
夏のボーナスをきっかけに、資産形成を始めようと考える人も増える時期です。一方で、「NISAとiDeCoは何が違うの?」「預貯金のままでもいい?」と迷い、最初の一歩が踏み出せない人も少なくありません。まずは、それぞれの役割や特徴を比べながら、自分に合った選び方の基本を整理してみましょう。
「預ける」か「投資する」か、増やし方は大きく2つ
まず全体像です。お金を増やす手段は、大きく「預ける(貯める)」と「投資する」の2つの方向に分けられます。預貯金や個人向け国債は元本が保たれやすく、必要なときに引き出しやすい代わりに、増える幅はごくわずかです。一方、投資信託などで投資に回すと、値動きがある代わりに、預貯金より大きく増える可能性が生まれます。
ここで押さえておきたいのが、NISAやiDeCoは「投資の商品そのもの」ではなく、投資の利益にかかる税金を軽くする「器(制度)」だという点です。器の中に投資信託などを入れて運用する、という関係になります。まずは器の仕組みを知ると、手段選びの全体像が見えてきます。
利益が非課税になる、NISAの基本
投資で得た利益には、通常およそ2割の税金がかかります。この利益を非課税にできるのがNISAです。2024年から新しい制度に変わり、使いやすくなりました。
新しいNISAには、こつこつ積み立てる「つみたて投資枠」と、幅広い商品に投資できる「成長投資枠」の2つがあります。年間に投資できる金額は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円で、合わせて年360万円までです。生涯にわたって非課税で保有できる限度額は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)で、利益が非課税のまま保有できる期間に期限はありません。口座を持てる期間も恒久化され、利用する年の1月1日時点で18歳以上の日本国内居住者であれば始められます。
長く続けるほど非課税のメリットが積み上がる仕組みなので、資産形成の最初の器として選ばれることが多い制度です。
老後資金づくりを税で後押しする、iDeCoの基本
iDeCoは、自分で掛金を出して運用し、老後に受け取る私的年金の制度です。最大の特徴は税の優遇が3段階にわたる点で、払った掛金は全額が所得控除の対象になり、運用中の利益も非課税、受け取るときにも退職所得控除や公的年金等控除といった枠が使えます。
ただし、老後資金づくりのための制度なので、原則として60歳になるまで引き出せません。加入できるのは、国民年金の第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者、任意加入被保険者など、加入区分ごとの条件を満たす方です。毎月出せる掛金には働き方ごとに上限があり、区分によって金額が変わります。自営業の方は月6.8万円(国民年金基金などと合算)、勤め先に企業年金がない会社員と専業主婦(夫)は月2.3万円、企業年金等に加入している会社員・公務員は月2万円が上限です。ただし、企業型DCの事業主掛金額やDB等の掛金相当額との合算で月5.5万円を超えられないため、実際に拠出できる額は月2万円より低くなる場合もあります。2024年12月の改正で、確定給付企業年金などに加入している方の上限が引き上げられました。
引き出せないという制約は不便に見えますが、老後まで手をつけない前提のお金を、税の後押しを受けながら育てられる点が強みです。
手段ごとの特徴を並べてみる
代表的な手段を、税制・元本・引き出しやすさで並べると違いがはっきりします。

表のとおり、NISAとiDeCoは「税をお得にする器」、投資信託はその器に入れる「中身」、預貯金や個人向け国債は「守りながら置く場所」と、役割が異なります。どれか1つに絞るのではなく、組み合わせて使うことが前提になります。
始めるときは「余裕資金」と「長く・分けて」から
最後に、始めるときの順番です。投資に回すのは、当面の生活費や近い将来に使う予定のお金を除いた「余裕資金」からにします。値動きのあるお金は、急に必要になったときに値下がりしていると困るからです。
そのうえで意識したいのが「長く続ける」と「分ける」の2点です。値動きは短期では読めませんが、長い期間をかけ、対象や時期を分けて積み立てることで、値動きの影響をならしやすくなります。「必ず儲かる」手段はありません。まずは少額から、無理のない範囲で器を持ち、慣れながら金額を調整していくのが現実的です。
迷ったら、目的と使う時期で器を選ぶ
増やす手段は、税制・元本・引き出しやすさで役割が分かれます。いつでも使うお金は預貯金、税をお得にしながら育てるならNISA、老後まで使わないお金はiDeCoと、目的と使う時期で器を選ぶのが出発点です。どれも少額から始められます。まずは余裕資金の範囲で1つ持ち、長く分けて続けることから始めてみましょう。


