育児休業をされる方にとっての生活保障という重要な役割を果たすのが「育児休業給付金」です。
特に、お住まいの地域事情によっては、定員の関係上、保育所に入所困難なために育児休業の延長・再延長を余儀なくされるため、「育児休業給付金」の受給延長の手続きも同時に必要です。
そこで今回は、見落としてしまう傾向にある受給延長手続きの際の注意点を確認し、更に応用的な内容として、育児休業中に妊娠した場合の給付金の取扱いまで見ていきましょう。
目次
育児休業の仕組み
育児介護休業法では、原則として子供が1歳になるまでの間、育児休業できることとし、例外的な措置として、1歳になる時点で保育所などに入所できないなど所定の理由がある場合に限り、1歳6か月まで延長できる仕組みです(更に、その後6か月の再延長により最大2歳まで延長可能)。
そして、これに対応する形で雇用保険「育児休業給付金」も受給延長できるようになっています。
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育児休業延長が認められない
一般的に、育児休業を延長する場合の多くは、保育所への入所手続きを進めていたにも拘らず入所できなかったというケースです。
そして、このようなケースを支援する趣旨で育児休業および給付金の制度が作られているといっても過言ではありません。
しかし、反対に言えばこのような趣旨(復職を前提とした育児支援)に合致しない場合には、育児休業・給付金いずれも延長は認められない、つまり、労働者の意思で(自由に)育児休業および給付金受給の延長ができるわけではないという点に注意が必要です。
延長が認められない具体例
では、どのような場合に延長が認められないのでしょうか。
例えば、
この「入所内定の辞退にやむを得ない理由」とは、入所内定を受けた時点で勤務地変更などに伴い入所させることが困難になったことなどが挙げられます。
こうした理由がないときには、そもそも入所の意思がなかったと判断されます。
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不正受給とならないように
育児休業および給付金の延長申請の際には、落選を通知する「保育所入所保留通知書」を入所を申し込んだ地方自治体が発行するので、これを添付します。
先程の例でいえば、この「保育所入所保留通知書」に1次申込みを辞退した事実が記載されることがありますので、この場合には辞退の理由を確認されます。
もっとも、この通知書の様式は地方自治体ごとに異なり、辞退の事実が記載されないこともあります。
では、「黙っていれば分からず、受給が可能」なのでしょうか。
答えは、ノーです。
ハローワークには調査権限がありますので疑わしい事例については調査がなされ、不正受給と判断されればその分の返還を求められるばかりか、不正があったと認められた日から受給できなくなり、最悪の場合は詐欺罪として処罰の対象となる可能性もあるのです。
育児休業中に妊娠した場合

育児休業中に妊娠した場合の育児休業および給付金受給はどうなるのでしょうか。
ここでは「第1子に係る育児休業中に、第2子を妊娠した場合」を例にみていきます。
第1子に係る育児休業は、第2子に係る産前休業開始日の前日(産前休業を取得しなかった場合は出産日)までです。
もちろん「育児休業給付金」の受給期限も同様です。
ここでのポイントは、第2子に係る産前休業を取得する場合には健康保険の「出産手当金」が受給できることです。
これは第1子に係る「育児休業給付金」といずれか一方しか受給できない仕組みですので、どちらを受給するか受給額を比較して決めます。
「出産手当金」と「育児休業給付金」比較の例
本人の給与が月額23万円(健康保険の標準報酬月額24万円)の場合に、1か月あたりいくら受給できるのか。
育児休業開始から6か月未満:
(23万円 ÷ 30日)× 67% × 30日 = 15万4,110円
育児休業開始から6か月経過:
(23万円 ÷ 30日)× 50% × 30日 = 11万5,020円
(24万円 ÷ 30)× 2/3 × 30日 = 16万20円
※ 1か月 = 30日で計算、1円未満は切上処理。
※ 育児休業給付金は休業開始時賃金日額、出産手当金は標準報酬月額の1/30の金額を算定基礎とする。
事例の通り、「育児休業給付金」は育児休業開始から6か月を経過すると給付率が下がるので、「出産手当金」の受給額の方が高額となる可能性があります。
きちんと確認しておきましょう。
情報を正しく整理することからはじめる
育児休業に関する一連の申請は一般的にはお勤めの会社の人事・総務担当部署が行いますが、自身が育児に追われる中で会社から十分な説明を受けられなかったり、物理的距離から情報がうまく伝わらずに不安に感じられることもあるかと思います。
まずは、自分自身で育児休業に関する情報を正しく整理して、経済的な負担を抑えつつ復職を迎えるためのイメージをもつところからはじめましょう。(執筆者:今坂 啓)