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親が亡くなったあと「相続」が「争族」にならないために

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  先日の日経新聞によると、親から財産の相続を受けた人の実に3割がトラブルに巻き込まれているといいます。このトラブルは、他人との間の出来事ではなく、身内同士の問題です。相続をキッカケにして起こる身内同士のトラブルのことは、語呂合わせから「争族」と言われます。

  争族の原因のおもなものは、

1)遺産配分がとても不公平
2)被相続人(亡くなった人)の面倒を見た人の配分が少ない
3)遺産総額が思ったより少ない
4)遺言が守られなかった
5)被相続人から生前に贈与を受けた人の配分が多い

  トラブルのもとは大半が「お金」です。これらのトラブルは、亡くなった方の財産が多くても少なくても起こり得ます。財産が多い場合には、これとは別に「相続税をどうやった払うか?」という問題が出てきますが、少なくても起こるのが「財産を誰にどう分けるか?」という遺産分割の問題です。

  相続は、いわば「棚ボタ」で手にすることができるモノ。何の苦労もいりません。「タダでもらえるものは多くもらっておいた方がいい」、「権利があるなら主張しておこう」という心理が働きやすいですね。

  いつもはとても仲の良い兄弟が、いざ遺産分割となると、もめてしまう。ついには骨肉の争いを繰り広げ、その後ずっと禍根を残してしまうことにもなりかねません。亡くなった人の財産を、誰にどう分けるか?ということは、相続人みんなが話し合って、異議なく合意できれば、どう分けても構いません。

  しかし、なかなか合意できないんですね。

  たとえば、父親は過去に亡くなっていて、今度は母親が亡くなったとします。長男の家族は、母親の土地に二世帯住宅を建てて、長年母親と同居して面倒もみてきました。二世帯住宅の名義の半分は母親の持分です。次男は独立して家庭を築き、マイホームに暮らしています。

  「母親の遺産をどう分けるか?」を考えるときに、長男は「親の面倒をみてきた分、土地と家の権利は自分が相続したい。残りの金融資産は弟と折半したい」と思っても不思議はありません。当たり前のようにも思えます。

  しかし、次男にしてみれば「親の面倒をみるのはそもそも長男の役割。だから、兄が住んでいる土地と家、金融資産を含め、母親名義のすべての財産を兄弟で折半したい」・・・これもひとつの考え方です。

  つまりわかりやすくするために数字で表すと・・・・

 土地と家の母親名義の不動産価額:200
 母名義の金融資産:300        と仮定すると、

  長男の主張は、不動産200+金融資産の半分150=350を長男が相続、次男は金融資産の半分150を相続。いっぽう次男の主張は、全財産500の半分に相当する額250を次男が相続。不動産は分割するのが難しい財産なのですべて長男が相続し、金融資産のうちの250を次男が相続。長男は不動産全部200+金融資産50=250を相続。

  感情では長男に分があるように思えますが、法律では次男。だから、もめるのです。相続財産がすべて「お金」であれば、細かくキレイに分けて相続人に分割することができます。

  しかし、財産の多くが「不動産」だった場合、もめる原因になります。不動産が1ヶ所の場合、東と西、北と南で簡単に分けるワケにもいきません。分けたら不動産の価値が落ちてしまいかねません。ちなみに、道路に接していない土地を相続しても、それは無価値の不動産です。どこからも出入りの出来ない土地に何の価値があるでしょう。

  不動産が2ヶ所以上の場所にあったとしても、もめることには変わりません。千葉の田舎の土地と東京港区の土地、どちらが欲しいですか?田舎にある隣り合った土地どうしだったとしても、価値は違うはず。

  遺族で不動産を共有する方法もあります。それは1つの土地の2分の1ずつの所有権を、相続人である兄弟2人で持つという登記のしかたです。しかしこれは、トラブルの先送りにしかなりません。なぜなら、兄弟が所有しているうちはもめなくても、その子供、孫の世代になると、共有者の数が増え、しかも、誰がどこに住んでいるかもわからず、面識もないなどということが起こるからです。

 最初は1人あたり2分の1だった所有権が、4分の1、8分の1、16分の1と、がまの油売りのように増えていって、だんだん1人あたりの財産は少なくなっても、タダでもらえる財産は、誰も簡単には手離しません。

  子供がいない夫婦のいっぽうが亡くなった場合、亡くなった人に親がいなければ、もめることになるかもしれません。亡くなった人に子供がいれば、相続人は配偶者と子供になります。亡くなった人に子供がおらず、親がいれば、相続人は配偶者と親になります。

  まず、配偶者が相続人になるのは、納得できます。なぜなら、夫婦の財産は2人の協力で築いたモノだと判断できるから。子供や親が相続人になるのも、理解できます。親の財産でその人が育てられたワケですし、子供は亡くなった人にとってかけがいのない存在ですから。

  亡くなった人に子供も親もおらず、兄弟がいる場合には、相続人は配偶者と兄弟になります。兄弟に相続権があることには、納得いかない配偶者がいるのではないでしょうか?亡くなった方の財産形成になんら貢献していない兄弟だとしても権利があることに。

  昨日からお話している相続でもめる要因のおもなもの。自分の家族に心当たりがないかどうか?・・・・少し考えてみてください。実をいうと、相続時に「争族」にならないようにするには、親が亡くなったあとでは、すでに遅いんですね。

  親が、亡くなる前に、そうならないように手を打っておかなければならないのです。それが最も効果的に方法なのです。それは、最期の意思表示を行うこと・・・・・つまり、遺言です。誰に、何をどれくらい相続させるのかを具体的に指定しておくのです。

  ただ、遺言を書くときには注意すべきことがあります。それは「遺留分」。遺留分とは、あまりにも相続人に不利益な事態になることを防ぐために、相続人に一定割合の財産の取得を保証している仕組みのことです。したがって、遺言書で、たとえば「長男にはどの財産も相続させない」と記載しても、長男には一定の財産を相続することができるのです。長男が権利を主張すれば、この場合ももめる原因になります。

  相続財産に対する各相続人の遺留分は下記の通りです。

1)子と配偶者が相続人の場合・・・子が4分の1、配偶者が4分の1
 ただし、配偶者が死亡している場合は子が2分の1

2)父母と配偶者が相続人の場合・・配偶者が3分の1、父母が6分の1
 ただし、配偶者が死亡している場合は父母が3分の1

3)配偶者のみ・・・・・・・・・・2分の1

4)兄弟姉妹と配偶者が相続人・・・配偶者が2分の1、兄弟姉妹は遺留分なし。

 遺言を書くときには、この「遺留分」に配慮して書くことが重要。

  たとえば、1)のケースで、遺言書に配偶者に100%を相続させると記載しても、子には4分の1の25%の遺留分があるため、子が権利を主張すると、25%を子の与えなければならないのです。結果的に配偶者が取得する財産は75%になります。

  したがって、あらかじめ遺言を書くときには、あとでもめないように、配偶者に75%、子に25%と書いておいたほうがいいのです。遺言を書かなければ、配偶者に50%、子には50%の権利があるので、遺留分があっても遺言を書いたほうがいいですね。

  なお、兄弟姉妹には、遺留分の権利はありません。そのため、遺言によって遺産を与えないようにすることも可能です。つまり、子供のいない夫婦のいっぽうが亡くなり、その人に親もいない場合、相続人は配偶者と兄弟姉妹になりますが、兄弟姉妹に財産を与えないようにするには、生前に遺言を書いておくことで、それができるのです。

《中村 宏》
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中村 宏

中村 宏

株式会社 ワーク・ワークス 代表取締役社長 山口県生まれ。大阪市立大学経済学部卒業後、 株式会社ベネッセコーポレーションに勤務。2003年にファイナンシャルプランナーとして独立し、 FPオフィス ワーク・ワークス を設立。「お客様の『お金の心配』を解消し、自信と希望にかえる!」をモットーに、個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を行っています。 個人相談件数は1,000件超。 無料のメールマガジン『生活マネー ミニ講座』(平日毎日)配信中。 登録はこちら → http://www.mag2.com/m/0000113875.html ・ファイナンシャル・プランナー(CFP(R)) ・住宅ローンアドバイザー 寄稿者にメッセージを送る

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