
お盆の帰省をきっかけに、一人暮らしを続ける親の住み替えについて家族で話し合う方もいるでしょう。しかし、保証会社を利用しても、高齢であることを理由に審査が難しくなる場合があります。2025年10月に始まった認定家賃債務保証業者制度の仕組みと、住み替え前に確認したい相談先を整理します。
家賃債務保証会社が引き受けている役割
家賃債務保証は、入居を希望する方が賃貸住宅を借りやすいようにするための制度です。入居者が万が一家賃を支払えなくなった場合に、家賃債務保証会社が代わりに立て替えます。大家側は家賃滞納の不安が小さくなり、入居者側は連帯保証人なしで契約できる場合があります。双方に利点があるため、賃貸住宅で利用されています。
以前は連帯保証人を立てて賃貸借契約を結ぶのが一般的でした。連帯保証人が引き受けるのは、入居者に賃貸借契約上や法令上の債務が生じたときの、保証契約の範囲内の責任です。家賃の滞納はもちろん、設備を壊して入居者に賠償義務が生じたときも支払いの対象になり得ますが、壊れたという事実だけで当然に支払いが生じるわけではありません。親や兄弟に頼めない場合に、保証料を払ってこの役割を引き受けてもらうのが、家賃債務保証会社です。
もっとも、家賃債務保証会社が連帯保証人とまったく同じ責任をすべて引き受けるわけではありません。何をどこまで保証するかは商品や契約によって異なり、国土交通省の資料でも、保証の対象は滞納した家賃や原状回復費用、訴訟費用、残置物の撤去費用などで事業者によって異なるとされています。利用する物件では、入居者が契約に応じた保証料を負担します。なお国の制度では「家賃債務保証業者」と呼びます。
一般保証型と支払委託型、お金の流れの違い
家賃債務保証には、主に一般保証型と支払委託型の2種類があり、家賃の支払先が異なります。
一般保証型は、家賃の滞納が起こったときに、家賃債務保証会社が大家に弁済し、その代金を入居者に請求する保証形態です。通常時は大家が入居者に家賃を請求し、保証会社が間に入るのは万が一の滞納が起きた場合だけ。立て替えてもらった家賃は、入居者が保証会社に返済しなければなりません。支払ってもらえるから大丈夫。そう考えるのは禁物です。
支払委託型は、滞納がなくても家賃債務保証会社が家賃を立て替えて大家に支払い、その代金を入居者に請求する仕組みです。始めから入居者と大家の間に保証会社が入るため、入居者は保証会社に家賃を支払います。滞納すれば保証会社から督促を受ける可能性がありますが、大家側から見れば家賃管理の負担が軽くなります。

保証会社を通しても、誰もが借りやすくなるわけではない
保証会社が家賃滞納のリスクを引き受けるなら、誰でも部屋を借りられそうに思えます。しかし実際はそうではありません。国土交通省は「民間会社の家賃債務保証の審査状況を見ると、年齢別では、高齢者が通りにくく、属性別では、生活保護受給者や外国人等が通りにくい傾向。」としています(平成28年10月・国土交通省「家賃債務保証の現状」)。調査時点では、保証会社を挟んでも属性による差があったということです。
貸す側の意識にも壁があります。同省は「住宅確保要配慮者の入居に対して、大家の一定割合は拒否感を有しており、入居制限がなされている状況。家賃の不払いに対する不安等が入居制限の要因となっている。」としています。改正法の検討資料が示した入居拒否感は、高齢者が約7割、障害者が約7割、低額所得者が約5割、ひとり親世帯が約2割。高齢者の入居拒否の理由は、居室内での死亡事故等への不安が約9割を占めます。
入居者側の手続きとしても、家賃債務保証会社の利用には審査があり、審査結果によっては利用できません。賃貸住宅のなかには利用を義務づけているところもあり、物件によっては連帯保証人と保証会社の両方が必要です。
令和7年10月に施行された認定家賃債務保証業者制度
この状況を動かすために作られたのが、改正住宅セーフティネット法です。令和6年の通常国会で「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律等の一部を改正する法律」(令和6年法律第43号)が成立し、令和6年6月5日に公布されました。準備行為に関する規定を令和7年7月1日に施行したうえで、令和7年10月1日に全面施行されています。これから始まる制度ではなく、すでに動いている現行の制度です。
国土交通省は改正の背景として、単身高齢者世帯が2030年に900万世帯に迫る見通しであることを挙げ、「孤独死や死亡後の残置物処理等の入居後の課題への不安から、単身高齢者など要配慮者に対する大家の拒否感が大きい。他方、賃貸の空き室は一定数存在。」と整理しています。大家側の不安が入居制限の背景にある。それが出発点でした。
そこで柱の1つとして設けられたのが、家賃の滞納に困らない仕組みの創設です。国土交通省は「住宅確保要配慮者が利用しやすい家賃債務保証業者として、登録家賃債務保証業者等から一定の要件を満たす者を、国土交通大臣が認定する制度を設けております。」と説明しています。これが認定家賃債務保証業者制度です。認定の基準には、居住サポート住宅に入居する要配慮者の家賃債務保証を正当な理由なく断らないこと、緊急連絡先を親族などの個人に限定しないこと、保証人の設定を条件としないこと、保証料が不当に高いものでないことなどが並びます。認定を受けた業者には、そこまでが求められます。
見落としやすいのが、認定も登録も義務ではないという点です。住宅セーフティネット法第72条は、家賃債務保証業者が一定の基準に適合していることにつき「国土交通大臣の認定を受けることができる」と定めています。登録制度も任意で、国土交通省は「なお、これは任意の登録制度であり、登録をしなくても家賃債務保証業を営むことは可能です。」と明記しています。認定の対象は登録家賃債務保証業者又は居住支援法人です。

認定制度は始まったばかりで、対象となる業者はまだ多くありません。
居住サポート住宅とセットで動く仕組み
認定家賃債務保証業者制度は、居住サポート住宅と連動する仕組みがあります。国土交通省の説明では、居住サポート住宅とは、居住支援法人等が大家と連携し、日常の安否確認、訪問等による見守り、生活・心身の状況が不安定化したときの福祉サービスへのつなぎを行う住宅です。法律上の名称は「居住安定援助賃貸住宅」で、市区町村長(福祉事務所設置)等が認定します。
ここが接続点です。居住サポート住宅の賃貸契約を結ぼうとする要配慮者が家賃債務保証を申し込んだ場合、認定保証業者は正当な理由なく断らないことが認定基準です。居住サポート住宅に生活保護受給者が入居する場合は、住宅扶助費(家賃)について代理納付が原則化されました。保護の実施機関が賃貸人に直接支払う扱いです。見守りと保証と家賃の入金を束ねて、大家の不安を1つずつ外す設計になっています。
部屋探しの前に、保証の中身を確かめる
家賃債務保証会社は、連帯保証人の代わりに家賃滞納のリスクを引き受けます。ただし誰でも借りられるわけではなく、国が平成28年に示した調査資料では高齢者や生活保護受給者は審査が通りにくい傾向でした。その差を埋めるために始まったのが、令和7年10月施行の認定家賃債務保証業者制度です。保証料の支払い方も保証の範囲もプランごとに違います。物件を決める前に、どの保証会社のどのプランかを確かめましょう。要配慮者にあたる方なら、居住支援法人に相談する道もあります。


