
夏のボーナスで家計に余裕が生まれる今は、老後資金を見直す好機です。かつて話題になった「老後2,000万円問題」も、前提となる生活費や年金額はここ数年で変化しています。古い目安のままでは準備の目標もずれかねません。ボーナスの使い道を決める前に、最新データをもとに必要額と毎月の不足額を整理しましょう。
夫婦二人の老後にかかる毎月の生活費
老後の家計を考えるとき、まず手がかりになるのが総務省の家計調査です。65歳以上の夫婦のみで暮らす無職世帯の消費支出は、2025年(令和7年)平均で月額263,979円でした(2026年2月6日公表)。前年の2024年平均は256,521円で、食料や光熱費の値上がりを背景に、毎月の支出は年々じわりと増えています。
これはあくまで全国の平均像で、住まいや暮らし方によって金額は上下します。ただ、夫婦二人の老後には毎月およそ26万円前後の支出がかかるという相場観は、まず押さえておきたいところです。
「最低」と「ゆとり」で分かれる必要額
必要額のもう一つのものさしが、生命保険文化センターの調査です。2025年(令和7年)度の調査では、夫婦2人が老後に送る最低日常生活費は月額平均23.9万円とされています。日々の暮らしを維持するだけなら、この水準が一つの目安になります。
一方で、旅行やレジャー、趣味などを楽しむ「ゆとりある老後生活費」は月額39.1万円で、最低額への上乗せ分は月15.2万円にのぼります。数年前の調査より上乗せ額は増えており、ゆとりを求めるほど、必要な資金の差は大きく開いていきます。
収入の柱となる令和8年度の年金額
支出と並んで確認したいのが、老後の収入の柱となる公的年金です。日本年金機構によると、令和8年度(2026年度)の標準的な夫婦2人分の年金額は月額237,279円で、前年度より4,495円増えました。1人分の老齢基礎年金の満額も、昭和31年4月2日以後生まれの人は月額70,608円となり、初めて月7万円台に乗っています。
改定率は基礎年金が1.9%、厚生年金の報酬比例部分が2.0%で、いずれも令和8年4月分から適用されています。家計調査でも高齢夫婦無職世帯の実収入の約9割は年金などの社会保障給付が占めており、年金が家計の土台であることが分かります。
毎月の不足額から見える老後資金の目安
収入と支出を突き合わせると、毎月の不足額が見えてきます。家計調査の2025年平均では、税や社会保険料を差し引いた可処分所得が221,544円、消費支出が263,979円で、表上の黒字はマイナス42,434円となっています。この毎月の赤字は2022年の約2.2万円、2024年の約3.4万円から拡大しており、いわゆる「老後2,000万円問題」の前提も年々重くなっています。
老後資金の総額は、どの生活水準を基準に置くかで大きく変わります。家計調査の平均的な赤字をもとに65歳から25年間を見込むと、不足の合計は約1,273万円です。一方、ゆとりある生活費39.1万円から標準的な夫婦の年金を差し引く基準で試算すると、月の不足は約15.4万円、25年間ではおよそ4,600万円にふくらみます。どちらの数字を目標にするかを、まず家庭ごとに決めておくことが出発点になります。
老後資金づくりに使える制度
不足額の大きさに驚いても、使える制度を知れば準備は着実に進められます。まず活用したいのが、2024年に始まった新しいNISAです。年間の投資枠はつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円で、生涯にわたる非課税保有限度額は1,800万円まで設けられており、運用益が非課税になる点が大きな魅力です。
老後資金に特化するなら、掛金が全額所得控除になるiDeCo(個人型確定拠出年金)も選択肢です。2024年12月から、企業年金・共済に加入している人の掛金上限が月1万2,000円から最大月2万円に引き上げられ、会社員や公務員にも使いやすくなってきました。あわせて、働きながら年金を受け取る人の減額ルールである在職老齢年金も、令和8年4月から支給停止の基準が月51万円から月65万円に引き上げられ、年金が減りにくくなる方向に見直されています。長く働く選択と非課税制度を組み合わせることが、無理のない準備につながります。
夏のボーナスが後押しする老後準備
夏のボーナスは、まとまったお金と向き合いながら老後を考えるのにふさわしいタイミングです。夫婦二人の生活費や年金、毎月の不足額はいずれも数年前から動いており、古い数字のままでは準備の目標もずれてしまいます。最低限の暮らしを守るのか、ゆとりある老後を目指すのかを話し合い、今の最新データを基準に必要額を描き直しておきましょう。新NISAやiDeCoを無理のない範囲で取り入れ、ボーナスの一部を将来の自分たちへ回すことから始めてみてはいかがでしょうか。


