「老後2,000万円不足」という言葉が波紋を呼んで以来、老後資金をどうするかといった話題がにわかに脚光を浴び、いまでも注目を集めています。
老後の生活に備えるには、「支出を減らす」、「資産を増やす」、「収入を増やす」という方法があります。
「支出を減らす」には固定費の見直しや住宅ローンの借り換えで家計をスリムにする、「資産を増やす」にはiDeCoやつみたてNISAなどの投資をするといったことがあげられます。
その具体的な方法は、さまざまな記事で紹介してきました。
では、定年後のシニア世代が「収入を増やす」にはどうすればよいのでしょうか。
そのヒントは、定年後の働き方にありそうです。
そこで今回、編集部では、ストックフォトサービスのPIXTAでシニアモデルとして活躍されている中山蛙さん(取材時69歳)に、実際にお話しを伺いました。

目次
PIXTAとは

PIXTAとは、広告用の写真、イラスト、動画、音楽のストック素材をオンラインで販売する国内大手のストックフォトサービスです。
ストックフォトとは、あらかじめ撮影・制作された素材を、広告制作会社やデザイン会社が必要なときにイメージに合った素材を検索し、購入のうえ使用することができる素材のことです。
PIXTAでは、プロアマ問わずクリエイターとして、写真・イラスト・動画作品を販売できます。
作品が購入された場合には、広告やWEBサイト、販促物など、世界中のさまざまなメディアで使用されます。
1,000人を超えるストックフォトモデルが登録しており、クリエイターは登録しているモデルの中から、テーマに合うモデルを選び、人物撮影を行っています。
モデル登録に料金はかからず、撮影に関する費用はすべてクリエイターが負担します。
モデルのギャランティは、モデル側で決められる仕組みです。
フリーランスの方もいれば、モデル事務所に所属している方、また本業は別にあり副業として活動している方などさまざまです。
キッズモデル、20~30代の女性、家族で登録されている方もいます。
今回お話しを伺った中山蛙さんは、モデル事務所に所属されているシニアモデルです。
現在の仕事ときっかけ、仕事内容と収入

現在は、PIXTAのシニアモデル、日本工学院での非常勤講師、マンガ家の3つの仕事をされているという中山さんに、それぞれの仕事の内容とはじめた経緯について伺いました。
(1) シニアモデル

非常勤講師として働いている学校の同僚が、エキストラの仕事をやっていました。
その知人にエキストラを派遣している事務所を紹介してもらって、2011年に以前所属していた事務所に登録したのがモデルの仕事をはじめるきっかけでした。
その後、今の事務所に登録をすることになり、そこでPIXTAのモデルの仕事と出会って現在に至ります。
仕事の頻度・報酬
【PIXTAの仕事の頻度】1回/月もしくは1回/2か月程度
【1回の撮影時間】午前中3時間、昼食を挟んで、午後に3時間が平均的
【手取り報酬】日給7,500円ほど
撮影で老夫婦役としてよくコンビになる女性と親しくなりました。
また、若い人達とも仲良くなれるのでそういった点もいいですね。
クリエイターさんから撮影のリクエストをいただける限り、いろいろな撮影に挑戦していきたいと思っています。
また、今のところは、PIXTA以外のモデルの仕事はしていませんが、仕事を頂けるようなら積極的にやっていきたいと考えています。
(2) 非常勤講師
この仕事も、もう1つの仕事がきっかけとなりました。
20歳の頃からマンガ家として漫画を描いていたのですが、2005年頃に知人からマンガの非常勤講師の仕事を紹介されました。
日本工学院にクリエイターズカレッジという学科があるのですが、その中のマンガコースで5期から教えていまして、現在に至ります。
仕事内容は、マンガの描き方全般を教えることです。
初心者からある程度描ける人まで生徒の経験値が幅広いのですが、最初はまず顔の描き方、次に表情のつけ方、そして今度は体をどう描くかというようにキャラクターの描き方を教えます。
それと並行して、ストーリーの作り方といったように少しずつ深くしていきます。
最初は、自己紹介を1ページをコマ割りしたマンガにして描いてもらったりしますよ。
収入は月の出勤日数によって変わってきます。
現在は週2回の出勤ですが、例えば、祭日や学校のイベントと重なったりすると授業はありません。
先月は25~26万円でしたが、夏休みや冬休みの期間は全くなくなります。
今は夏休みに入りまして次に授業があるのが10月なので、2か月間講師の収入はありません。
仕事の頻度・報酬
【非常勤講師の仕事の頻度】2回/週
【1回の勤務時間】水曜:9:00~16:10 / 金曜:9:00~12:00
【給与】12~30万円近く(授業の日数による)
※基本給は、1単位(1時限)といった授業の時間単位で設定されている。
これも、今年いっぱいで定年退職なのですが、本来は10年前に定年のところを10年間余分にやらせて頂きました。
(3) マンガ家

現在やっているのは、2つです。
1つは、鹿児島で出しているオートバイ誌にオートバイのイラストエッセイを毎月掲載しています。
もう1つは、コミケやコミティアで売っている同人誌に年2回の連載をしています。
今日も朝3時に原稿を納めてきたところです。
昔、雑誌でイラストエッセイなどをやっていた頃の原稿料は1本4~5万円でしたけど、この2つはいわゆるお友達価格ですので安いですよ。
その代わり、好き勝手に自由に描かせてもらっています。
仕事の頻度・報酬
【オートバイ誌の仕事の頻度】1回/月
【同人誌の仕事の頻度】2回/年
【手取り報酬】イラストエッセイ:5,000円/枚、連載漫画:2万円/1本・4頁
年金も含めた収入・支出・お住まい
ここまでは現在のお仕事についてかなり詳しく聞かせて頂きましたが、ここからは貯蓄や年金も含めた収入全般とお住まいのこと、支出についてなど家計に関わるお金のことを伺いました。
仕事の収入と比率
3つの仕事の収入は、非常勤講師がダントツに多いですね。
PIXTAモデルとマンガの仕事は同じくらいだと思います。
収入の比率でいうと、講師:PIXTAモデル:マンガが8:1:1です。
収入は、非常勤講師の勤務日数にもよりますが、3つの仕事を合わせて月平均で25万円程度です。
年金、貯蓄、お住まい
年金は、満額納付していなかったので受給できないと思っていたのですが、10年以上納めていれば頂けるということなので手続きをして68歳から受給しています。
繰り上げ、繰り下げはしていません。
妻は、以前はマンガ家をしていましたが、現在は専業主婦で年金を受給しています。
受給額までは把握していません。
若い頃からの貯蓄などは残念ながら私にはありません。
住まいは、妻の実家で義母と3人で暮らしています。
住宅ローンはありません。
【3つの仕事の収入合計】平均25万円程度/月
仕事以外の時間の過ごし方・趣味など

週に1回はプールに行って泳いでいます。
それと、やはり週1回ほど道場に行って弓を引いています。
6年前から弓道を始めていまは2段です。
道着姿で弓をもって撮影してもらったこともありますよ。
そのほかは、自転車でどこかに行くとか、思い立った時にバイクで釣り道具をもって川に行ったりしています。
以前からの趣味は、カメラ、釣り、バイク、キャンプなどで、どれも3~4人程の仲間と楽しみます。
若い頃には月に1回は出掛けていましたが、今は3か月に1回程度です。
お金もそれ程かけていません。
健康面では、炭水化物をあまり取らないようにして、糖質摂取も控えめにしています。
支出・お金についてのポリシー
お金について、特に決めていることはありません。
生活費(主に食費)のほかは趣味の物に使いますが、なるべく贅沢はしないように意識することで節約しています。
シニアモデルの仕事をはじめるにあたって身だしなみなどにかかった経費、日頃のケアで気をつけていることは特にはありません。
服装も普段と変わらず、シャツやパンツをセールなどで買っています。
この仕事を目指す方へのメッセージ

まずは、こういうことに興味を持ってもらうのがいちばんだと思います。
何もなしにアルバイト感覚で仕事をするというよりは、自分で楽しんでやってもらうのがいちばんいいと思います。
モデルの仕事を目指しているのでしたら、あまり自分をつくらず、自然なままがいいと思います。
演技をしようと考えず、その相手になりきるようにすることが大事だと思っています。
例えば、笑顔を頼まれたときには、笑顔をつくるのではなく、自分自身が本当に楽しいと思えばいいわけです。
それでだんだんと広がっていけばいろいろな仕事もくるようになると思いますし、収入も徐々に上がっていくのではないでしょうか。
18歳で岡山から進学のために上京。飛行機の整備士を目指して工業系の学校に通うも他校に受験をし直すために退学し、アルバイト生活をする。この間に縁あって猪まんがスタジオに入ることになり、20歳からマンガ家の道へ。2年後の1972年に独立し、3年目から学年誌・小学6年生でレギュラーページをもつように。そのほかの雑誌の連載も含め50代半ばまで続けるも、担当編集者や顔見知りの編集者が次々と定年退職になるとマンガの仕事は減少。その少し前に日本工学院の非常勤講師の話が舞い込む。以降、現在までは記事の通り。
取材を終えて
まんがスタジオから独立後、蜷川幸雄さんの舞台「リア王」「オイディプス王」「三文オペラ」にエキストラとして出演されたユニークな経歴をもつ中山さんは、ここには書ききれない程たくさんのお話しを波乱万丈なエピソードを交えて話してくださいました。
どのような質問にも快く、明るい笑顔で丁寧に答えて頂き、中でも「退学の後、横道にそれたが、それがよかったと思います」と語っていらしたのが印象に残っています。
定年後の働き方のヒントは、「人との交流」「複数の仕事をもつ = パラレルワーク」
中山さんのお仕事の転機は、自らの目標とは別に思わぬタイミングで、いずれも人を介して訪れています。
人と楽しく交流するということが仕事の幅を広げるチャンスにもつながったわけです。
これは全世代に共通することですが、すなわち定年後にも共通するということです。
現在3つの仕事をされている中山さんの場合は、マンガ家というクリエイティブなお仕事のキャリアが主軸になっていましたが、会社勤めの方にも参考になる点は、定年後「複数の仕事を持つ」パラレルワークという点です。
問題になった「老後2,000万円不足」は、あくまでも平均値で、100年生きるなら生涯で2,000万円程度は不足するということです。
65歳でいきなり2,000万円足りなくなるわけではありません。
不足分を補う収入源を複数もつことは、リスク分散にもなると同時に無理のない働き方とも言えます。
現在、PIXTAではシニアモデルを募集しているそうです。
ご興味のある方は、ぜひ検討してみてください。
「PIXTAモデル募集」から直接ご応募ください。
合格者には連絡のうえ、選考を経て登録というステップです。