
賃貸の更新通知が届くたび、このまま借り続けてよいのかと考える人は少なくありません。全国では6割が持ち家ですが、東京都では半数を切ります。どちらが得かを計算する前に、自分がどちら向きなのかを決めるほうが近道です。統計と、考える順番を整理します。
更新通知のたびに家の話に戻る30代共働き夫婦の迷い
「更新のお知らせが来るたび、同じ話をしている気がします」
夏の初めに賃貸の更新通知を受け取り、また家の話になったという30代の共働き夫婦がいます。二度目の更新で、住み心地に不満はありません。それでも通知が届くたびに、このまま借り続けるのか、そろそろ買うのかという話が持ち上がるそうです。
決まらない理由もはっきりしています。二人とも転勤の可能性が残っていて、何年この街にいるのかが読めません。住宅情報のサイトを開けば、買ったほうが得だという記事と、賃貸のほうが身軽だという記事が同じくらい出てきます。どちらも正しく見えて、結局その日は決まらないまま話が終わるといいます。
こうしたときに効くのは、損得の計算を先にすることではありません。まず、いま自分たちがどちらの側にいるのかを、実際の数字で確かめておくことです。
全国では6割が持ち家、ただし住む場所で景色が変わる
総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、2023年10月1日現在の持ち家は3387万6千戸で、住宅全体に占める持ち家住宅率は60.9%でした。借家は1946万2千戸で35.0%です。持ち家住宅率は2018年から0.3ポイント下がっていますが、1993年からの30年間は60%前後でほぼ横ばいが続いています。
つまり、全国で見れば持ち家のほうが多数派で、持ち家住宅率は30年にわたり60%前後でほぼ横ばいです。一方、借家数そのものは2018年から増えているため、「賃貸が増えている」と見る場合は、戸数ではなく割合で見る必要があります。
ここで注意したいのが、この60.9%という数字が、自分の住む場所には当てはまらない場合があることです。同じ調査の都道府県別の数字を見ると、地域差はかなり大きくなっています。

東京都では持ち家住宅率が44.7%で、借りて住んでいる世帯のほうが多くなっています。秋田県では77.1%で、逆に持ち家が大半です。全国平均を自分の判断材料にすると、住んでいる場所によっては実感とずれることになります。
年を重ねるほど、持ち家の側に寄っていく
もうひとつ押さえておきたいのが、年齢による違いです。同じ調査で、65歳以上の世帯員がいる世帯を見ると、持ち家が81.6%、借家が18.2%でした。世帯全体の持ち家60.9%と比べて、20.7ポイント高い水準です。
若いうちは賃貸で暮らし、年を重ねるにつれて持ち家へ移っていく流れを、統計はそのまま映しています。いま賃貸に住んでいることは、一生賃貸だという意味ではありません。
ただし、高齢者のすべてが持ち家というわけでもありません。65歳以上の単身世帯に限ると、借家の割合は32.2%まで上がります。ひとり暮らしの高齢者のおよそ3人に1人は借家に住んでいるということです。年齢が上がってから賃貸で暮らす人は、決して例外ではありません。
賃貸と持ち家、向いている人はどこが違うか
数字を踏まえたうえで、自分がどちら向きかを考えます。分かれ目は好みではなく、暮らしの読みやすさと、お金の出方の違いにあります。

賃貸が向いているのは、転勤の可能性がある人、収入の見通しがまだ固まっていない人、家族構成の変化に住まいを合わせたい人です。身軽さそのものが価値になる場面では、借りているほうが選択肢を持てます。
持ち家が向いているのは、その土地に長く住むと決めている人、収入が安定している人、住まいを資産として残したい人です。返済を終えたあとに住居費が下がることも、老後を見据えるときには効いてきます。
迷ったら、先に決めるのはこの三つ
比較表を眺めても決まらないときは、住まいの話を後回しにして、次の三つを先に決めてみてください。
この街にあと何年住むつもりなのか
収入の見通しがこの先何年読めるのか
住まいに手を入れたい気持ちがどれくらいあるのか
冒頭の夫婦のように転勤の可能性が残っているなら、一つ目の問いに答えが出ません。答えが出ないうちは、身軽なほうを選んでおくのが無理のない判断です。逆に、この街で子どもを育てると決まっているのなら、迷う時間そのものが家賃になっていきます。
決めきれない間も、できることはあります。頭金にあたるお金を先に貯めておけば、買うと決めたときにそのまま使えますし、買わなかったとしても手元に残ります。どちらに転んでも無駄にならない準備から始めるのが現実的です。
数字は多数派を教えてくれる、決めるのは自分の年数
全国では6割が持ち家、東京都では半数を切り、高齢者のいる世帯では8割を超えます。統計が教えてくれるのは多数派がどちらかであって、自分にとっての正解ではありません。決め手になるのは、この街にあと何年住むのか、収入がどこまで読めるのかという二つです。答えが出るまでは、身軽さを持っておくという選び方もあります。


