最近は地震が多いですね。
先日(5月30日)の小笠原沖を震源としたマグニチュード8.1の地震では、新幹線や山手線などが運転を見合わせ、六本木ヒルズや東京タワーなどでエレベーターが停止、数百人が高層階に取り残されました。この地震では高層の建物を大きく揺らす「長周期地震動」があちこちの高層建物で観測され、首都圏を中心にエレベーター内に人が閉じ込められたり、約1万9千台のエレベーターが停止しました。
日本は4つのプレートが重なる場所に位置する地震国ですので、今後も首都直下などで起きるとされる大きな地震に備えておく必要があると思います。
地震による損傷… 修理代は誰が負担すべき?
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ところで、大きな地震があり、地震の揺れによる物の落下などで賃貸マンションの床や建具、設備などが損傷してしまった場合、その修繕費用は、貸主、借主どちらの負担になるのでしょうか?
4年前(2011年)の東日本大震災の後、首都圏でも、賃貸アパートや賃貸マンションの玄関ドア、建具、内装、設備などに被害が生じ、修理の必要が生じた場合などに、その費用を貸主が負担するのか、借主が負担するのか、揉めるケースがたくさんありました。
私のもとにも、賃貸マンションの高層階に暮らしている入居者から、地震があった日にようやく帰宅して、玄関ドアを開けたとたんに水が住戸内からあふれ出てきて(地震で高置水槽が倒れ)部屋中が水浸しになり生活できず、しばらくの間ホテル住まいを余儀なくされた方が相談にいらっしゃいました。
その修復費用やホテル費用を貸主借主どちらが負担するのかで揉めていると相談があったケースや、地震で冷蔵庫が倒れ、その上に設置していた電子レンジが落ちる際に、フィッシュグリルの取手にぶつかりグリルが破損して使えなくなってしまった上、床に落ちる際の衝撃でフローリングに剔れ傷が出来てしまったが、その修復費用をどちらが負担するのか揉めているケースなど、たくさんの相談が寄せられました。
このような、地震による賃貸アパート・賃貸マンションの被害は、貸主、借主、どちらの責任でもありません。しかし、賃借人の責任ではないことが原因で賃貸住宅に被害を受け、修理の義務が生じた時は、貸主は民法606条の修繕義務に基づいて、貸主の負担で修理をしなければならないことになっています。
貸主の方々の「地震はどちらの責任でもなく、不可抗力の被害だから、貸主には責任はない」と主張したい気持ちはとてもわかりますが、主張したとしても貸主の修繕義務が免除されることは恐らく難しいと思われます。
建物の所有者である貸主も地震による被害を受けた被害者であるのですが、貸主には、民法601条にて、所有している賃貸物件を借主が通常の使用が出来るように修復する義務があります。
貸主は、もし、借主から「部屋が使用できない状況なので家賃を減額してほしい」といった申し出があった場合なども、借主が賃貸住宅を使用できない部分の割合に応じて(例えば、一部屋分とバスルームと洗面台部分が使えない等)、修復が完了するまでの期間の賃料の減額に応じるなど、地震を通じての借主との無用な争いは回避するようにし、もっと前向きなことにエネルギーを投入した方が、賢いかもしれません。
また、地震により、家具などが転倒したり、電気製品などが落下し、壁クロスや床のフローリングに剔れ傷などの損傷が生じた時の原状回復費の負担についても、貸主が、借主に、例えばしっかりと家具の転倒防止策を講じていないことなどを理由に、物件の傷などの損害賠償を請求するといったケースがありますが、その場合でも、そのことを理由に、借主から損害賠償を取ることは(立証が困難であることから)難しいと思われます。
地震による家具などの転倒は、借主の責任によるものではなく、地震によるものなので、たとえ、フローリングやクロスに傷がついたとしても、借主は、貸主に対する賠償義務を負わないのが原則です。
しかし、一方で、地震発生から何年も過ぎて、物件を退出される時になって、退室時の損傷チェックの立会時などに、床や壁の微妙な傷を借主が、「あっ、これは地震の時の傷です。これも地震の時の傷です。これもです。」などと、もしかしたら、本当は地震の時についた傷ではなく、借主の故意(わざと)又は過失(不注意)による傷を地震による被害のせいにして、自らの過失の負担から免れようとするケースや、借主自身も忘れてしまっている傷を自ら地震時の被害かと思ってしまっているケースもありますので、注意が必要です。
通常、一般的な賃貸借契約書には、「物件内に破損箇所が生じたときは借主は貸主に速やかに申し出て、確認を得るものとし、その届け出が遅れて貸主に損害が生じた時は借主は、これを賠償する」などといった条項が入っているケースが多く、借主は、地震後に被害を発見した時は放置するのではなく、すみやかに貸主に報告しなければいけないことになっています。
しかし、借主は一般消費者ですから、悪意がなくても、忙しいなどの理由で、なかなか報告してこない場合もありますし、報告することを認識していない場合もありますので、事業者である貸主の側から、地震の後などに、借主に「被害はございませんでしたか?」と伺いを立てるなど、できれば積極的に借主にアプローチをし、地震による被害状況を把握し、「地震被害箇所」と「通常の入居者の故意・過失による損傷の箇所」をしっかり区分けし、対応を考えていくことが必要だと思います。
また、借主も地震が起きた後は、地震による建物や住戸内の損傷を見つけたら、なるべく早く貸主や管理会社へ報告して確認してもらうようにし、いらぬ疑いはかけられないように働きかけ、大家さんも地震の被害者なんだという認識をもって、協力して、修繕、解決するべく努力していただければと思います。
地震で万一賃貸住宅が倒壊してしまった場合、貸主は借主からの仮住まい費用請求に応じる必要はあるのか?
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それでは、今度は、傷ではなく大きな地震により賃貸アパートや貸家などが倒壊してしまい、住宅として貸すことができない状況になってしまった場合はどうでしょうか?
通常、地震(自然災害)という貸主・借主どちらの責任でもない理由によって、建物(賃貸借契約の目的物)がなくなってしまった場合、多くの賃貸借契約書に定められている通り、賃貸借契約は解除、消滅することになります。
しかし、時々、「地震で建物が壊れてしまったのだから、自分達は住むところがない。次の住宅を探すと言ってもすぐには探せない。とりあえず、しばらくホテルかマンスリーマンションなどに住むしかないので、『仮住まい費用として、とりあえず、ホテル宿泊費の1ヵ月分を大家さんに負担してほしい』などといった要求をしてくる借主がいます。
その場合、その借主が要求してきている「ホテル費用」などを貸主が負担する必要はあるのでしょうか?
→ この場合、地震による建物倒壊に伴う賃貸借契約終了の金銭的精算(敷金や賃料の返還など)も終了していて貸主としての責任をきちんと果たしていれば、 貸主が賃借人のホテル宿泊費用まで負担する必要はないと思われます。
賃貸借契約の目的物である賃貸住宅が地震により倒壊してしまい、貸主は賃貸住宅を提供したくても出来なくなり、使用不能となった時点で、多くの賃貸借契約書では、【免責】及び【契約の解除・消滅】の条項などで、下記のように定められている通り、賃貸借契約は終了します。
『地震、火災、風水害等の災害、盗難等その他、不可抗力と認められる事故又は、甲若しくは乙の責によらない電気、ガス、給排水等の設備の故障によって生じた甲又は乙の損害について、甲又は乙は互いにその責を負わないものとする。』
【契約の解除・消滅】の条項例 ↓
『天災、地変、火災等により本物件を通常の用に供することができなくなった場合、又は、将来、都市計画等により、本物件が収用または使用を制限され、賃貸借契約を継続することができなくなった場合、本契約は当然消滅する。』
地震による賃貸住宅の倒壊の場合、賃貸借契約は貸主の責任ではない自然災害(地震)による建物の倒壊により終了したので、借主に対して損害賠償責任はありません。よって、貸主は借主の仮住まい費用まで負担する必要はないと言えます。(執筆者:後藤 一仁)