁判になっている場合に、分けるべき土地や建物の価値が重要な問題になるので、我々不動産鑑定士に客観的な価値を調査してほしいという依頼を時々頂きます。
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今回頂いた依頼物件は「マンション」と「建物」
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しかし、私は「建物?」と思ったのでありました。
なぜなら不動産は空中に浮いているわけにはいかないので、建物を所有している場合には価値があるかはともかく、なんらかのその建物が存在するために敷地を利用する権利を有しているからです。
そこでよくよく聞いてみると、建物は結婚してからご商売を始めた店舗であり土地は借り物、つまり借地だったので、自分たちのものではないから、財産分与の対象外と思ったようです。
勘違いしがちですが、敷地の権利に所有権を持っていなくても借地権であれば立派な資産となります。
よく借地権は担保価値がないと言われるので、資産としての価値もないと思われたようですが、相続税上でも資産として考慮すべきものであるので、この財産分与でも考慮すべきものであることをご依頼者に説明しました。
依頼主の奥様は一喜一憂
するとご依頼者は奥様方であり、財産をより多く分けて欲しいと思っている側だったので価値がないと思った土地に価値があると分かり、さらにその地域の土地の借地権割合が50%だったことから土地の半分も分割すべき資産が増えたと思い込み、急にホクホク顔となりました。
ただし、さらに調査を進めると、その借地権は契約期間の満了が間近な事業用定期借地権でありました。
そうです。いくら借地権と言えども事業用定期借地権の場合更新が出来ず、普通借地権のような借地人にとって有利な権利ではありません。
従って、その価値は高いものではなく、まして残存期間が短いなら、その価値はほとんどないといっても過言ではないのです。
一旦喜んだ依頼者も、その内容を説明すると少々がっかりしましたが、後々なって「土地はどうなんだ」と揉めるより、最初に問題点が整理できてよかったと納得して頂いたようでありました。
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遺産分割でも同じようなことが言えます
今回は財産分割でありましたが、遺産分割でも同じようなことが言えます。
建物がある場合、その敷地権についても必ず考慮する必要があります。
そしてその敷地権が借地権の場合、一定の借地権割合等で決めてしまいますが、当事者の納得いく方法で決めたい場合、不動産鑑定を活用すれば契約内容や契約期間、地代の金額などを総合的に判断して決めることが出来るのです。
このような違いをご理解頂いて不動産鑑定をご活用頂ければと思います。(執筆者:田井 能久)