
見覚えのない封筒が届いて、そこで初めて自分の年金資産が動いていたと気づく人がいます。会社を辞めたあと、企業型確定拠出年金(企業型DC)の移換手続きをしないまま半年が過ぎると、資産は国民年金基金連合会へ移されます。置かれているあいだも時間は進みます。資産に何が起きているのか、そしてどう戻すのかを見ていきます。
転職を2回はさみ、前々職の封筒を開けないままだった40代
「自分のお金だという感覚が、正直ありませんでした」
40代の会社員は、10年ほど前に辞めた勤務先の企業型DCについてこう話したといいます。当時は転職の準備と引っ越しが重なり、届いた封筒は中身を見ないまま書類の束に紛れました。その後さらに一度転職し、そのたびに厚生年金や健康保険の手続きはしたものの、以前の勤務先で積み立てた資産のことは頭から抜けていたそうです。
思い出したのは、家計の見直しでiDeCoを調べていたときでした。加入の手続きを進めるなかで、過去の資産が国民年金基金連合会に移されたままになっていると分かります。運用されないまま10年近くが過ぎていた計算です。
放置していた期間に増えも減りもしなかったのなら、損はしていないように見えます。実際は違います。
現金のまま置かれ、手数料だけが引かれ続ける
自動移換された資産は、現金の状態で管理されます。この状態では運用の指図ができません。値動きのある商品で運用していた人も、いったん現金になった状態で止まります。相場が上がっても下がっても、その影響を受けないかわりに、増える機会もありません。
そのうえで、自動移換されて4か月が経過した時点から管理手数料は差し引かれます。運用されない資産から手数料だけが引かれ続けるので、置いておく期間が長いほど残高は目減りします。
もうひとつ見落としやすいのが期間の扱いです。自動移換されているあいだの期間は、老齢給付金の受給要件となる通算加入者等期間に算入されません。この期間が足りないと、受け取りを始められる年齢が後ろにずれることがあります。お金が減るだけでなく、受け取れる時期まで動く点が、この状態のいちばん重いところです。
戻す先は、いま勤めているかどうかで決まる
まず確認したいのが、自動移換された人へ送られている通知物です。ここには企業型DCの資格を喪失した日が記載されています。いつから止まっているのかは、この日付からたどれます。
戻し方は、いまの立場によって分かれます。勤務先に企業型DCがある場合は、その制度へ移せるかどうかを含めて勤務先の担当者に確認してください。iDeCoへ移す場合は、すでに口座を持っているならその運営管理機関へ、これから開くなら加入するプランを決めたうえで運営管理機関へ申し出ます。
どちらの道でも、手続きをすれば運用ができる状態に戻せます。止まっていた期間そのものは戻りませんが、これ以上増やさないことはできます。
心当たりがあるなら、今日中に封筒を探す
前の勤務先で企業型DCに入っていた記憶があり、移した覚えがないなら、まず通知物を探してください。見当たらないときは、いまの勤務先の担当者か、iDeCoの運営管理機関に相談すれば道筋を教えてもらえます。現金のまま置かれた資産は、手続きをしない限りそのままです。気づいた日が、いちばん早い日になります。


